■ 姉妹の約束
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翌朝、宿の一室にて旅支度。
「それじゃあ館のリリア様に町の改善の終了と町を離れることを報告しに行ってくるよ」
「あの、私も行っていいですか?」
リノアが申し訳なさそうに手を挙げた。
「構わないけど、あのクズ領主に会うかもしれないよ?」
「そういえばリノアってなんか名前が領主の娘さんに似てるわよね」
リノアがギクッとしたのが分かった。
「う・・・やっぱり気付きましたか。そうなんです。私の姉です」
「「え・・・」」
「私のフルネームは
[リノア・エステル・ガルディア]」
「元々は先代の領主の御祖父さまの家で拾われたんだけど、
今の領主、いわゆるもう一人の父・・・とも言いたくも無いですし
ややこしくなるので以後クズ父と呼びましょう。」
リノアの冷たい目が印象的だ。。。
「御祖父さまが病で亡くなってからしばらくして、そのクズ父が
何か自分の為になるかもと期待して私を鑑定師に鑑定してもらい、
魔法才能も無く、ステータスも低く何も自分にとってメリットがないと知り怒り
追い出しました。」
「「どれだけクズだよ(なの)!!」」
誠とアリシアは二人で同時に怒った。
「まあそういうわけです」
「そのあとに今の両親に貰われました。」
「なんて波乱万丈な人生を送ってきた子なの!」
アリシアはリノアを抱きしめながら頭を撫でている。
「追い出された後も、姉はこっそりと館を抜け出しては私の事を心配して可愛がってくれました。」
「領主代理として仕事をするようになった姉は忙しくてずっと会えていませんでしたが、
最後に感謝とお別れを伝えたいです。」
「そういうことか、じゃあみんなで一緒に行こうか」
宿の階段を下りた所にその女性は待っていた。
「誠様、数々の町の復興に携わって頂きまして、領主に代わりお礼を申し上げます」
リリアは深くお辞儀をした。
「おねえちゃん!」
リノアは久々に会う姉に飛びついた。
「リノア!?」
リリアは久しぶりに会う妹を見てびっくりしている。
「話はリノアから聞きました。実は今回の町の改善はリノアから提案されたものを
自分たちが実現したにすぎないんです」
「ごめんね、リノア。リノアが町の人たちから嫌な言葉をたくさん浴びせられているのは知っていたけど何もできなかった。本当にごめんなさい。」
リリアは涙をぽろぽろ流しながら謝罪した。
「ううん、いいの。それより今は誠さん達と旅に出ることができるってだけでわくわくしているから」
「本当なのですか?」
「はい、リノアはとても賢いです。これからの色々な町や村の改善に知恵を出して貰いたいので
こちらから仲間にと、お願いしたくらいですよ。」
誠はリノアに微笑んだ。
「リリア様、貴方ならあのクズ領主を追い出して、素晴らしい領主となれる日もそう遠くありません。
その際にはまた力をお貸ししますよ。」
誠はニヤリと笑った。
「ありがとうございました。こちらはほんの気持ちですが、受け取ってください」
リリアから小袋の金貨を渡された。
「こんな受け取れませんよ!」
誠は突き返そうとしたが、リリアにすぐに拒否された。
「いえ、受け取ってください。誠様はこの町の英雄です。
ではこうしましょう。リノアの生活費も込みってことで」
リリアはにっこりとほほ笑んだ。
「妹をよろしくお願いします。」
改めてリリアは深々と頭を下げた。
「リノア、身体に気を付けてね。私が領主になったときには必ず連絡するからね。」
3人でガルディア領を後にした。
良かった、最後にくず領主に会うことなく去れて。