表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

■ 旅立ちの決意

夜。村の広場に、小さな焚き火が灯っていた。


リノアは、火の揺らめきを見つめながら、少しだけ緊張した面持ちで誠に話しかけた。


「……あのね、誠さん。お願いがあるの」


「ん、どうした? お腹でも空いたか?」


冗談めかして返すと、リノアは少しだけむっとした顔で睨んできた。


「ちがう! ……真面目な話」


「ごめんごめん、ちゃんと聞くよ」


誠は笑いを収めて、焚き火の向こうからリノアの瞳を見つめた。


その瞳は、どこまでも真剣だった。


「私、旅に出たい。誠さんと一緒に。……お願い、連れていって」


その言葉に、誠は少し驚いた顔をした。


「リノア……。ここには、君を育ててくれた人たちがいるんじゃないか? 急にそんなこと言って、家族が悲しむんじゃ……」


リノアは静かに首を振った。


「私、赤ちゃんのとき、この町の門の前に捨てられてたんだって。血のつながった家族は……たぶんいない、血はつながっていないけど、私を拾って育ててくれた家族はいるの」


「育ててくれたお母さんにはとても感謝している。」


誠は息をのんだ。


リノアは続ける。


「だからこそ、何か残したかった。役に立ちたかった。誰かの役に立つことで、ちゃんと“ここにいてよかった”って思いたかったんだ」


「そう思いながら、10歳になったとき転生前の記憶が流れ込んできたの」


「この知識でお父さん、お母さんの役に立てたらいいなって、色々教えたんだけど、、、」


「現代の知識を理解してもらうことはできなかったの」


「気味が悪いと」


リノアは過去を語ってくれた。

でもその眼差しに見えるのはキラキラ輝く野心だった。


「私は……この世界をもっと知りたい。現代の知識を使ってもっと人を助けたい。そのためには、ここにいるだけじゃ、一人じゃ何もできない。」


誠は、しばらく何も言わずに火を見つめていた。


そして、ぽつりとつぶやく。


「……俺も、転生してきてから、いろんなものを失った。でも、ここで初めて“仲間”に出会えた。もし、君が本気で俺と一緒に歩きたいと思ってくれるなら――」


そこまで言って、にこりと笑う。


「歓迎するよ、リノア。ようこそ、俺たちの旅路へ」


その瞬間、リノアの目に涙が浮かんだ。


「……ありがとう、誠さん!」


焚き火の温もりの中、小さな手がしっかりと誠の手を握った。


そしてその夜、リノアの「家族」に、彼女の決意が語られた。

皆が驚き、寂しがり、そして――誇らしげに彼女を送り出してくれた。


「リノア、お前なら大丈夫だ!」


「うちの自慢の娘だ、胸を張って行ってこい!」


彼女は今まで育ててくれた家族に深々と頭を下げ、旅立ちの第一歩を踏み出した。


新たな仲間が加わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ