石 階段 ワイン 地図 穴 (完結)
誤字訂正しました。
タイトルにある"石" "階段" "ワイン" "地図" "穴"というキーワードを使って物語を考えてみようという遊びを数年前にやっていた事がありまして、その時に書いた物語たちが書かれたノートを押入れの中から発見したので、それを載せる事にしました( ̄▽ ̄)
もちろん遊びで書いているものなので、オチが無かったりよく分からない終わり方をしているものばかりですが、生温かい目で見てくださると幸いです。
※使ったキーワードは傍点「・」を振ってます。
それぞれ一番最初に使った部分にしか振ってません。
ではレッツラゴーψ(`∇´)ψ
石造りのお館。
私は今そこに来ている。
何故今ここに至っているかを説明すると、昨年の年末に普段やりもしない大掃除なんぞを柄にもなく始めたのが事の始まりなのである。
我が家には今や殆ど使われていない無駄な倉があるのだが、その倉に置いてある不要なものを処分したり、整理したりしていたのだ。
そして倉の隅っこで何やら慎ましやかに、ひっそりとそこに隠れ住んでいたかのように、丁寧に丸められて紐で括られた羊皮紙のような物を発見したのである。
掛け軸にしては随分と小ぢんまりとしているというか小さいなと思いながらも、それの紐を解いて広げてみるとあまりにも古いせいなのか、それとも倉の中で杜撰に放置し過ぎたせいなのかは分からないが、所々が虫に食われて穴だらけになった地図のような物だった。
その地図と思しき物には、印のようなものが書き込まれていた。
何の印なのだろうか?
まさか埋蔵金を埋めた誰かがその隠し場所をこの地図に書き残してそのままになっている…なんて言う都合の良い話なんかないよな…。
いや…でも見るからに相当古い地図のようだし、誰にも気付かれず今も埋められたまま、そのままになっているかもしれない。
何が埋められているかも分からない。
いや…そもそもこれはそういう意味の地図ではないのかもしれない。
だがこの地図が何を示しているのか、それを考えるだけで私の中の好奇心の虫が疼きだし、夜も眠れない程になってしまったのである。
まずはこの地図はどこの地域を表しているのか、それを探す所から始まった。
よく見ると所々地形が少し変化してはいるものの、昔からある山の場所は変わらない。
何となく見たことのある山の地形から、その地図に記されている山と、以前行った事のある山は同一の物だと分かったのだ。
と言う経緯にてそのボロボロの地図に描かれていたのは、家からそう遠くない場所である事が分かったのである。
そして来てみたのがこの場所、この何とも言い難い誰も住んでいなさそうな雰囲気を醸し出している不気味な館なのである。
その館はまるでお城を思わせるかのような立派な風貌で、城壁塔や側塔に似た造りの屋根が見える。
正面には館の玄関と思しき大きな扉が見える。
誰かが住んでいるのだろうか?
見た限りでは人が住んでいる気配がしない程に、辺りは静寂に包まれている。
今日この場所に来るまでには何日もこの場所を調べてここまで来たというのに、外観を眺めるだけで何もせずに帰るだなんてあまりにも惜しすぎる。
どうしたものか?
とにかくここが他人の建物である以上、無断で立ち入る訳にも行くまい。
どちらにせよ、まずは扉をノックして誰か住んでいるのかを確かめてみる他はない。
そしてもしも誰か住人が出てきたら、その時はこの地図の事を正直に話してみよう。
もしかしたら何か新たに情報があるかもしれない。
私はそう思って扉を3回ノックしてみた。
「すみません。
ちょっとお話を伺いたいんですが、どなたかいらっしゃいませんか?」
扉に向かって声を出してみるも、依然として辺りは静まり返ったままである。
もう一度扉をノックし、先程と同じセリフを扉に向かって尋ねてみる。
相変わらず静まり返ったまま変化は無い。
聞こえてくるのは風が木の葉を揺らす音だけである。
本当に誰もいないのかもしれない。
その時ふと、私の中で邪な感情がむくむくと芽を出し始めたのである。
もしも扉に鍵がかかっていなければ、中を探索できるかもしれない。
そうさ!私は決して荒らす為や物盗りに来たのではないのだ。
ただ何があるのか、ここがどんな場所、どんな意味を持った場所なのかが知りたいだけなのだ。
ただ見るだけ、探索したいだけなのだ。
少し見たらすぐに帰るのだ。
自分の中でそう言い訳をしながら、私はそっと扉のフックに手をかけ扉を押した。
するとギギギ…と言う軋み音を立てながら、扉はゆっくりと開いた。
そろりと中へ入ってみた。
もしも人が出てきた時に不審に思われない為に、小さく
「ごめんください。
どなたかいらっしゃいませんか?
もしもし?」
等と呟いてみるが、一向に誰かが姿を表すような気配は無いままである。
内心安堵しながら扉を静かに閉め、中を探索した。
建物内は埃っぽい淀んだ空気が立ち込めている。
まずは一階から見て回ったがどの部屋も、使われていたのだろうか?と思われるほど長年の埃が積もってはいるものの、部屋は綺麗に整頓されていた。
そして玄関近くの石造りの階段を登り、一番手前の部屋から見ていく事にした。
どうやらここは客室のようだ。
部屋にはドレッサーに鏡台、ベッド、二人掛け用程のサイズのソファーと小さな丸テーブル等、数日間泊まる程度ならば十分な程の調度品が揃っている。
いつからこの館は無人になったのであろうか?
まるで夜のうちにパッと魔法でもかけられて人が消えてしまったかのような、そんなイメージが脳裏を過ぎったのである。
それはきっと丸テーブルの上で埃をかぶっているワインとワイングラスのせいである。
大概お客人が帰られたら、その時点でこれらの物は早々に片付けられるはずである。
何せこれだけ広い館なのだ。
使用人の一人や二人くらいいるはずである。
住んでいた住人が余程の変わり者でもない限りは。
その上ベッドの布団も先程まで誰かが寝ていたのではないだろうかとさえ感じてしまう程、まるで脱皮した抜け殻かのように、丸く膨らんだ布団の真ん中が凹んだ形のまま放置されている。
この部屋で誰かが争ったような形跡は見られない。
だからといって証拠隠滅に掃除されたと言う印象も感じられない。
もしもそうであるとするならば、ワイングラスや布団はとっくに整頓されているはずであろう。
しかしそうすると更に不思議な点が浮上する。
それはこの部屋に泊まった人物の荷物が一切見当たらないと言う点であろう。
大概、人が外出の際にはどんなに荷物が少ない人間でも小さな鞄の一つくらいは持ち歩くものだ。
「財布を衣服のポケットに入れるからNo鞄」と言う人間もたまに見かけるが、ベッドに誰かが寝ていた形跡が見られる事から、この部屋を利用したのは宿泊客であると考えると、やはり着替えも何も持って来ないと言うのは不自然なものである。
一体この館で何が起こったのであろうか…?
―FIN―