56寸法師 まだ未完成
まだ執筆途中です。
本日はクリスマスですので、去年アップした作品を再アップする事にしました。
もしも興味がありましたら、このリンクから飛んで見て下さいm(_ _)m
https://novel18.syosetu.com/n3878ix/
やぁ、こんにちは!
僕は56寸法師。
その名の通り背丈が56寸あるんだ!
えっ⁉︎
普通の人間じゃねぇか!って⁉︎
まぁまぁ、良いじゃないか!
細かい事はどうでも。
そんな事より僕は今日で17歳を迎えるんだ!
僕の住んでいる集落では17歳になった男児は、冒険に出て綺麗なお嫁さんを探しに行くというしきたりがあるんだよ。
だから僕は今日から旅に出なくてはならないんだ。
そうだなぁ…。
どうせ見つけてくるのならとびっきり綺麗なお嫁さんが良いなぁ。
それに慎ましやかで、お淑やかで、優しいお嫁さんだったら最高だぜ!
…えっ⁉︎
旅に出るのは男児だけなのかって⁉︎
女児はどうするのかって⁉︎
もちろんうちの集落は男も女も皆んな平等で差別や偏見はないからな!
女児だって17歳になったら、旅に出て良いお婿さんを探しに行くのさ!
どうだ⁉︎
凄く平等だろ⁉︎
うちの集落は男も女も皆んな一緒なのさ!
だからうちの集落の女児は皆んな逞しいんだぜ!
小さいうちから皆んな男児と同じく育てられて剣技も習うしな!
えっ⁉︎
女は男に護られるモンだって⁉︎
チッチッチ、何言ってんだよ。
そんな偏見ナンセンスだぜ!
我が集落では女も男の3歩前くらいを歩くのがトレンドだぜ!
そうでなくてはお婿なんか探しに行けないばかりか、お婿さんを護る事なんか出来やしないだろう⁉︎
アッハハ‼︎
まぁ、そんな感じで我が集落では強き者を求めている感じだ。
さて、そろそろ長老の話を聞きに行かなきゃな。
そんじゃあちょっと行ってくらぁ。
男は誰にともなく心でそう語り、長老の元へと歩いて行った。
「コウよ、誕生日おめでとう。
今日でお前は17歳。
これからお前は一人で旅に出て素敵なお嫁さんを拉致りに行くのじゃ」
長い白髭を手で伸ばしながら長老は言った。
すかさず横で聞いていた、見事に電球のように頭部が光っている小柄な老人が
「長老、拉致りに行くのではなく探しに行くのです」
小声でそう言った。
「おぉ!
そうじゃった‼︎
ついうっかりしてもうての…。
オ…オホン、ふくよかなお嫁さんを探しに行くんじゃった」
「いや…誰もそんな事言って無いっす」
周りで聞いていた村人たちもそう言って手を横に振りました。
「そ…そうか。
まぁよい。
そういう事で、お嫁さんを探しに行くのじゃがそれまでの道のりにどんな冒険が待ち構えているか分からぬ。
この行事はこの村での最大の洗礼とも言えよう。
しかしこれを乗り越えた先にはきっと大きな幸せが待っているに違いない。
きっと乗り越えて帰ってくるのじゃぞ」
やや無責任な台詞を吐きながら長老は男に樫野剣とお鍋の蓋を男に差し出した。
「ちぇ〜。
この村の最大の行事なんだからもっと良いモンくれても良いだろうに、支給品がケチ臭ぇな」
コウはボヤきました。
「何を言っておる。
我が集落でいい装備なんか用意出来るわけ無かろうに!
我が集落は貧乏なんじゃぞ!
鉄器なんか買えるわけ無かろう‼︎
贅沢を言うのではない。
それにこれは修行でもあり洗礼なのじゃ!
そこから自力で手に入れてこそお主の真の力が見出せるっちゅうわけじゃ」
「へいへい。
まぁそういう事にしておきましょうかいね。
んじゃ有り難く頂きますよ」
後頭部をぽりぽりと書きながら男は言いました。
装備を整えた男は
「では行って参ります!」
村の皆に挨拶をし、また村人たちも
「いってらっしゃい!
コウ、気をつけてな‼︎
きっと生きて帰って来いよ!」
口々にそう言いながらコウを見送りました。
早速村を出てあてもなく暫く歩き続けたコウは道中で悩みました。
勇み足で出てきたものの綺麗な嫁とやらは一体何処へ行けば逢えるのやら。
西を向いてもジャングル、東を向いてもジャングル、もちろん北や南を向いても同じような風景が広がっております。
「はて…一体何処へ向かったらいいのやら。
素敵なお嫁さんはどこだい?
誰か教えておくれ。
僕は何処へ行けば良いんだい?」
困り果ててコウはジャングルの木々に語りかけました。
もちろん答えなど返ってくるはずもありません。
以前とジャングルの中はシーンと鎮まり返っております。
コウは早くも音を上げたくなり、ため息を吐いて座り込んでしまいました。
「あぁ〜素敵なお嫁さんどころか、僕はこのままここで死ぬんじゃ無かろうか…。
どっちを向いてもジャングル、ジャングル、ジャングル…。
それに段々と腹も減ってきた。
あぁ…僕はもう帰りたい。
帰って村の女で良いから結婚したい。
あぁ誰か僕の3歩前を歩いて僕を護って‼︎」
涙ながらに天に向かってコウが訴えていると、何処からともなく
「…だニャ…」
何者かがそう言っているのが聞こえて来ました。
これまで動物の足音一つ聞こえてこなかった静寂の中、何者かがいる事に恐怖を感じた。
何者だ…?
敵か…?
それとも味方か…?
いや、そもそも気のせいなのではないだろうか。
もしかすると腹が減りすぎて気がおかしくなったのかもしれない。
コウは今度はもっと耳を澄ませてみました。
今度は何も聞こえて来ません。
無音の世界の中、キーンと言う耳鳴りだけが聞こえた。
気のせいか…。
ホッとしたような、しかしもしかしたら味方になってくれるような存在と出会えたかもしれない事への期待を裏切られたような失望感を心の裡で混在させながらコウはまた座り込みました。
はぁ〜…腹が減ったな…。
なんでも良い。
今すぐに何か食べたい。
せめて木の実の一つでも成っていれば良いのに。
そうため息を吐いた時また再び、今度ははっきりと聞こえた。
「あーぁ…しょうもない男だニャ。
まだ旅に出てから数時間しか経っていないのにもう音を上げてるニャ。
そんな事で嫁ニャンか探せるものニャンかニャ。
こんな事じゃ嫁を見つける前にキミが飢え死にする方が早そうだニャ」
「誰だ⁉︎
何処にいる⁉︎」
コウは辺りを見渡しました。
しかし姿は見えません。
辺りを警戒しながら見回していると
「こっちにくれば川があるのに何故そうしニャいニャ?
川には魚がいるニャ。
ご馳走♪
ご馳走♪
我にとっては宝の山だニャ」
そう聞こえました。
声のした方を見回していると
「こっちだニャ。
こっちこっち」
木の上に薄ぼんやりとしたシルエットが見えた。
それはまるでカメレオンのように木々に擬態していて、声がしなければ決して分からない者であった。
そしてそれは徐々に徐々に姿を現していった。
次第にはっきりとした姿が見えた。
それは縞々模様の長い体毛に覆われ、シニカルな笑顔を浮かべている猫だった。
「お前に良い事を教えてやるニャ。
もちろん世の中タダで何かを受け取ろうニャンて上手い話がある訳ニャいニャ。
お駄賃は魚で良いニャ。
今回は貸しにしておいてやるニャ。
ここから東にずっと行った先に大きな川があるニャ。
魚ならそこにいっぱいいるニャ」
それだけを言って縞々の猫は姿を消しました。
見事な擬態です。
コウにはもう猫が何処へ隠れたのかも分かりません。
あの猫は何者なのか、いやそれ以前に猫が人間の言語を話していた事自体が信じられません。
きっと夢でも見ているのだろう。
これはきっと悪い夢。
それかもしくは空腹のあまりにとうとう幻覚が見えるようになってしまったのかもしれない。
あぁ…僕はもうダメだ。
もうここで飢え死にしてしまうんだ。
そんな思いが脳内を埋め尽くしたが、しかしだからと言ってこのまま黙ってここに座り込んでいたとしても、どの道自分に残されているのは飢え死にする道しかない。
とにかく今は頼れる物は何もないので、藁をも掴む思いで怪しい変な猫の言う事を信じてみるしかない。
そう決意したコウは縞猫の言っていた東にあるらしい川とやらを目指して歩いて行った。
熱帯気候の暑さは過酷だ。
ジワジワと汗が流れ続けて、黙っているだけでも体内の水分や体力が消耗されていく。
コウは空腹の他にも今度は喉の渇きに悩まされた。
あぁ…川は何処だろう?
川に辿り着ければ水が飲めるかもしれない。
朦朧とした頭でそんな事を考えながらコウはヨロヨロと足元おぼつかないまま歩き続けた。
暫く歩き続けると何やら遠くの方からサラサラとした音が聞こえて来ました。
コウはもしやようやく川に辿り着いたのだろうかと思い、足早に音の聞こえる方へ近づいて行きました。
コウの想像した通りサラサラとした音は近づくにつれて段々とチョロチョロとした水の音に変わっていきました。
川を覗き込むと小さな熱帯魚が沢山泳いでおりました。
あの縞猫の言った事は本当だったのです。
川の水はドロリと緑色に濁っておりましたが、コウは喉の渇きに耐えられず川の水をガブガブと飲みました。
水をしこたま飲んだコウは今度は空腹感に耐えられなくなり、川の小魚を取る事にしました。
しかしコウの持っている道具と言えば、小さな木の板を適当に繋ぎ合わせて作られたお鍋の蓋と木の剣のみです。
どちらも釣りには使えそうにありません。
縞猫に言われるまま川まで来たは良いが、魚が取れないのならば全く意味がありません。
困り果てたコウは柔軟性がありそうな木の枝を探しそれを植物の蔓で丸い円型を作り、適当な大きな葉を沢山集め、蔓で丸い円型に縛りつけて魚を掬えそうな皿を作りました。
そしてその皿を持って川の小魚を掬いました。
「や…やったべ‼︎
魚を掬えたべ‼︎」
嬉しさのあまりそう叫びながら岸に上がって魚を掴もうとしたその時、水中から上げられて苦しそうな魚が何としても生き残ろうとするかのように勢いよく皿の上で飛び跳ねます。
そして皿を持ってるコウの手に噛みつきました。
「ギャァ‼︎
ただの小魚だと思ってたらピラニアだったべ‼︎」
痛みの余りそう叫びながらコウは皿を投げ捨てて逃げました。
逃げ出したもののコウのお腹は依然と満たされぬまま。
しかしまたピラニアに噛みつかれるのはもう嫌です。
コウは空腹を我慢しながら更にジャングルの中を彷徨い続けました。
そうしているうちにコウは段々と腹痛を感じ始めました。
川の濁った水を飲んだからでしょう。
コウのお腹はゴロゴロキュウと仕切りに音を立てます。
コウは痛みのあまりにしゃがみ込みました。
そして同時に便意を感じました。
すかさずコウは大きな放屁と共に殆ど水に近い泥状の物を爆発させました。
放屁とほぼ同時だったと言えるほどにそれは勢いよくほとばしりました。
すっかり臀部を汚してしまったコウは川にピラニアがいないかを確認しながら、恐る恐る川に入り下半身を洗いました。
出す物を一通り出したコウは再び歩き始めました。
暫く行くと何やら木に果物のような物が成っているのが見えました。
それは黄色い実でぷっくりとした形をして、形はバナナのようでした。
コウは空腹に耐えられず木の剣でその実をもいで齧り付きました。
「うぉえぇぇ‼︎
苦っ‼︎
不味いべ‼︎
これはバナナでねぇのか⁉︎」
そうです。
コウが食べたのは種子が多くて苦く、とても食用には出来そうもない芭蕉の実だったのです。
あまりの不味さにコウは何度も吐き出しました。
その上また便意を催し、また大きな放屁と共に殆ど水に近いスープカレー状のものをほとばしらせました。
まさに泣きっ面に蜂とはこのような状態を言うのでしょう。
未だに空腹は満たされず、腹痛に悩まされ、挙げ句の果てには脱水にまでをも悩まされております。
三重苦の身になってしまったコウは段々と頭が朦朧として来ました。
あぁ…僕はお嫁さんどころかもうここで息絶えてしまうんだ。
絶望感に襲われ、動く気力すら失ったコウはその場で寝転びました。
僕はもうここで土に還るんだ。
絶望のあまりに涙が流れました。
そこへ何やら楽しそうな歌声のような物が聞こえて来ました。
今まで周囲には誰もいないと思って絶望していたものでしたが誰か人がいるかもしれない、そう思うだけで希望の光が差し込んで来たような期待感で胸がいっぱいになりました。
人がいるかもしれないと言うだけで、何と有り難く、そして心強く思うものだろうか。
人は誰しも本当の孤独が訪れた時に、初めて他者の存在に感謝出来るものなのかもしれない。
先ほどまで空腹で力も出なかったところでしたが、コウは一筋の希望が差し込んで来た事で先ほどまでの疲労感を忘れ、勢いよく立ち上がりました。
早速歌声の聞こえる方へ行こうと踏み出した時、先程の怪しげな縞猫の声が何処からともなく聞こえて来ました。