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意識が途切れた。


鳴海廉の網膜に、数値が浮かび上がる。


[CONSCIOUSNESS FRAME: 29/30]


誰かが叫ぶ声が聞こえる。響き渡る警報。壁に設置された生体センサーが不規則な波形を描いていた。


「フレームが不安定です!患者の意識が崩壊していきます!」


瞼の裏側で、光が明滅する。次のフレームへの移行を待つ。0.033秒。人間の意識が次の瞬間へ飛び移るまでの永遠。その隙間に、何かが潜んでいる。


[CONSCIOUSNESS FRAME: 30/30]


白衣の研究者たちが慌ただしく動き回る中、モニターに映し出された被験者の脳波が激しく乱れていた。瀬川誠。45歳。強盗致傷の前科を持つ男が、記憶編集リハビリ制度の被験者第167号として選ばれた。今、彼の意識は崩壊の瀬戸際にあった。


「鳴海先生!このままでは─」


[CONSCIOUSNESS FRAME: 1/30]


新しいフレームが始まる。瀬川の口から血が溢れ出した。その瞳は、漆黒の深淵を映していた。


「見えるんだ...フレームの向こうに...何かが...」


瀬川の言葉は途切れた。モニターが平坦な波形を示す。


[CONSCIOUSNESS FRAME ERROR]

[FRAME SEQUENCE TERMINATED]


上席研究員として、鳴海は死亡時刻を記録しなければならなかった。しかし彼の手は、端末の上で止まっていた。瀬川の最期の言葉が、頭の中で反響する。


フレームの向こう。


人間の意識が持つ0.033秒の空白。その闇の中に、何が潜んでいるのか。


誰も、その答えを知らない。

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