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時給戦隊シフトレンジャー  作者: 二毛作


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第1話

「やばい、金が無い……」


 俺こと緑青祐介(ロクショウユウスケ)は、軽くなった財布の中を覗き込んでそう呟いた。


 いやいやいや、今月始まってまだ5日も経ってないのに残り財産が500円ってなんだよ、今時の小学生でももっと持ってるやついるぞ。


 何を隠そう今月の経済はあれに荒れた、発売が急遽早まったCDや、発売が1週間前に知らされたフィギュアだとか、買う予定はなかったんだけどついつい手を伸ばしってしまったBDを結局全巻購入するなどなど。おそらく今月だけでアホみたいに金を溶かした。軽く5万は溶かした自信があるね。


 いまの俺はこの不況改善に多いに貢献したはずだ。これはもうあがめられても良いんじゃ無い?だってあれよ?お小遣い制の高校生が約5日足らずで5万以上世の中の金を回したんだからね。


 しかも月の小遣いは学校への交通費込みで7千円だ何故中途半端な数字なのかといえばだな、10歳からもらい始め10歳の時は500円、次の年には千円、その後一の位が増えるに連れて2.3千円とふえていき、17歳になる今年は7千円と言うことだ。


 どうよ、7千円の小遣いをために貯めて5日間で消費するこの経済力というか、思い切りの良さ、こんな男らしい決断最近の若いものにはできないと思いますが、そこのところどうでしょう。


 しかし、冗談をいってる場合では無い。今月の定期代はクリアしたから大丈夫だが、これでは碌に買い食いなどもできないではないか。


 頼みの綱は我が母親であるか……


 っべーよまぢべーよ、小遣いねだるとかまぢいつの時代の小学生だよ、俺いままで一度もしたこと無いわ、まぢべーわー。


 どうでもいいけど、「まじ」を「まぢ」って書いてる奴を見ると、とんでもなく頭がバカに思えるしなにより、見てる側としてはかなりイラつくのなんでなんだろうね。舌足らずなの?発音がthみたいになっちゃってるの?不思議で仕方が無いよまぢで。


 閑話休題。


 まぁ、ダメでもともと、当たって砕けろ。そんな成功確率0%なかんじで母親に当たって見るしか手立てがなさそうだ。


 両手いっぱいに下げた袋を持って、母親に「お金を貸してください」といって見ても、なんら説得力というか、かしてやろうと言う気が起きない。俺なら迷わず「それ売って金にしろ」っていうね。


 だがあいにくなことに手に入れたグッズを手放すような愚行には走らない。嫁たちは健全に皆平等に愛するのが俺のモットーであり信念だ。いやぁ、二次元て最高だよな、なんだみんなあんなに良い子ばかりなんだろうか。やっぱ三次元とは次元が違うよ。


 そんなことを思いながら、俺は家に帰るべく駅の方に歩みを進めたのだった。


☆★☆★☆★


「無理です」


「ですよねー……」


 電車に揺られること15分、歩いて10分、大凡30分しない程度で我が家に到着した俺は、買い込んだグッズを自室へとしまい込んだ後、一回で寝転がりながらテレビを見て海苔巻きせんべいを貪り食う、我が母上に訪ねたのだ。


「お金をお貸ししてくれないでしょうか」


 その言葉を口にしたあと、母親は考える間も無く先ほどのように答えた。秒殺だった。当たって砕けろというが当たる寸前に砕けた気分だ。


 畜生残りの25日余りを俺は500円で切りぬけなくてはならないというのか、なんてことだそれは食欲の化け物と謳われている男子高校生に「餓死しろクソが」と言っているのとほぼ同意じゃないか。


「ていうかあんたさ」


 すると、せんべいを貪り食っていた母が口にせんべいを残したままそう話した。


「もう高校生なんだし、いい加減アルバイトとかしてもいいんじゃないの?」


「アル……バイト……だと」


 アルバイト言うのはいわゆるあれですよね、バイトと略して使われる言葉であっておもに企業の外部業務委託的な仕事を売ることになるあれですよね? 基本的に時給という感じでお賃金が支払われるあれですよね? そして時給発生してんだからという理由で深夜のワンオペなどをさせる鬼畜な雇い主がいるんですよね? 無理でしょ。


「いやいやいやいや無理無理無理無理!!俺に深夜のワンオペなんて絶対に無理、連絡なしにfly awayする自信があるよ」


 無理だね、ツイッターで見かけたあんな地獄絵図俺には無理、一日で逃げだすどころかワンオペって言われた時点でやめる覚悟まである。だって冷静に考えてみろよ、今生きてきた17年間、何事も両親まかせに生きてきた輩が働き出してみろ、迷惑掛けるどころか損害賠償を請求される恐れもあるぞ。これはあれだな、働かない事こそが正義、それこそが社会全体の利益にもつながるんだな。だって最近就職難とか言われてんじゃん? 働く意欲のない奴が行くよりも意欲があるやつが言ってその分の枠を開けておいた方がいいでしょ絶対。


「ワンオペないところで働きなさいよ、何もブラックに勤めてまで小遣い稼げなんて言ってないでしょう」


 依然として寝そべってせんべいを貪り続ける我が母上があっけらかんとした態度でそういった。


「何も自分の息子を過酷すぎるような場所で働かせようなんて思ってないわよ、普通にコンビニのアルバイトから始めてもいいしいきなりそういったワンオペやりたいドМ精神をお持ちならそこに行けばいいし」


 そこで我が母上は一旦言葉を区切り、寝そべっている体制から起き上がりテーブルに置いてあるお茶をすすった。なんだかすげぇ貫禄のある人みたいに思えてきたの俺だけ?


「とにかく今のあんたには社会経験が足りなさすぎ、自分の利用する路線しか知らないサラリーマンよりひどいわよ」


「何その微妙なたとえ」


「学校で学んでるだけで大人になれるなんて勘違いするんじゃありません、きちんと社会に出て大人の汚い部分をしっかりと学んできなさい、さもないとあなたを夕飯のおかずに並べます」


「食人人種怖い」


 しかしながら我が母上の言い分には一理も二理もある、うむこれが完全論破ってやつなのだろうか。


 乗せられやすいのか、はたまた母上の乗せ方がうまいのかは分からない、寸前までは何が何でも働くものかと思っていた俺だったのだが、不思議とやる気が出てきている事に気がついた。いや、金がたくさん手に入るという期待からかもしれないが。


「わかったわかった、働きます働きますよ、金をがっぽがっぽ稼ぎますよ」


「よろしいなんなら一家の大黒柱になるくらい稼いできなさい」


 それは高校生のバイトでは無理があるのではないだろうか。


 まぁそんな事は言うものの、自分の小遣いは稼がなくてはならなくなったわけで。PCでもなんでも使ってバイトを探さねば、俺の財布の中は徐々に氷河期へと突入していく。というかすでに氷河期だった。


 しかしまぁ、今の世の中は便利だ、自分の部屋にいながら簡単に仕事を探すことが出来る。これはもう俺はやる気に満ち溢れているとしか言えない、満ち溢れすぎてほかの人までやる気にしてしまいそうだ。別ウィンドウで開いたページで『パンパカパーン!』とか『選り取り見取りっぽい?』とか聞こえてくるけどやる気は十分だ。


「ぬぁ!?大破だと!?」


 いかん、いつの間にか別ウィンドウがメインになっているではないか、でもしかたないよね、だって可愛いんだもん。可愛いは正義ということは、つまりその可愛さに振り回されている俺は正義の一部に他ならない、この行いは正義だ。


 しばらく遊んで……いや可愛さの正義の行いをしていたところで、俺は奇妙な広告を見つけた。


 それは給食サイトのページに出ていた、広告バナーのようなもので、黄色一色の背景に、赤太文字ででかでかと『ヒーロ募集』の文字が書かれていた。


 ヒーロー募集?え?どういうこと?特撮系のスーツアクターとか、そういうイベントのスーツアクター的なものの募集の事?


 それとも落ち目の会社を救ってくれるようなスーパーヒーローを募集してるわけ?


 何にしてもこのインパクトはすさまじい、だってなんの仕事かわからないのに興味だけ惹かれるんだもの、特に男の子だったら誰でも興味がわくんじゃないかしら。


 俺もその例にもれず、好奇心からかマウスカーソルはその広告の元まで吸い寄せられていて、右手の人差し指が、勝手にクリックしていた。


 別ウィンドウで開かれたページ、そこに書かれていた文章を目にして俺は目を疑った。


――――


ヒーロー求む!!


【職種】

[A]戦隊ヒーロー(アルバイト)

 

【勤務時間】

00;00~24:00の間でシフト勤務

 次のいずれかのタイプで勤務可能な方。

 (A)月~金の週5日(B)土日両方を含む週5日

 (C)土日専門(休暇シーズンは

       土日両方を含む週3~4日)



【対象となる方・資格】

早朝または深夜の勤務、土日両方を含む

 週5日の勤務が可能な方歓迎!

運転免許があるとなおよし


【勤務地】

全国各地(当社の車で移動となります)


【給与】

基本時給2,000円 ※入社以降2ヵ月間

 (業務習得の状況により短縮・延長有)は

 基本時給とは別



【待遇・福利厚生】

・交通費支給(上限/月5万円迄)

・昇給制度、

・社保完備

・登用制度(上記全て当社規定に準ずる)



ご応募はこちら↓


――――


 なんだこれ、本当にヒーローなの?まず何も事業内容書かれてないし、本当に何するものなのかわからない。


 しかも戦隊ヒーロでバイトって何やねん、この文面だけ見たらすごく弱そうにしか見えないんだけど。


 でも、なんなんでしょう、このわくわく感。怪しいとわかっているのに、ものすごく興味がある。本当にヒーローになれるならなってみたい。いやどうせスーツアクターみたいなものなんだろうけどさ、それでもやっぱり男たるものヒーローへのあこがれは消えないと思うの。


 それにだ、面接とかして怪しいと思えばバックレてしまえば問題ない。バイトとは常にバックレられる危険性をはらんでいるのだよ経営者諸君、君たちの思い通りに動くと思うなよ?俺はそのさらに上を行って働かないぞ。


 そんな人としてどうなのかと、俺の人格を疑われそうな決意をした俺は、応募ページに富んでから、必要な項目を入力してから、入力してから……


 手が止まった。


 いや待て、落ち着くんだ緑青祐介よ、これは実は男の好奇心を利用した新手の個人情報入手詐欺の一部ということは考えられないだろうか?いつの間にか携帯番号と、メールアドレスが、変な業者に売り飛ばされていて、いつの日にかうっかりホモの集まる出会い系サイトに登録されていたりしないだろうか?


 しかもこちとら住所まで入れてしまっている、もしかすると、そのサイトの利用者の中に悪質なやつがいたとしたら家まで押しかけてくるかもしれない。


 いやだ、無理だ恐ろしすぎる。働くのにこんな恐怖と格闘せにゃならんのなんて無理だろ、どう考えても無理だ。社会人になる前にこんな恐怖と戦っていかなくてはならないのか、さすが社会人、名前に釈迦が入っているだけはある。


 いや、これに出しておいて、だまされたとしよう。それ以来恐怖でPTSDになったとかなんとかごまかしてお小遣い制期間を延長することもできるのではないだろうか?これは天才。働かないことに関しては恐ろしいほどに頭が働くなぁ。


 まて、お小遣い制度はかなり時給が低い、それならこの求人に応募して騙されたとして弁護士とかに助けを請うたら時給以上の慰謝料とかもらえるのではないか?うんそれでいこう。


 そんなわけで必要事項をすべて入力した後、画面の一番下にある応募のボタンを押す。これで俺のメアドはホモサイトに登録されたのだった。いや違うわ。バイトの面接だよ。


 若干内心でびくびくしつつも、俺はそのまま他のカフェとかカラオケとか今どきの高校生とかがバイトしていそうなところでのバイトを探そうとした。というのもここが仮に受かったとして1日働いてみたら超絶ブラック企業ということもあるので、その保険として考えておく必要があるのだ。


 これはできる、きちんとしたリスクヘッジに我ながら感動すら覚えるレベルだよ。きっとこれで将来社畜になったとしても自分の身を守るために転職とかに動くことができる。これは社会に出るための前哨戦だったのか、母上ありがとう。あなたの息子は立派になりました。


 そんなことを考えていた時だった。来店を知らせるチャイムが鳴った。こんな時間にだれやねん非常識なとか考えていたら。


「祐介、あんたにお客さん!」


 我が偉大な母上の声が階下からきこえてきた。


 おっかしいな、今日なんか予定あったっけ?そもそもうちに訪ねてくるような知合いいたかな?自分で言ってて悲しくなるけど、今時わざわざ家に訪ねてくること自体が少ない、まずラインでやり取りしてから目的地の近くで待ち合わせするのが今時なんです。家のチャイムが鳴るとかそんなのはNHKか宗教勧誘くらいしかないのだ。


 そんなことを考えながら玄関へと向かうと、何やらビシッとスーツを決め込んだ女性が立っていた。なんかバリバリ仕事やってますけども?みたいな雰囲気をまとったいかにもって感じの女性だ。


「あの、なにか?」


「初めまして、緑青祐介様でお間違いないでしょうか?」


「はい、俺ですけど」


 しまった、公式の場では俺って使っちゃダメなんだっけ?いや許される、俺まだ高校生だし、何なら今はまだ制服を着ているからこの女の人もその辺の多少の無礼は許してくれるに違いない。


 その女性は俺の顔をじっと見ると何やら手元の紙に何かをメモしていた。なんだろう「ブッサwww」とか書かれていたかもしれない。もし書いてたら殺すぞ女ァ!!!


 すこしばかり何かを考えてから女性はその紙をファイルにしまうと唐突にこんなことを言い出した。


「株式会社last hopeの瀬川です、早速で申し訳ないのですが本日この後お時間の都合はよろしいでしょうか?」


「……は?」


 株式会社last hopeえ?それって確か俺がさっき応募したまるっきり意味の分からないヒーロー募集しているあの会社の母団体というか親会社というか、とにかくなんか偉い人とかがいるところの人ってことですか?


 それが何で今うちに来てるんですか?だって応募完了画面が出てからまだ10分と経ってないよね?どういうこと?あの会社ってこの辺にありアしたっけ?よく住所とか確認してなかったから全然わからないけど、少なくとも10分そこらで我が家に突撃できるような位置に会社なんてなかったと思うのですがね?


「弊社の求人にご応募いただいておりましたよね?その件で伺ったのですが」


「いや、それははい、応募はしたんですけど、なんていうか早すぎません?」


 そう返すと瀬川さんは不思議そうな顔をしたがすぐに納得がいったのか、顔が「ああ、そういうことね」と言っていた。


「弊社自慢の移動方法なんですよ、頑張れば東京大阪間を15分で移動可能です」


「そんな革新的技術をなんで面接ごときに使ってるんですか!?」


 リニアもびっくりするような移動速度だよ、もう今頃リニア開発陣とか泣いてるし、いじけて酒を浴びるように飲んでくだまいてるって。


「それより、一応時間はありますけども」


「それは良かったです。ご自宅で面接というのもなんですから、場所を変えてもよろしいでしょうか?」


 美人の笑顔って破壊力すごいね、危うくお布施はいくらですか?って聞きそうになった。

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