やり残したこと
ユキナがやり直したこと
それを聞き俺は箇条書きでリストにまとめた
・遊園地に行くこと
・学校に行くこと
・旅行に行くこと
他にはないのかと聞いてみた
遠慮してもらっては困る
「うーん・・・私はこれができれば満足かな・・」
どういう顔をすればいいのかわからない
困った風に微笑んでいた
その笑顔が少し悲しそうに見えて
俺は涙を流しそうになったがグッと堪えた
俺たちはまず遊園地に行った
遊園地は電車で乗り継ぎ、そこから高速バスに乗り1時間ほど揺られていると
「これが遊園地ねー」
ユキナは初めて訪れるみたいだ
幽霊のユキナに乗れないアトラクションもある中
楽しんでもらえるかどうか不安もあった
「何か乗りたい乗り物はあるか?」
「コーヒーカップ!!」
「おけ」
遊園地に着くなりコーヒーカップに乗った
「もっと回してよ」
ユキナの要求で高速でハンドルを回し、回るカップ
「たのしぃね」
無邪気に喜ぶユキナを見て俺も頬が緩んだが
いかんせん、目が回った
お化け屋敷では幽霊なのに怖いので行かないと叫んだり
パレードを見たり、食事をしたりと楽しんだ
「楽しい時間はあっという間だねー」
あっという間に日は落ちて、俺たちは帰宅した
次に旅行に行った
計画を立て、バイト先のゆうこさんには休みを取りたいことを伝えた所快く承諾してくれた
旅行する場所は長崎県
修学旅行で最も訪れるところを選んだ
俺たちは平和公園、原爆資料館に行った
原爆資料館には修学旅行生の様な集団がいた
彼らも今青春時代を築いているのだろうか・・・
そして
ユキナのやり直したいことリストも残すところ1つとなった
学校に行きたいとユキナは言った
ユキナの願いを叶えるために俺は母校に連絡し、訪問できないか連絡をとった
明日の18時ごろでしたら大丈夫と許可をもらえた
今日が決行日、ユキナと学校に行く日となった
バイトのあとに学校に行く予定だ
「それじゃバイト行ってくる」
この日はユキナとバイトに向かった
「最近、たのしそうだねぇ」
バイト中ゆうこさんは明るく話してくれた
「明るくなったよ、ここに来た頃は、嫌になるくらい暗い顔をしていたからお姉さんうれしいよ」
仕事の手を動かしながらはっははと笑っていた
ここにきたばかりの頃の俺は荒んでいたのかもしれない
「もしかして好きな子でもできた?」
ゆうこさんは興味ありげに、じろりと見てきた
近くにいるユキナもチラリとこちらをみてくる
「いませんって」
俺は興味がないふりをして目をそらす
俺はゆうこさんに好意を抱いている
「ほんとにぃ~~?」
「ほんとですって!」
ユキナも本当は話に混ざりたいのだろう
俺のほうをちらりと横目で見つつ、ウロチョロと動き回っていた
無事にバイトが終わった後、俺たちはその足で学校に向かった
「なんだかなつかしいね」
教室を見ながら、ユキナは思い出に浸ってる様だった
誰もいない教室を見ながら俺もノスタルジックな気持ちになる
これでユキナのやり残したことはなくなるはずだ
無事に成仏ができるのだろうか
しかし、どれほど学校を回っても、何かが起きるということはなかった
「何も起きないね」
「・・・そうだな」
学校訪問が終わり俺たちは帰宅することになった
ユキナが成仏できるようにとやれることはすべてやった
結果だけ告げるとユキナは成仏することができなかった
「うーん、だめだったね・・・」
「・・・・」
悲しそうにつぶやく彼女になんと声をかけてよいのだろうか
「きっとなんとかなる、一緒にまた考えてみよう」
この時かけた声が今でも正解だったのか間違いだったのかはわからない
まっすぐ家に帰宅した
つかれた、今日はもう寝よう
夜中ふと寝苦しさに目が覚めた
水が飲みたい
そう思い俺は立ち上がると
黒いシルエットがモゾモゾと動いているのが見えた
「ユキナ・・・?」
俺はユキナに呼びかけた瞬間
ユキナは血走った目でこちらを見てきた後
そのまま俺の首をつかんで締め付けてきた
「ずるい、ずるい、ずるい、あなたもこっちに来て」
ユキナは顔をゆがめ、俺の首を絞めつける手に力を込めた
締め付けられた喉からこひゅっと空気が漏れる
苦しい・・・
そのまま意識を失った
意識を失う瞬間泣いているユキナが目に焼きついた
朝がきた
はっと目が覚めると周りを見渡した
ユキナの姿は見当たらない
ユキナは俺の前から姿を消した
昨日のことは夢だったのだろうか
もしかしたらユキナは成仏したのかもしれない
そう思った
しかし昨日ユキナに締めたれた俺の首には手形の青いアザがついていて
昨日のことは夢じゃなかったと物語っていた