新たな発見
「わだしもバイトに行きたーーーーい」
俺のバイトの時間を察したのであろう
ポニーテルを左右に揺らしながら行きたい行きたいと連呼する
幽霊少女は今日も元気そうだ
「遊びに行ってるわけじゃないんだよ、ほらテレビつけて行くからさ」
俺はテレビをつけながら、諭すように伝えた
「毎日楽しそうにしてじゃん、羨ましいよー」
目を >< にして大声をあげる
テレビはつまらない〜〜と駄々をこねる彼女
週5日8時間働いている間
仕事にならないとユキナには家で留守番をさせている
幽霊はチャンネルも変えられないよ〜〜と言っているユキナが
少しかわいそうに思えてきた
仕方がない
「よし、今日はバイトについて来てもいい」
「ほんとに!?」
彼女は嬉しそうに顔をあげる
「・・・が条件がある。まず茶化さないこと、不用意にうろちょろしないこと、俺に話しかけないこと この3つが守れるなら連れて行ってもいいぞ 約束できるか?」
「やーーくそく・・・・できる!!!」
手で丸を作るユキナ
少し間があったのが気になるのが、即答したユキナを信じることにした。
「お疲れ様でーーす」
「お、来たねぇ」
バイト先に行く着くと30代前半の勝気の顔をしたキリッと凛々しい眉毛が特徴の女性ハキハキとした声で言った
この女性はゆうこさん、俺のバイト先ピザ屋 猫のしっぽのオーナーの店だ
元々店を一人で切り盛りしていたが、繁盛につきバイトを募集したらしい
「今日もよろしく頼むよ」
少し強めに肩を叩かれ、気合も入るものだ
準備に取り掛かろうとする前に
後ろにいるユキナに目線を送る
ユキナは無言で頷いた。
親指を立て、任せてと言いたげな顔でドヤ顔している
俺は心の中で頼むぞと願いながら、仕事の準備に取り掛かった
バイト中ユキナは静かだった
時にうずうずと動きたそうにすることはあっても、俺に話しかけることもなく
基本的に隅の方で大人しくしていた。
お客さんもあらかた捌けたところで
「坊っちゃん、今日は少しソワソワしてるように見えるけど何かあるのかい?」
流石のゆうこさんもチラチラとユキナを見る俺の態度に何かを感じ取ったらしい
「いえ何もないですよ」
「そうかい、仕事に余裕が出来たってことかね。そろそろ調理の方も覚えてもらおうかな」
意地悪そうに笑顔でそう言った
その後ユキナが居るバイトは大きな問題もなく無事に終わった
「ご苦労様、ピザ持って帰りな」
今日もゆうこさんはピザを持たせてくれた
「ありがとうございます」
俺はペコリと頭をさげお礼を言って受け取った
「今度調理を教えるからね、そのつもりでよろしく頼むよ」
「わかりました、今日もありがとうございました。お先に失礼します」
帰り道
「アキトさん、カッコ良かったですよ」
ポニーテールを揺らしながらユキナは興奮気味にそういった
「お、ようやくさん付けか」
以前年上にはさん付けをするように教えた事があるが、話を聞いてはくれなかった
「俺の仕事ぶりを見て、威厳も上がったってことかな」
「・・・少しだけね」
ユキナは照れ臭そうに笑いながら、少し顔を赤らめた
それを言われて俺も少し照れてしまったのだろう
「大人をからかうんじゃありません、ユキナも今日は約束を守れて偉かったぞ」
「私頑張った」
ユキナは胸に手をやり、ドヤ顔をしながら、嬉しそうにゆらゆらと揺れていた
「正直約束守れるかどうか、わからんかったからな」
「やればできる子ですから!」
えっへんと胸を張る
「毎日連れてけとは言わないからさ、たまにはこうして連れて行って欲しいな・・」
眉を下げて申し訳なさそうにしているユキナは捨てられた子犬のようだった
そんなユキナにダメと言えなかった
「今日みたいにするんだぞ」
許可を出された彼女はやったーと言いながら
高速にゆらゆらするユキナはひたすらに笑顔だった
俺の手にぶら下げている、ゆうこさんからもらったピザはまだ暖かかい
俺達は足早に帰宅した
家に帰宅するなり
すぐに食事の準備をしてピザを食べ始めた
うむ、今日も美味である
「いいなー私も食べれればなー」
俺が食事をしている中、ユキナは指を咥えてみることしか出来ない
うぅ、ずっと見られると少し食べずらい
「ほらユキナの分だ」
せめて気分だけでもと思い
俺はピザを一切れ皿に移しユキナの前に置いた
するとどうだろう
「むぐ、美味しい!あきとさん、ピザ食べれるよ!」
ユキナは驚きの声を上げた
皿の上のピザは無くなっていないが
お供えをすることでユキナも食事を取る事ができるらしい
「アキトさんはこんな美味しいもの食べてたんですね、もぐもぐ」
これには俺も驚愕した
お供物って意味があったんだね!
「もう満足です〜」
プハーと息を吐き満足そうだ
今日わかったこと
ユキナに食事を供えることでご飯が食べられるらしい
現実に残されたピザはもったいないので俺が美味しく頂いた