ランクアップ
幽霊少女との共同生活から1ヶ月間が経とうとしていた
最初は引っ越しも考えたが、引っ越しをしたばかり、なおかつ仕事も始めたばかりの俺にそんな余裕はなく、幽霊との共同生活を余儀なくされた
共に一緒に暮らし
いろいろ分かった事がある
幽霊の名前はユキナ
生前の記憶はなく、気づいたらこの部屋にいたらしい
透けるような白い肌にポニーテールに制服姿、少し垂れた瞳がとても優しい印象を持たせられる
制服を着ていることから、おそらく年齢は16〜18歳と言うことになるだろう
この部屋に俺が来る1ヶ月ほど前から住み始め?ていたらしい
「気づいたらこの部屋にいたんですよ、まじで」と彼女は力説していた
俺が来るまでは部屋から出ることが出来ず、永遠にこの部屋で過ごすと不安で一杯だったと語っていた
今では俺の半径100メートルほど自由に動くことができる
俺が外に出ることでユキナも外に出られる
おのずと一緒に出かけることがほとんどになった
「いやーシャバの空気はうまいっすねーーー」
外に出ると彼女は笑顔で背伸びしながら言い放った
とてもご機嫌である
「こら、女の子がそんな言葉を使うんじゃありません」
こうやって外でユキナと話をしていると俺を周りの人は奇異の目で見てくる
きっと周りには独り言を喋る、おかしな人に写っているのだろうか
俺にも生活がある
ユキナがバイト先についてきた時は
「制服似合うじゃーん」と茶化してきたり、話しかけてきたり
店の中をウロウロ駆け回り気が散って仕方がなかった
流石に仕事にならないと思い
次のバイトの時についていこうとするユキナに家でお留守番しなさいと言うと
「嘘、家出れなくなった」
どうやら俺が強く思いを念じると家から出れなくなることが分かった
申し訳ないが、バイトの時だけは家でテレビを見てもらうことにした
ユキナはいつの時代の人でどこの出身なのかと聞いてみたが
どうやらユキナは過去の記憶は覚えておらず
自分の名前がユキナということだけ覚えているらしい
ユキナも俺について色々なことを聞いてきた
俺は1度仕事を辞めたこと、そのせいで親に失望されたこと
その後フリーターとして働いていることを話した
俺は自分の経歴が恥ずかしいと思っていた
誰かに相談したい打ち明けたい気持ちはあったが
親と同じように失望されるのではないか?
見下されるのではないか?
馬鹿にされるのではないか?
そう思い、他人に打ち明ける事はできなかった
しかし、幽霊のユキナには話す事ができた
ユキナは
「大変だったんだね」
とだけ言い、それ以上は何も言ってこなかった
ユキナについて考えた
もしかしたらユキナは仕事を辞めたストレスから生み出した俺の想像の存在なのではないか
そう考え、ユキナにはバイトと嘘をつき病院に行ってみようかと思った
しかし、医者に幽霊が見えるんですと説明したところで。頭のおかしい人というレッテルを貼られるだけであろう。俺もそう考える。
俺が病院に行くことで精神病棟に入院すことにでもなったら、今の生活が崩れてしまうかもしれない、そう思うと病院に行くと言う選択はできず、俺ははどうしたものかと頭を抱えていた
対するユキナは
「ユキトが来てから地縛霊から守護霊にランクアップしたよ」
ニコニコしている彼女はひたすらにポジティブで明るかった
「色々考えても仕方ないし、今を楽しく だよ」
俺が色々考えていることが伝わったのか
ある日彼女はそう俺に言った
彼女にも彼女の思うところはあるのだろう
「そうだな・・・」
しかし、彼女の一挙一動や表情豊かなところを見るに、どうにも俺には想像の存在には思えなかった
俺も彼女の考えに乗ることにしよう
今を楽しく だ
それから余り深く考えるのをやめることにした