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青春とは今この瞬間

ブラック企業で働いている時の俺は

灰色の毎日

毎日遅くまで仕事をして飯を食って寝る

その繰り返しの毎日

楽しいことなどない

そんな毎日だった


今では仕事を辞めてフリーターとして毎日を生きている

今日も仕事を終え

家賃4万円の誰もいないアパートに帰る


「ただいま」


誰もいないはずの部屋

ひとりごと思いつつ部屋に入る

一人暮らしで帰ってこないはずの返事


「おかえりー」


しかし、そんな考えと裏腹に返事が聞こえた

部屋に入ると、ソファでくつろいでる少女がいた

慌てて、目を擦るが少女はやはりいる

透けるような白い肌にポニーテールに制服姿、恐らく10代中盤の少女だろう

少し垂れた瞳がとても優しい印象を持たせられる。


「はーい、お一人様ご案なーい、いらっしゃいませー」

ひらひらと手を振りながら少女は言った


俺は状況が掴めず黙ってると


「台本通り頼むよーアキトクーン」

俺に近づきと肘をついてくる


「あなたは誰ですか?おい家出少女か?不法侵入か?」

「いやいや私ずっといたんですけど、不法侵入はアキトくんっすよ?」

「こいつ・・・クッソ・・なんでこんなことになったのやら・・・」

俺は頭を抱え、ため息が漏れる



「えへーこんな可愛い女の子と共同生活ができるなんて最高についてるじゃない」

えへんと少女は胸を張る


「そりゃ幽霊と共同生活じゃなければな」


窓の外を見てみる

ピチピチと鳥の鳴き声が聞こえた

あぁ今日もいい天気だな・・と現実逃避をしてみる


俺の名前は飯島明人いいじま あきと

この垂れ目の女の名前はユキナ、何を隠そう彼女は幽霊である

なぜ俺と幽霊との共同生活が始まったのには理由がある


新卒で入った会社に勤めて3ヶ月が経とうとした

毎日上司に怒られ、取引先でも怒られ

会社という大きい生き物にこき使われ、夜遅くに帰り疲れて眠る

そして朝が来る、その毎日だった。

自分が想像していた社会人とリアルな現状の違い

理想と現実のギャップに俺の心は疲弊していた

この生活を一生続けていくのか?と自問自答し

悶々と毎日を過ごしていた

そんな時

ピザ屋のアルバイトのチラシをみかけた


「ピザ・・・か・・」


ただのきっかけだった

別にピザが死ぬほど好きでたまらないということではない

ただ今の現状から脱出したかっただけだ

一旦今の仕事をやめて

アルバイトをしながら自分を見つめ直したい

そう思い俺はピザ屋のアルバイトを応募した

すぐに面接し、採用が決まり、それと同時に職場に退職届を提出した


職場からは考え直さないかと言われたし

親からも猛反対されもう少し頑張れだと根性がないだの説得をされたが、俺の決意は固かった

両親にはフリーターとして生きていくことを伝えると現実を見ろ

と呆れられ、お前には失望した実家から出てけと追い出されてしまった。

後悔はない

これは自分の人生だ

自分の意思で選び進んでいくと決めた


その後俺はなけなしの3ヶ月稼いだお金でアパートを借りた

そうして俺はピザ屋のアルバイト生活を始めた

いざ始めてみると面白いもので

初めはうまくいかない仕事だったが段々と手際が良くなり、自分自身の成長が面白いと思えるようになってきた

給料は安いが自分のやりたいことで選んだことだ

文句は言うまい











ピザ屋 猫のしっぽ で働いて、3ヶ月が経とうとしていた


「へい坊っちゃん 、ピザ焼き上がったよ」

「わかりましたー」


30代前半の勝気の顔をしたキリッと凛々しい眉毛が特徴の女性がピザを渡してくる

この女性はゆうこさん

ピザ屋 猫のしっぽ のオーナーである


先ずは洗い物その他雑用から覚えさせられた

それが一通りできてから調理の手伝いをしてもらうからねと言われた

それから3ヶ月たち一通りの雑用はできるようになってきた


俺は返事をして、焼き上がったピザを丁寧に包装し、客に提供した

ピザのチーズの焦げた匂いが食欲をそそる

ピザを受け取った客からはありがとうと感謝をされた

最近ではこう言う小さな客の気遣いが嬉しいと思える


「坊っちゃん、だいぶ様になってきたじゃないか」

ゆうこさんはニヤリと笑いながら言った


「おかげさまです、その坊っちゃんっていうのやめてもらえませんか?」


「ようやく実家から出たって言ってたから飛んだ箱入り息子だよ

一人前に仕事を覚えたら名前で呼ぼうかしらね」

フフンと鼻を鳴らし嬉しそうに答えた


「そろそろ店じまいさ、今日もご苦労様、ほらピザ持って帰りな」

「そんな、いつも申し訳ないです」

「金に困ってるんだろう?遠慮なんてしなくていいさ」

嫌な顔一つせず渡してくれた

正直食費が浮くのはありがたい


「ありがとうございます」

俺は素直に優子さんに感謝を述べ、バイト先を後にした





ピザは熱いうちに食するのが一番だ

俺は足取り早く家に帰宅した  


家に着くなりすぐに食事の準備に取り掛かる

箱を開けるとマルゲリータピザが顔を覗かせた

「それでは、いただきまーす」

パクりと一口頂く

口いっぱいにとろけるチーズとトマトソースの甘酸っぱさが広がる

噛むほどに外はサクサク、中はもちもちの生地の食感が美味しさを増加させた。


「うまい」

やはりゆうこさんのピザは最高だ


「いやー美味しそうですねー」

「ブフォーー」

真横から突然声をかけられ吹き出してしまった


「おおお・・・」

驚きで声にならない声をあげる


「わ、驚かせるつもりはなかったのですが・・すみません」

女性はペコリと頭を下げる

「おおおおお前、なんでここにいるんだ」

驚きが強く、少し強い口調で尋ねてしまった

部屋の鍵は閉めたはずである

「私が見えるんですか?」

俺と同じように目を見開き彼女は答えた


「落ち着いてください、えーっと、驚かないで聞いて欲しいのですが、どうやら私は幽霊みたいで・・・」 

驚きのあまり圧強めで言ってしまった為か、少し引き気味で言いずらそうに答えた


ほらと彼女が足をあげると足先がついておらず、宙に浮いているように見えた


「とにかく、そう言うことですからよろしくお願いします」

一体そう言うこととはどういうことであろうか


こうして彼女との共同生活は始まった


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