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訳わっかんない組み合わせ

―くん、ふと気を抜けば、接続領域に迷い込む。

この日もふとドライブを思い立ち一人で車を転がしていたら、住宅街にいた。

[……あ~?なんやまた入ったんか。]

迷い込みは自覚があるらしくそれをまたかで片付けてしまうのはあの暇人集団の親族だからだろう。

今回迷い込みに気づいた原因は、運転中に引っかかった踏切である。

―くんのホームグラウンドである、東条日本世界の長野市犀川以南において鉄道は複々線が基本である。つまり4本の線路をまたぐ。

しかし今回の踏切には線路が二本。またやってきた列車は3両編成。

東条日本の長野地域は最低でも8両以上じゃないと裁けないほどの鉄道需要がある。なのに3両。しかも原付バイクレベルののほほんとした速度。

これが、さっきの台詞の原因。その踏切を越えると少し住宅街を抜けた先ちょっと開けた場所に出る。開けたというか片側の家並みが途切れ田んぼが広がっていたというか。

―女史の場合はこれで少しテンションが上がるが、―くんにとっては見慣れた地元の光景。そんな田んぼが広がる光景の反対側には大きな建物。屋上に見えるのは看板か。となると、これはハイパーマーケットか。今度来てみようと、座標だけ記録する。

[はー。おおきか建物やねぇ。]

50mほど進んでもまだ建物は続く。

[はぁ?]

『医療法人松栄会 松本記念総合病院』

そんな看板が掲げられ、幾人もの人々が出入りしている。

[なして、こういう構造なん。]

さらに進めば、

『パインプリンスリゾートホテルズ』

なかなかにハイソな構えの入り口であるが、

[さすがに裏口…ナビ見る限り、これが表か。ちっさいなぁ。]

このホテルの入り口が正面を塞ぐ形となっており、道路は右に曲がっていた。

[おぉー。オシャンティな商店街やん。今度姉さんと一緒に来よー。]

そのまま道を進めばまた住宅街に入り、気づけば見慣れた幹線道路。長野市を南北に貫く国道18号線に出る。ちょっとコンビニの駐車場にお邪魔して今いる場所が東条日本世界かを確認。

大丈夫きちんと東条日本世界でした。


それから数週間の後、とある一報が入る。

「―くんの友人が予てから抱えていた爆弾の起爆が近いため入院した。」というもの。

よく遊ぶ友人衆の一人であるため、グループ総出でお見舞いに行くことになった。

彼が入院している病院は、とある地下鉄の駅に直結しており駅を出ればもう病院の中という大変、外来、見舞客に優しい構造になっていた。

見舞いに訪れたのは面会時間ギリギリの朝8時頃。

地下鉄の駅から続く階段を上ると病院でよくある樹脂製の床がお出迎え。右は第一待合室。左は病理科、霊安室と書かれた案内板が天井に見える。

事前の案内に従い、第一待合室方面に。

この日の外来受付開始は9時からということで待合室は誰一人としていない。受付は会計も含めて暗く、人もいない。5人掛けを2つ並べた人工革張り椅子が通路を作る形で間を開けて横に3つ。縦に6つ並んでいる。両脇には観葉植物がおかれて、見栄えもよい。だが、どことなく、落ち着かないというか、重苦しいうえに、薄暗く感じる。

地下鉄出口から見て奥側は、階段があり、受付カウンター方向へ下っている。階段は待合室を分断する形で置かれ、階段裏の廊下上になっている場所には大きな病院では絶対と言っていいほど見かける待合室の自動血圧測定器がなぜか二台あった。

階段裏を抜けるとこちらの待合室は、先ほどとは違い、空気は軽く感じ、開放感があり明るく感じる。なぜかと考えれば、こちらの待合室は、外光を取り入れる、大きな窓が二階部分から天井までついており、朝の爽やかな光が降り注いでいた。そういえばと思い返せば、先ほどの小さい方は窓なかったな。


待合室ロビーの突き当たりを右へ。受付横の通路を歩き最初の分岐を左に曲がり渡り廊下を抜けると、病棟である。病棟に入ってすぐ右に曲がればエレベーターホールになっている。エレベーターで5階に上がり、エレベーターホールを左に。ホールを出てすぐ右に曲がりさらに渡り廊下を渡る。突き当たり正面のナースステーションを左へ。いくつかの関係者以外立ち入り禁止となる扉を見つつ歩いて、右に曲がると、ようやく病室が並ぶあたりに行き着く。

すでに面会時間は始まっており、入院患者の家族、友人や、比較的病状が軽く自力で出歩ける入院患者や、看護師や医師、リネンカートなどで、

[はぁー。どこのお祭りですか。]

―くんのよく使う人混みに対する評価であるが、ごった返している通路を抜け病室へ向かう5人組。

目的の病室は510号室。どうやら片側20室もある巨大病棟らしい。

くだんの友人が入院した理由は心臓疾患。だったのだが、入院したところ足の骨もなんかやばい状態だったらしく手術されたそうな。病室に入れば、彼は左足を定番のギプスに覆われた上でつり上げられた状態でベッドに横になっていた。

「災難だったなあ。」

―くん以外が件の友人の左足をぺしぺしとたたきながら、声をかける。

和やかな談笑の合間にふと、時計を見れば、もうすぐお昼。

[先に場所を確認してくる。]

―くんが、声をかけ病室の外へ。

ナースステーションの前を右に曲がらずにまっすぐに進む。

この病院には誰でも利用できる大規模な食堂が複数ある。そのどれもが、本格的な和洋中を楽しめ、しかもビュッフェ形式となっていてリーズナブル。

一行はお見舞いの後この食堂のどれかでお昼を食べて帰ろうということになっていた。

その偵察に―くんは向かったわけだ。


右に曲がれば受付待合ロビーへつながる十字路を左へ曲がり、最初の丁字路を右へ曲がり、渡り廊下を抜けて、別の建物へ。渡り廊下にあった案内図を確認して、進むが、人混みがすごく、何個かの丁字路や十字路を直進するので精一杯だった。

[…迷った。]

Y字状の分岐で正面にあったカウンターに掴まって息つく―くん。

[どないしょー。…あ。え。へぇ~。これがあの。]

今更ながらに自分たちがいる病院の名前を確認した―くん。上記の「医療法人松栄会 松本記念総合病院」だと認識して、呆ける。そして、

[そーいや、ここの建設について神子さんが。]

と思い出したように神子さんに電話をかける。

[です。いまですか?えー。あ。『第二心臓外科外来受付』とかいう看板のついたカウンター前です。はい。

えー、カウンターを正面に見て、左手側に。胸部透過検査受付の表示があったら次の十字路を左に曲がって、道なりに。

最初に右手に見える食堂は、様々な種類のパンをテイクアウト可能だけど、食べ放題じゃないと。

それを過ぎて三つ目の十字路を右に曲がって、さらに交差を4つ過ぎると、一番大きくて、料理の種類も豊富な食堂に出ると。つきました。]

―女史含めた仲良しグループは神子さんが案内してくれるとのことで、席取りだけしておくことに。


たらふくお食事をした後は、外見通り病院のロビー(2階部分)からつながっていた、隣のショッピングセンター「パイン」へ。

「あ、イ○ンモールや。これ。」

トップの名前が―くんと同じ読みであり(しかも一字違うだけ)、対案なき政権批判だらけの旧社会党系民政党幹部であること。扱う商品は、スーパー部分は安いんだけど値段相応な品質。という理由で、近くになければ、―女史が出した名前の施設へは好き好んでいかない、―くん以外は結構平気で通っているイ○ンモール。

まあ、値段で見れば品質高いんだけどトップの意向なのか、PB商品の製造者や、原材料名の原産国が記載されていないことなどもあり、同社のトップ含めた幹部を総入れ替えすべく、妖怪金出させろが、水面下で動いていると噂。

まあ、この「パイン」は、PB商品にうっとうしいほどしっかり、原産国、製造業者、製造国名がしっかり記載されていた。

[姉さん、また、そんなに買い込んで、呑み切れ…ますね。姉さんなら。]

―女史が大型ショッピングカートの下段に3段積みで運んできたのは、そば焼酎(段ボール入り6本パック。一本720cc)。上段にはつまみになりそうな野菜をたっぷり。

暇人集団から押しつけ同然でもらった、デバイス内の無尽蔵ともいえる容量を持つストレージに物質をそのまま突っ込めるため、大量に買い込んでも持ち帰りの心配がなく、お財布の心配もいらない(まあ、通常とは逆の意味で心配はしなくてはならないわけな)ため、大型ショッピングカート2台分をたっぷり買い込んだ、―くんと―女史。

「は?これで帰るんじゃないか?」

[予約ば6人でしてしまっとるんよ。きみん所には、神子さんが人送ってくれるって、ゆうっとったし、2人んとこも人貸ししといてくれるんだって。]

「それって、俺たち欠勤扱い?」

[臨時出張扱い。出張手当がある場合それ相当の額が別途神子さんとっから振り込まれるのでよろしゅうね。]

ショッピングセンター巡りも終わって、帰るのかと思えば病院内の地下鉄駅ではなく、病院を挟んで隣にあるホテルへ向かう2人。

残りの4人が問えばこの回答。下着持ってきてないといえば、さっき購入済みとの回答。

ちなみに―女史以外にもう一人いる女性の方は、―女史が責任を持って違和感なくランジェリーショップに連れ込みお気に入りの下着を選ばせて購入済みでした。

ホテルのロビーに入った6人邪魔にならないよう少し横によけた上で呆けていた。

外観からは想像もつかないほどに高い天井。そこに下がるきらびやかなシャンデリア。

床を見れば、ちり一つなく、顔や天井が映り込むほどに磨き上げられている。

とりあえず、フロントに向かおうとすれば、ポーターがすかさず、荷物を持ってくれ、ほぼ手ぶらでフロントへ。

[すいません。本日予約している―と申しますが。]

場違いと自覚しているためおどおどしている6人。彼らを孫を見るような目で優しく見つめ、確認の上で、

「6名様でご予約いただいております。一応ご予約時、4部屋押さえていただきましたがこのままでよろしゅうございますか?」

とフロントの女性。

「4部屋?」

[私と姉さん。そこの新婚。あと2人が一部屋ずつ。野郎同士でツインルームはいやだべ?]

「あ、でも、ほら支払いは。」

「すでに前金でお支払いいただいております。」

これで―くんと―女史以外の4人が折れた。

「「それでおねがいします。」」

「かしこまりました。えーっと、そちらのお二方がシングルルームをご希望だった場合、大変申し訳ございませんが、ツインルーム4部屋という形でのご案内となります。」

これには、―くんが若旦那だの先生だのと呼ぶ友人が崩れ落ちる。

「一体いくらしたんだ?」

[さあ、払ったの神子さんたちだし。後で部屋入ったら調べてみよ。]


係の案内で部屋へ。

[「おぉー。すごいもんやねぇ」]

そこまでハモらんでも。そして。

[姉さん。それやるなら、温線旅館に行ったときにしてください。こういうとこでやると絶望的に合わないです。]

―女史、部屋にオートロックで鍵がかかったのを確認した後、―くんが荷ほどきしている後ろで、マッパになっていた。

「あわへん?」

問われて―くんしっかりとうなずく。

[そういう撮影するんじゃなければ基本しない方がいいです。この陽気なのでおなか壊しますから。それと、目のやり場に困るので。]

「この体にしたのは君やろ。さっき測ったらGって。あ、鼻血だしおった。」

メリハリボデーな―女史。まあ、これに関する話題はノクターン行きなので、これでおしまい。


翌日、ホテルの隣にある商店街に赴いた6名。

ヨーロッパの市場を思わせるたたずまい。

―くんこういうところは何か買うのではなく、ただ歩くだけで満足できてしまうお店側にとっては迷惑なタイプだ。

ほかの五人も特に買いたいものはなく、帰宅の途についた。

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