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1.学年が下がった賢者、護衛となる。

てい(*‘ω‘ *)

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「普通、落第って……学年まで下がるの?」

「いやいや、下がらないでしょ」

「だよね……?」




 クラスメイトの会話が、否が応でも耳に入ってくる。

 それは当然、自分という異分子に対する好奇によるものだった。普通に考えて、学年が下がるなんてことは、まずあり得ない。それもこれも、すべては皇帝陛下の一存によるのだが、教員を含めて誰にも口外してはいけないのが条件だった。

 なので、完全に俺は一年生教室での腫物扱い。

 いまのところ、変なイジメのような絡み方をされていないのが幸いか。




「ねぇ、アメリア様! お昼、ご一緒してよろしいですか?」

「駄目よ、アメリア様はアタシと一緒にお食事するの!!」




 ――いや、その絡みがない原因はアレか。

 このクラスには俺以外に、より話題性のある生徒がいた。

 いままさに、クラスメイトから昼食の誘いを受けている女子がそれだ。真紅の長い髪に、愛らしい金色の瞳。幼い顔立ちをしている彼女の名前は、アメリア。



 他ならぬ皇帝の一人娘――皇女、アメリア・リリン・アルカディアだ。





「皇女殿下、か……」



 俺はクラスメイトの矢継ぎ早な言葉に委縮する彼女を見ながら、そう呟く。

 そして、先日の皇帝陛下との一件を思い出すのだった。









「アメリア様の、護衛……?」

「あぁ、そうだ。貴様には我が娘、アメリアの護衛を頼みたい」




 こちらの問いに、そう話す皇帝陛下。

 彼は少しばかり難しそうな表情を浮かべていた。どうやら引き受けるか否か、俺の出方を待っているようだが、それ以前に疑問の方が大きい。

 だから俺は姿勢を少しだけ正して、彼に訊ねた。




「それは、普通の兵士では駄目なのですか?」




 何故、わざわざ陛下は俺に護衛を依頼するのか。

 皇帝陛下の権限があれば、自身の娘に警備を付けることなど容易いはずだった。それにもかかわらず、どうしてこうもまどろっこしい方法を取るのか。

 それを訊ねると、陛下はこう答えた。



「アメリアが、それを嫌がってな……」

「……アメリア様が?」

「うむ……」



 そして、一つ憂いのこもったため息をつく。

 その上で陛下は、このように語った。




「あの子は自分を特別扱いしてほしくない、と願っていてな。幼き時から普通の暮らしがしたい、と儂に懇願してきたものだ」――と。




 それはつまり、普通の学生生活がしたい、ということか。

 皇族としての自覚は置いておいて、ある意味でのワガママのようにも思えた。それに付き合わされるのだから、こちらにとっては迷惑でしかない。

 その結果、俺は改めて学院生活をやり直すのだから。



「それで、俺はその割を食う、ってことですか」

「いや。それだけでは、ないのだ」

「それだけじゃない……?」



 なので思わず、そんな恨み言が口をついて出た。

 すると皇帝は申し訳なさそうに、小さくそう口にする。気になって訊き返すと、




「すまぬ。……これは、語ることができない話なのだ」




 彼は軽く目を伏せながら、そう謝罪を口にした。

 皇国の長が、このような態度を取るのだ。きっとなにか、秘密がある。そう思ったが、これ以上を訊くのははばかられた。

 そう思い黙っていると、陛下は改めてこう訊いてくる。



「それで、依頼を受けてくれるか?」




 それはまるで、こちらを試すかのように。

 俺はしばし考えてから、こう答えるのだった。




「分かりました。ただし、いくつかお願いがあります」――と。









 ――依頼遂行後は卒業を約束の上、相応のポストを用意すること。



 俺は不遜ながら、そう皇帝に要求した。

 しかし、これはそれに値するだけの役割であろう、と踏んだのだ。皇女殿下の護衛を人知れず、己の素性を隠して遂行するのだから。

 同時に、彼女が卒業するまでの数年、時間的な拘束もあった。

 それだけの要求は、あって然るべきだろう。




「あの……」

「まったく、それにしても――」

「――あの!!」

「うわ!?」




 そう考えつつ、俺がぼやこうと思った時だった。

 誰かが、俺の耳元で大声を上げたのは。




「だ、誰だよ!!」

「あの! 少しお時間よろしいですか!?」





 そして、驚き身を引きながら相手を確認した。

 するとそこにあったのは――。





「……え?」






 ――緊張した面持ちの皇女、アメリアの姿だった。




 


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