第40話 クリスタルのような棺
ニヴルヘイムの森に大魔法の爆音が轟く。次々と現れる大量のモンスターに、ミウとララが大魔法を乱発しているのだ。
「神聖雷光!」
「爆裂!」
「主天使の鉄槌!」
「超新星熱球!」
ズバババババババババァァァァッ!!
チュドドドドォォォォーーーーン!!
ズガガガガガガガガァァァァーン!!
ズドドドドドドドドドドドドーン!!
凄まじい爆音が鳴り響き木々や丘が破壊されはじけ飛ぶ。地形が変わるほどの大破壊力だ。
アースガルズと違い、ニヴルヘイムのモンスターは明らかに強くレベルも高い。それだけに討伐した経験値がバンバン入り、俺達のレベルもグングン上がる。
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レベル60になりました。
スキルポイントが一定になり、魔術レベルが5になりました。
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レベルとスキルレベルが上がり、新たなスキルも手に入れた。ここにきてアビリティも飛躍的にアップしている。
「ステイタス!」
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名 前:ジェイド
職 業:暗黒皇帝リゲル
レベル:60
魔術レベル:5
剣技レベル:3
ステータス
体 力:2850
魔 力:8500
筋 力:1060
攻撃力:1250
魔攻力:5300
防御力:1020
素早さ: 980
知 性:1780
魅 力: 620
スキル
【暗黒神レベル5】
【火球】【爆炎地獄】【爆炎波動】【地獄の業火】【雷撃】【雷槍】【龍雷撃】【爆雷陣】【氷槍】【氷雪嵐】【砂嵐】【風刃】【旋風陣】【竜巻】【腐敗】【腐敗の海】【爆裂】【大爆裂】【暗黒焦熱波】
【抵抗】【反射】【隠密】【魔法防御】【思考加速】【二重魔法】【睡眠】【魔法剣】【魔法効果付与】【三重魔法】
【鑑定】【探索】【飛行】【転移】【奴隷契約】【罠解除】
専用武器:五大原初魔宝玉
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「よし、試してみるか」
俺は前々から考えていたスキルを使ってみることにした。スキル【二重魔法】で魔法の重ね掛けが可能で、飛躍的に攻撃力を上げることができるのだ。更にレベルアップで習得した【三重魔法】、これは試さずにはいられない。
「三重魔法!」
スキルを使用してから巨大魔法の詠唱に入る。
「暗黒神の力よ、地獄の底の業火を顕現し、その炎で全てを焼き尽くせ! 地獄の業火!」
ズガガガガガガァァァァァァーーーーン!
三重に重ね掛けされた巨大魔法が発動し、正面の森が超高熱の炎の海にのまれる。青く不気味な炎は瞬時に数万度まで上がり、大地を融解させドロドロのマグマに変貌させてしまう。
「す、凄い……チート級の魔法だな」
やはり思った通りだな。暗黒皇帝リゲルは使いようによっては最強クラスのキャラだ。
他の七星神が各クラス能力に特化していて俺より強く見えるが、暗黒皇帝はスキルの多彩さと組み合わせで他のキャラを凌駕する能力を発揮できる。しかも不死身の肉体だし。
俺の魔法を見たミウが、目を輝かせて近付く。
「ジェイドさん、凄いです。いつの間にそんな魔法を?」
それを見たララも負けじと続いた。
「ジェイドよ! さすが我が盟友だな。共に極大魔法を極めようぞ!」
「あ、ああ、近い。ちょっと離れてくれ」
二人は俺の言葉など聞かず、グイグイ迫ってくる。
「うふふっ、ダメですよ。私が目を離すと、すぐエルフリーデ様とイチャイチャしちゃいますよね?」
「そうだそうだ。ジェイドよ、我は永遠に離れないと言ったはずだぞ。王女と結婚など絶対に許さんからな!」
エルフリーデの結婚宣言から、二人の俺に対する依存が激しくなっている気がする。モテ期が来て嬉しいはずなのに、若干……いや、かなりヤンデレている気がして怖いのだ。
そして、その噂になっているエルフリーデだが、俺達の後ろでミーニャと一緒に疲れて固まっていた。
「あ、ああ……もう、足が棒のようですわ」
「ふにゃーっ! く、苦しいです」
険しい森を歩き続け、王宮育ちのエルフリーデは疲れ果ててしまったようだ。ミーニャに寄りかかるようにしてぐったりしている。剣の心得があるとの話は何だったのか。
「さ、さすがジェイド様ですわね。わ、わたくしも共に」
「いえ、エルフリーデは休んでいてください」
フラフラの足腰で戦われても困るので、エルフリーデは近衛騎士達に守らせておく。
「おい、こちらは全て片付けたぞ」
後方を守っていたライデンが戻ってきた。
「ああ、こっちも終わったところだ」
俺が前方の焼け野原を指差すと、ライデンが呆れたような顔になって言う。
「やり過ぎだ。地形が変わっている。貴様は地形操作スキルでもあるのか」
普段はミウとララが暴走して破壊しているが、今日は俺も破壊してしまったので何も言い返せない。
「まあ、この辺りのモンスターは倒してしまったから先に進もうか」
俺は探索魔法を使いながら、不気味な森の奥へと歩き始めた。
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しばらく進んだところで探索マップ上には大きな湖が見えてくる。周囲はますます不気味さを増し、煮えたようにブクブクと泡を立てる湿地が点在していた。
「ん? 何かいるようだぞ」
探索マップに人のようなマークが映っている。少し進むとマップ上に多数の人の陰と、その中心にジャスティスの名前が表示された。
「いた、ジャスティスだ!」
「なにっ、本当か!」
ライデンが俺の横に並ぶ。
「ああ、すぐ近くだ。行ってみよう」
俺とライデンが先行し、その後ろにミウとララがエルフリーデ達と一緒に付いてくる。なぜかミーニャはエルフリーデに抱きつかれたままで、だいぶ疲れてしまっているようだ。ネコミミが可愛いくて、ぬいぐるみと勘違いしているのかもしれない。
湿地の先に進むと大きな湖が見え、その湖畔に数名の人間の姿が見えてきた。
おれは、もしかしてアースガルズの先遣隊か?
「おーい! おおーい!」
俺が叫ぶと、数人の兵士が振り向く。精魂尽き果てたように座り込んでいた兵士達が、俺達の姿を見て歓喜の表情になって立ち上がった。
「た、助かったのか!」
「救助が来たぞ!」
「やったぁぁーっ!」
喜び合う兵士達の傍らに、クリスタルの棺のような直方体の中にいるジャスティスの姿が見えた。まるで氷漬けだ。
「えっと……これ、どんな状況?」
兵士たちの話によると、ジャスティスの活躍で森の奥まで進軍したものの、ボスキャラらしき魔族が現れ呆気なく負けてしまう。氷漬けになったジャスティスを運びながら撤退を開始するも、方向感覚が分からなくなり森の中をさまよい続け動けなくなったというわけだ。
大勢いた兵士も戦闘で破れたり途中で倒れたりと減ってゆき、今ここに残っている人数になってしまったとのこと。
ミウが兵士にヒールをかけて動けるようにしてあげているが、問題なのはジャスティスだろう。
「これ、呪いなのか? それとも本当に凍ってるのか?」
クリスタルの中に閉じ込められたようなジャスティスは、やっぱりイキった顔をしていた。一度しか会っていないのに、やたらインパクトが強くてムカつく顔をしている。
「ミウ、これ解除できるか?」
「はい、やってみます」
しかし、強力なミウの魔法でも解除できない。【解呪】も【治癒】も【高位神聖復活】でも、全く変化が無いように見えた。
こんなヤツでも七星神の一人なので、何とかしないとらないのだが。




