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第32話 エンチャント

 王宮内に激震が走る。再び伝説の英雄が現れたのだ。近衛兵達があたふたと走り回り、責任者を呼びに行っているようだ。


 たぶん、以前にジャスティスが来た時に事件が起きていたのだろう。



「何だか大事おおごとになってきたな」

「ジャスティスめ、何をやりおったのだ」


 俺とライデンが並んで話す。ヤツの性格を知っているだけに、何をやらかしたのかはだいたい見当がついた。


「ジェイドさん、そのジャスティスさんって、どんな方なんですか?」


 ミウが気になったようだ。俺やライデンからよく名前が出るから興味あるのだろう。


「う~ん、例えるのなら……公園で『芝生に入らないでください』と書いてあったら、芝生に近付いた歩道を歩いている人を、片っ端から殴るような人かな?」


「ど、どんな例えですかっ!」


「あっ、あと人にマウントとったり誹謗中傷しそう」


「それは……苦手かも……」


 俺の言葉でミウが頷く。そして、ララが何となく想像できたのか嫌な顔をする。たぶん、前のゲームで暴言はかれたとか言っていたので、そのイメージなのだろう。



 しばらく待っていると、門の奥から立派なプレートメイルを身に着けた騎士が現れる。見た目からして階級が高そうだ。


 ガシャ、ガシャ、シャキィィーン!


「私の名はアースガルズ王国近衛騎士団長、フランツ・フォン・ブロンベルクである。貴公のお相手は私が致す」


 フランツと名乗る男が俺達の前に立ち塞がる。

 背が高くガッシリとした偉丈夫で、偉そうなイメージの貴族にしては実直で真面目そうな顔をしていた。


「えっと、俺達は戦いにきたのではなく、国王に話があるんだけど」


 俺の言葉にフランツと名乗る騎士が剣を抜き正面で構える。


「正体不明の者を王に会わせるわけにはゆかぬ!」


「それでジャスティスは倒して入ったのか?」


 ザワザワザワザワ――

 ジャスティスの名を出したら、近衛兵達がざわつき始めた。


「貴公はジャスティス殿の仲間なのか?」


「仲間じゃないけど、同郷の出身というか……」


「そうか、伝説の英雄というのも嘘ではなさそうだな。しかし、伝説に記された英雄というのは礼をしらぬのか? ジャスティス殿は、今では先遣隊を率いる隊長となったが、ここへ来た時は近衛に襲い掛かり無理やり王の間へ進入する無礼を働いたのだが」


 くっそ、ジャスティスのせいで伝説の英雄のイメージが最悪に……。


「い、いや、あいつが礼儀を知らんだけで、俺達は違うから。一緒にしないでくれると助かる」


 フランツは俺達を値踏みするかのような視線を向けた後、警戒を解いたような表情になった。


「失礼した。貴公らはジャスティス殿とは違うようだ」


「それじゃあ」


「しかし、私としても剣を抜いた以上、このまま戻すのもいかがなものかと思う。一つ手合わせ願えるだろうか。それに、貴公らの実力が本物か見極めたい」


「はあ……」


 俺の剣がまだないんだけど。まあ、ショボいドロップ品で良いか。俺も七星神なんだから負けないだろ。


「わかりました」


 アイテムボックスから前にモンスターからドロップしたオーガの剣を取り出す。見るからにショボい剣だ。


「我はフランツ・フォン・ブロンベルク!」

「ジェイドです」

「いざ尋常に、勝負!」


 ズサッ!

「ゆくぞっ!」


 フランツが踏み込んでくるが、俺は【思考加速】スキルを使う。フランツの動きがスローモーションのように見える。


 これはフランツが遅くなっているのではなく、俺の脳が高速回転クロックアップしているのだ。思考加速した世界で様々な戦法を考え、相手の動きを先読みし適切な攻撃に移る。常に有利な戦闘が可能なのだ。


 よし、思考加速が使えてる。ライデンの時は一瞬で斬られたから心配してたけど、これなら俺は負けない。


 オーガの剣を構えると、スキル獲得の文字が視界の下に表示される。剣を装備したことで魔法剣士として新たなスキル獲得条件を達成したのだろう。


 ――――――――――――

 スキル獲得条件確認。

 暗黒皇帝の基本性能に魔法剣士が加わりました。基本ステータスアップ。新たなスキルを入手。


 スキル

 【魔法剣マジックソード】【魔法効果付与エンチャント】入手!

 ――――――――――――


 おおっ! エンチャントとかゲームっぽい。


「よし、魔法効果付与エンチャント雷撃ライトニング!」


 俺のスキルで魔法をエンチャントさせ、ショボい拾った剣がライトニングソードへと変貌へんぼうした。


 ここまでが思考加速した脳内での出来事だ。実際にはフランツが上段から剣を振るって踏み込んでくる僅か数秒の間である。


「デアァァァァーッ!」

「とうっ!」


 ズババババッ!

 カキィーン!


 一瞬で決着が付いた。俺が驚異的に強化されたライトニングソードでフランツの剣を弾き飛ばしたのだ。


 もちろん、手加減していた。本気で攻撃したら、俺の剣を受けた瞬間に電撃ライトニングの魔法をくらい、フランツは間違いなく絶命していただろう。



「ぐっ、私の完敗だ。これほどの実力。貴公が伝説の英雄なのは間違いないようだ。王への謁見は私が取り次ごう」


 一礼すると、フランツは王宮へと戻って行った。これで王に会えるだろう。



「やった……これが魔法剣マジックソードか」


 俺が剣を眺めていると、ミウとララとミーニャが羨望の眼差しで俺を見ている気がする。きっとライトニングソードがカッコイイからだろう。



 ミウがグイグイ巨乳を突き出しながら俺に迫る。


「ジェイドさん! そんな技を使えたんですか。す、凄いです」


「ミウ、言ったろ。俺が守るって」


「はわわわぁ~っ♡」


 ミウが恋する瞳になっている気がするが誤解してはいけない。これは罠だ。女の子の目はキラキラしているものだ。まあ、ネット情報だが。



 ララも凄い勢いで俺に迫る。いつもながら顔が近い。


「ジェイドよ! いつの間にそんなスキルを。今のエンチャントだな? そうだな! く、くぅ~っ、さすが我が盟友!」


「ララ、どうやら俺のスキルは多彩なうえに掛け合わせることが可能らしい。これは研究する価値ありだ。魔導の探究というやつだな」


「お、おう、これは調べる価値ありだな。こ、今度一緒に魔導の探究をせぬか? ふ、二人っきりで……よ、夜とか……ごにょごにょ」


 ララが夜のお誘いをかけている気がする。だがちょっと待ってほしい。その気になって一発発射したらタイーホかもしれない。俺は誤解しないぜ。


 いつもは控え目なミーニャまで俺に迫っている。


「ふにゃっ! ご、御主人! 御主人は、ただのヘンタイさんじゃなかったです? 御主人が凄く強く見えるです」


「ミーニャ、俺は伝説の英雄なんだ。本気になれば負けはしないさ。今までは本気出してなかっただけだぞ」


「にゃにゃ、何だか御主人がカッコよく見えてきたです。目の錯覚です?」


 ミーニャの好感度が上がった気がする。だが、俺がロリに手を出したら事案発生だ。いや、大人のレディーと言っているのだから合法ロリなのだろうか?



 三人が俺を褒めまくって、ちょっとだけ気持ちが良くなってしまう。ライデンが何か言いたそうな顔をしているが、どうせろくでもないことだろうからスルーした。


 しかし、俺の暗黒皇帝は凄い潜在力ポテンシャルを秘めている気がする。今までジャスティスの超攻撃力や、ミウの常識外れの神聖魔法、ララの超強力な魔法、ライデンの超スピードなど、正直なところ羨ましいと思っていた。


 しかし、俺の暗黒神はスキルの組み合わせで、どこまでも強くなりそうだ。まだまだ知らないスキルがあるのかもしれないな。それに、自己再生スキルもあって不死身だし。



 そんなことを考えていると、フランツが戻ってきた。その表情からして良い報告だろう。


「王がお会いになるそうだ。付いて来てもらおうか」


 俺達はフランツの後に続く。やっとここまで来た。よく分からないまま異世界に入り込み、ミウ達と出会い何とかやってきた。しかし、俺達がここに存在する理由があるとするならば、それは何なのか見定めねば。


 それが、俺達が最強の力を使うべき理由を知る時なのかもしれない。



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