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第28話 自信と自覚

 空気を切り裂くように滑空する飛竜ワイバーンが俺達に向かってくる。鋭い爪を光らせ、俺達(獲物)を狙うかのように。


「おい、そっちに行ったぞ!」

 向こう側からライデンが叫んでいる。


 勢い勇んで突撃したライデンを恐れたのか、飛竜ワイバーンが俺達の方に方向転換したのだ。当然、ミウ達が泣き叫ぶ。


「うわぁぁぁぁーん! ジェイドさん助けてください~っ!」

「じぇじぇじぇ、ジェイドよっ! 何とかせよ」

「ふにゃああああ~っ!」


 どうも俺です。

 やっぱりこうなりました。ミウが泣きながら抱きつき巨乳を俺に押し付けまくる。

 ララはパニくってバタバタする。『じぇじぇじぇ』とか俺の名前を呼ぼうとしているのだろうが、どこかの方言みたいでちょっと可愛い。

 ミーニャはロリなので、まあ許しておこう。


俺に抱きつく彼女達の感触を楽しみたいところだが、そんな余裕などあるはずもない。飛竜ワイバーンが突っ込んでくるのだから。


 俺は両側から腕に当たる柔らかな膨らみに集中を乱さないよう気をつけながら魔法を唱えた。


「くらえっ! 氷槍アイススピアー!」


 ズシャ、ズシャ、ズシャ!

「ギェエエエエエエッ!」


 美しい軌道を描いて空を舞う氷の槍が、飛竜ワイバーンの翼を貫いた。しかし、バランスを崩して地表近くまで落ちながらも、途中で翼を羽ばたかせて再び飛ぼうとしている。


「でかした、ジェイド!」


 ライデンが岩場を蹴りジャンプする。


「はああああああぁぁぁぁっ! 紫電一閃しでんいっせん!」


 キィィィィーン!


 飛竜ワイバーンの赤い体に、目にも留まらぬスピードで閃光が通り抜ける。


「斬っ!」


 ライデンが刀を鳴らし掛け声を上げると、飛竜ワイバーンの体が真っ二つになって地面に落ちた。いつ見ても惚れ惚れするような技のキレだ。



 ――――――――――――

 レベル28になりました。


 スキル

 【爆裂エクスプロージョン】【氷雪嵐アイスストーム】入手!


 アイテム

 【飛竜の爪】【竜玉赤】入手!

 ――――――――――――


 おっ、レベルが上がったようだ。何かの素材も手に入ったし。このままクエストをこなしてレベルが上がれば良いけど。まあ、このまま行くのかは不安なんだけどな。


 ザッ!

 華麗な身のこなしで刀を鞘に納めたライデンが、俺達のところに戻ってきた。何をしても絵になる女だ。催淫されている時以外は。


「よし、次に行くぞ」


 ライデンが次のクエストに向かおうとするが、ミウ達の腰が抜けて動けない。飛竜ワイバーンが俺達のところに突進した時の恐怖でヘナヘナになってしまったようだ。


「まて、まだメンバーが動けない」


 俺の言葉にライデンがミウとララを見つめる。


「お前たち……何をしているんだ?」

 ちょっとだけ素朴な疑問を口にするライデン。


「ちょ、ちょっとビックリしちゃっただけです」

「そ、そうだ、今日はたまたま調子が悪いというか」


 ミウとララが答えるが目が泳いでいる。パーティーに貢献したいと思っているのに、結局何もできなかったのを気にしているのだろう。目の前でライデンの活躍を見せつけられれば、自分と比べてしまって自信を失ってしまいそうだ。


 そういえば、ララは飛竜ワイバーン退治のクエストを推してたはずだよな。やっぱり俺達だけでは無理だったか。ライデンが加入していなかったらヤバかったぞ。



 ライデンが話を続ける。


「お前たちも凄い魔法を使えるのだから、支援するなりして欲しいところなのだが」


 ライデンが言っていることは理解できる。しかし……。


「ライデン、こんなでも大事なメンバーなんだ。誰もがライデンのように強いわけじゃないんだよ。それはスキル的というわけじゃないぞ。気持ちとかメンタルとか。能力はあるのに発揮できない人だって多いんだ。長い目で見てくれると助かる」


俺の言葉にランデンが暫し考え込む。


「そうか……そうだな。それはすまなかった。確かに私は自分を基準に考えていて配慮が足りなかったかもしれない」


 ライデンが頭を下げた。

 

ライデンは脳筋だけど、意外と話は聞いてくれるじゃないか。まあ、最初の時の問答無用で突っ走る印象が強過ぎたけど。パーティーメンバーになって、少しは打ち解けたのだろうか。


「だが、クエストは急ぐぞ。時間は待ってはくれない」


 ぐいっ!

「お、おいっ!」

「ふにゃ!」

 ライデンがララとミーニャを抱え上げた。

 ミーニャは静かに抱えられているが、ララが足をバタバタしている。


「ジェイドはミウを頼む」


 そのまま歩いて行くライデン。俺にミウを抱っこしろと言っているようだ。


「しょうがないか。ミウ、俺に抱かれてくれ」


 自分で言ってから、誤解されそうな発言だったと気付く。


「え、ええっ、ジェイドさんっ! エッチですぅ!」


「そういう意味じゃないから」


 ミウを抱き上げると、言葉に反して俺にギュッと抱きついてきた。ムチムチの柔らかい体がエッチ過ぎて変な気分になりそうだ。


「ううっ、ジェイドさんのエッチぃ……」

「我慢しろ」


 ライデンの後について行くが、抱えられているララが何やら文句を言っているようだ。


「こらっ、降ろせ! 我はあっちが良い。ジェイドと交代しろっ!」


 ララよ、元気じゃないか……。


 ◆ ◇ ◆




 二番目のクエスト、農場を荒らす飛竜ワイバーンの退治だ。俺は前回の失敗を踏まえ、作戦を立てることにした。


 ライデンは己の強さへの自信からか、周りを考えず突撃する性格のようだ。ここは俺が上手く誘導するように仕向けた方が良いだろう。


 ミウとララは不器用だったり自信の無さから上手く立ち回れない。ここも俺が彼女達に自信を付けさせるよう動くべきだろう。


 自信の無い人は成功体験が不足していると聞く。過去に何度か失敗したり、周囲からのネガティブな声で落ち込んだり。それがトラウマとなり積極的に動けないのだ。

 一度、成功体験をすれば、それが自信となり好循環を生むかもしれない。まあ、これもネット情報だが。


 俺は、今までこの異世界で漠然と過ごしていただけだった。だが、パーティーメンバーが増えたことで、皆を上手くバックアップして一緒にレベルアップしようと考えるようになったのだ。


 まあ、ポンコツなのも可愛いけど、それだけじゃこの世界は危険だからな。



「今度は俺が作戦を考えた。ライデンも従ってもらうぞ」


「むっ、私のやり方では不満か?」


 俺の言葉に、案の定ライデンが口を挟んできた。


「ライデンはそのままで良い。それが一番攻撃力を発揮しているからな。ただ、全員で正面からぶつかるだけでは個々の能力を発揮できないだろ。より安全に、効率的な作戦を考えた。リーダーは俺だからライデンにも従ってもらうぞ」


「ふむ、一理あるな。リーダーに任せよう」


 ライデンが納得したようだ。ライデンの性格を考えて反論し難いように誘導したのだ。

 レベル上げ担当大臣だか何だか知らないが、パーティーリーダーは俺だからな。


「俺の考えた作戦はこうだ――」


 ミウとララをかなり後方の木の陰に配置。隠れたまま魔法による遠距離攻撃を準備。

 ミーニャは戦闘向きではないから、一緒に後方で二人に守らせる。


 俺とライデンが先行して飛竜ワイバーンが住み着いている森に侵入。目標を見つけたら攻撃開始。その場で倒せたらそれでも良いが、追い立てて上空へと羽ばたかせたらなお良い。


 森の上空を旋回させた飛竜ワイバーンを、離れた場所からミウとララによる長距離魔法攻撃により撃墜するという作戦だ。


 俺が話し終わると、ライデンも納得しミウたちも頷いている。



 皆には話していないが、これでミウとララが自分達で飛竜ワイバーンを倒して、少しでも自信を持ってくれたらと考えていた。


 そして、俺達は作戦を開始する。



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