表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/62

第21話 全てを超越せし者

 襲い掛かる盗賊達。俺の両手はミウとララに抱きつかれ、足にはミーニャが絡みつき動けない。

 絶体絶命かと思えたその時、どこからか凛と通る高らかな声が響いた。


「社会に巣食うゴミ共め! 私の刀で成敗いたす! 悪逆非道なクズに鉄槌てっついを! くらえっ、紫電一閃しでんいっせん!」


 キィィィィーン!

「斬っ!」


 ズバズバズバッ!

 目の前に閃光せんこうが走ったかと思った瞬間、数人の盗賊達がバラバラの肉塊にされていた。


「おえっ、グロいもんを見ちまった」


 助けが入ったことよりも、モブの盗賊達がバラバラになったショックの方が大きい。俺は吐きそうになる。


 助けに入ったその人は、燃えるような赤い髪をした女性だった。


 長身で脚が長いスラリとしたスタイル。鍛えているのか、タイトな衣装から見える二の腕や太ももは逞しく筋肉が付いたムッチリ感だ。くびれたウエストは一見すると女性らしい腹だが、その奥には圧縮したゴムのような腹筋の膨らみを感じる。


 キリッとした眉に青く鋭い目、全体的に美人でありながら厳しい表情は少し中性的にも見えた。それでいて長い髪をポニーテールにしていて、見方によっては可愛くみえなくもない。


 驚くべきは、その女性は人の背丈ほどもありそうな日本刀を持っていることだ。野太刀や大太刀と呼ばれるその刀は、およそ人が戦闘に使うには不向きな重量がありそうに見える。

 しかし、目の前の女性は軽々と刀を振り回している。計り知れない腕力を持っているかのように。



「ひいっ、な、なんだコイツは!」


 盗賊団のボスが口を開いた時には、既に他のメンバーが斬り殺されて残りの一人になっていた。恐るべきスピードと情け容赦のない攻撃で、瞬時に多くの者を斬り捨てていたのだ。


「ままま、待て! 助けてくれ。金をやる。いくらでも欲しいだけやるぞ」


「ふっ、私が金で動くとでも思ったか悪党め! 社会をむしばむ悪は、ただ滅殺するのみ!」


 見苦しいほどに媚びへつらった盗賊団のボスが、両手を擦り合わせながら命乞いをする。しかし、赤髪の女性は聞く耳を持たず刀を構える。


「悪は滅べ、疾風迅雷しっぷうじんらい!」

 ズシャァァァァァァァァーッ!!


 まさに雷のような目にも留まらぬスピードで超加速した女性が、誰が見てもオーバーキルであろう技でボスを粉々にした。

 一瞬のうちに何回斬ったのか分からないほと、閃光が無数に軌跡きせきを描く。後に残ったのはさいの目のように小さな立方体になったボスらしき物体だけだ。


 盗賊団が壊滅して、その場には俺達と赤髪の女性だけが残された。



「あの、ありがとうございます。助かりました」


 ミウ達が恐怖で固まっているので、俺がお礼を述べておく。何者かは分からないが、滅茶苦茶強いので敵に回したくはない。この常軌を逸したような強さは七星神のような気もするが。


「うむ、礼を言われるまでもない。困っている者がいれば助ける。悪がいれば斬り捨てる。それが私の信念だ」


 長い大太刀をさやに収めた女性が、堂々とした態度で述べる。その姿は女武者や女騎士のように凛々しく見えた。


「申し遅れたな。私はライデン。この剣の腕を使い、ギルドで盗賊退治の依頼を受けて討伐に来たのだ」


「俺はジェイドだ。こっちのヒーラーがミウ、そっちの魔法使いがララ、そしてこの獣人がミーニャだ」


 まだ俺の体にしがみ付いている仲間を紹介する。あんな衝撃的なシーンを見せられたのだから、固まってしまうのはしょうがないだろう。


「御者が被害に遭ってしまったのか。残念だったな……んっ! まだ息があるようだぞ」


 ライデンが馬の近くで倒れている御者に近付くと、まだ息があるのを確認する。奇跡的に斬られた場所が急所を外れて助かったのだろう。


「ミウ、ヒールを」

「は、はい」


 慌てた様子のミウが御者に近寄りヒールをかける。


 ふうっ、これで馬車は動かせる。しかし、このライデンって女、絶対に七星神だろ。何とか仲間にできないものか。

 そうだ、ライデンがミウの方を見ている隙に……。


 俺は【鑑定】スキルを使い彼女のステータスを読み取る。

 

 ――――――――――――

 名 前:ライデン

 職 業(ジョブ):超越者ベガ

 レベル:31

 剣術レベル:2

 武術レベル:2


 ステータス

 体 力(HP):1820

 魔 力(MP): 20

 筋 力:1050

 攻撃力:1800

 魔攻力: 0

 防御力: 580

 素早さ:1360

 知 性: 110

 魅 力: 290


 スキル

 【超越者】

 【雷光】【流星】【飛燕】【紫電一閃】【疾風迅雷】

 【肉体強化】【物理防御強化】【解毒】【縮地】

 【鑑定】【探索】


 専用武器:聖魔調伏刀雷切せいまちょうぶくとう らいきり

 ――――――――――――


 やっぱり……七星神か……。

 てか、こいつがあの超越者か。

 どうする。何だか脳筋っぽいキャラで、戦ったら俺と相性が悪い気がするぞ。スピードが桁違いだ。



「ジェイドさん。御者のおじさんは一命をとりとめました。今は眠ってますが、じきに目覚めるはずです」


 ミウが【高位神聖治癒セイクリッド・ハイヒール】を使って重症だった御者を治療したようだ。


「あ、ああ、良かった。ありがとうミウ」


「そうか。無事なら良かった。それでは、私はこれで失礼する」


 帰ろうとするライデンに、俺がとっさに声をかけた。


「あの、ライデンさん」

「ん? なんだ」


 ヤバい、何も考えていなかった。何を話せば……いきなり七星神か聞くのはマズいか。


「そ、その日本刀カッコいいですね」

「おう、キミも日本刀を知っているのか?」

「はい……」

「うむ、これは聖魔調伏刀雷切といってだな……」


 途中でライデンが違和感に気付いたようだ。


「おい、貴様! 何で日本刀を知っている!? この世界の住人ならば知らぬはずだ」


「いや、俺も七星神で……って、聞いてます?」


 ライデンが鑑定スキルを使ったようだ。


「何だと! 貴様は暗黒神の眷属か! 魔族は滅殺せねばならん!」


「おい、話を聞けって」

 おいおい、この展開は前にもあったぞ。


「魔族を率いているのが魔王。そして、その代理であるのが暗黒神の眷属であり統括者である暗黒皇帝。やはりジャスティスの言った通りだったか!」


「ジャスティスの仲間だったかぁぁぁぁーっ! 最悪だ」


 ライデンが刀を抜く。

 恐ろしく長い刀身に刃文はもんが妖しく浮かんでいる。その切先きっさきを突き付けられただけで、誰でも恐怖で腰を抜かしそうな迫力があるだろう。


「おまえら、離れていろっ!」

「きゃっ」

「うわぁ」

「にゃっ」


 俺はミウ達を突き飛ばして距離を取らせる。このままでは皆が危険だ。


「行くぞ、暗黒皇帝!」


 マズい、早く魔法を。いや、あのスピードで当てられるのか。

 俺は思考加速で考える。加速といっても思考のみで体が速くなるわけではない。


「紫電一閃!」

 キィィィィーン!

「斬っ!」


「は?」


 気付いた時には斬られていた。速いとか遅いとかの問題じゃない。完全に超越している。固有スキルを使ったのだろう。


 俺の体に横一文字に閃光が通った。

 そのまま視界が横にズレる。


「ジェイドさんっ!」

「ジェイド!」

「御主人!」


 皆の叫び声が聞こえる中、俺は真っ二つにされてしまった。



 ライデンは個人的に好きなキャラです。

 やっぱり日本刀を持ったヒロインって良いですよね。

 新キャラも加わり盛り上げていきますね。

 もしよければ、評価やブクマなど頂けるとモチベ上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ