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第19話 わたしは追放系ヒロイン (ララ視点)

 それは、ある日突然起きた。


 ロベリア『ララ、お前はクビだ!』

 もけもけ『メンバーの総意で、お前の追放が決定した!』

 リーリス『お前のような足手まといは俺達のパーティーに要らないんだよ!』


 容赦なく浴びせられる追放の言葉。MMORPGでイベントのパーティー戦をプレイした後の出来事だ。

 ゲーム内のボイスチャットで、わたしの失敗や欠点をボロカスにあげつらい責められている。


 ベルゼビュートララアドラメラク『あ、ああの、わ、わたしも一生懸命やっているのに……」


 ロベリア『お前のは暴走したりPKしてるだけだろ!』

 もけもけ『今回のイベントも、ララのせいで台無しじゃねーか!』

 リーリス『そうだそうだ、この疫病神!」


 ベルゼビュートララアドラメラク『で、でも、ここを追い出されると、もう入れてくれるパーティーが……」


 ロベリア『そんなの知るかよ! 自分で探せ』

 もけもけ『それに、新たな魔法職の女子も勧誘してるしな。しかも声が可愛い』

 リーリア『そもそもララはキモいんだよ。ボソボソ何言ってるか分かんねえし。リアルもブスだって想像できるわ」

 ロベリア『それな!』

 もけもけ『くっそわろた』

 リーリア『はっはっはっ!』


 ベルゼビュートララアドラメラク『ううっ……ヒドい……』


 ――――――――




 ゲームをログアウトしてベッドに突っ伏した。

 バサッ!


「うううっ、また追い出されてしまった。我の何が悪いというのだ。そ、そりゃ、レイド戦で失敗したり……たまに味方殺し(PK)しちゃうけど」


 我はベルゼビュートララアドラメラク、この世界での仮の名は一条沙織いちじょうさおり、大学一年生だ。


 女子大生といっても、あまり講義には出ておらず若干ひきこもり気味の自称ゲーマーだがな。


 どうも我はパーティー内で上手く立ち回れず失敗ばかりしてしまう。しかも、人付き合いが苦手なので、チャット内でも浮いてしまうようなのだ。


 これがラノベの追放ものならば、実は主人公が強力なバフやデバフをかけていたり、隠れた才能があったりするのだが、我にはそういうものはないらしい。


「ふうっ……何か新しいゲームでも始めようかな?」


 パソコンを開いて検索していると、新アニメ『ドS魔王、現代に召喚され君臨する』の情報を見つける。ドS男子の魔王が、現代日本で女子を堕としまくる人気ラノベだ。


「うひぉぉぉぉーっ! 魔王マーラ様がアニメ化だとっ! 『おまえも俺の奴隷にしてやろうか?』くっ、くぅぅぅぅーっ、と、尊いっ…………って、いやいや、取り乱してしまった。今は新しいゲームを探そう」


 ドS魔王様にムズムズしながらもネットを見ていると、新しいフルダイブ型RPGの情報を見つけた。


「星々の黄昏たそがれリンデンヘイムのサービス開始が近いな。これ前から気になってたんだよ。そろそろ我もフルダイブ型VRゴーグルを買う時かもな」


 出掛けようと立ち上がったところで、鏡に映った自分と目が合う。


 ――――そもそも、ララはキモい……リアルもブス……。

 ボイスチャットの元メンバーからの悪口が心の中で反響している。


 鏡の中の自分は、髪が伸び放題で幽霊のように見えた。


 たまには美容院に行こうかな。そうだ、VR機材を買いに行くついでに美容院も行っとこう。


 ◆ ◇ ◆




 やけに視線を感じる。これだから街中は苦手なんだ。


 美容院を出てパソコンショップに向かう途中、街ゆく者達が皆振り向いて我を見る。オタク女キモっとか思われているのだろうか? それとも、美容院で姫カットにしたのが変なのだろうか?


「おい、あの娘――」

「めっちゃ――じゃん」


 男達が我をジロジロ見て何か言っている。


 人の視線は怖い。

 早く家に帰りたい。


 フルダイブ型VR機材は路地裏の怪しい中古ショップで買った。店主があからさまに怪しいのだが、機材の性能は申し分ないはずだ。


 ――――――――




『ようこそ、リンデンヘイムの世界へ。おめでとうございます。あなたは因果律いんがりつの歪みにより、この世界への一定の干渉権や管理者権限システム・アドミニストレータを持つ特別階級として転生が決定致しました』


 そう、ここから我の冒険は始まったのだ。


 ◆ ◇ ◆




 そして、異世界にきてからというもの散々な結果だ。

 宿に泊まろうにも、上手くコミュニケーションが取れなかったり予約がいっぱいだったりで野宿する羽目に。寝ているところを暴漢に襲われそうになったり、どこかに連れ去られそうになったり。


 まあ、この七星神のアバターならば、強いから何とかなるのだが。



 そして我は、ある男を尾行しておるのだ。

 昨夜、酒場で会った七星神の男。この世界で我と同じ宿命を持つ存在。しかとこの目で見極めねば!


 ま、まあ、パーティーに入るにあたって、怖い男だと暴言をはかれそうで怖いからなのだが。ずっと尾行してみたが、どうやら暴力や暴言をはく男では無いようだ。


 それにしても、昨日は銀髪ボブの女だけだったのに、今日は幼女も連れておるではないか。我より先にパーティーに入ったというのか。



「ふっ、ふひっ……わ、わわ、われは、この世のことわりを統べる深淵しんえんの魔術師にして最強の魔導女王――」


 ま、マズい……やってしまった。この者どもがドン引きしている気がする。あああああっ! 時を戻せたらやり直したい!


 ――――――――



 だが、ジェイドは我を中二病でも良いと言ってくれた。気にしなくても良いと。そ、それに…………夜空で一番明るい星だと。美人のララにピッタリだと。


 びびび、美人? 我が?


 そそそ、そんなん言われたら好きになっちゃいそうだぁぁぁぁーっ!

 ふ、ふひっ…………くふっ、くふふっ……同じ星のもとに生まれた運命さだめの男……これからの冒険が楽しみだ。


 そうだ、様々なパーティーで追放されてきた我が、最後に辿り着いたのがこの場所なのだからな。



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