前回の続き
ペダルの次はサイコン、サイクルコンピューター。
これは計測機器。
ホイールにつけたマグネットでロードバイクの速度を測ったり、ケイデンスという一分間にクランクを何回転させたのかを数値化したり、心拍数を測ったり、他にも時間や気温の表示、標高、高価な商品になるとパワーを計測したり、ナビ機能が付いていたりという代物。
これも数多くの種類が。
その中で僕が選んだのは速度を測定するだけの比較的安いもの。
本格的に乗るつもりは、レースに出るようなつもりはない、それはKOGAさんも了承してくれた。そんなに多くの機能は必要ないと判断した。それに高価な物を買っても多分使いきれない、お金の無駄になってしまう可能性が大。人生でこれまで多機能な性能な商品を購入した経験が幾度かあるが、どれも使いこなすことはできなかった。だから、僕にはそんなに多くの機能は必要ない、そう考えた。
だからといって店にある最安値の商品を選んだわけではない。無駄な出費は控えたいが、そこはそれ、僕にも多少の見栄というものが存在した。一番値段の安い有線タイプのではコードがカーボンホイールに巻き付くような恰好になるのでちょっと不格好に。それにKOGAさんに合わないような気もしたので、無線タイプのサイコンを。
これでもう走るだけなら十分だのだが、他にも買うべきものは存在する。
次はボトルとボトルゲージ。
自転車に乗るのはちょっとした運動である、ロードバイクならば猶更、運動強度は数倍にも上がる。スポーツをするに当たって大事なことは水分補給。普通の自転車ならば、籠に水筒なりペットボトルを置いておけばいいのだが、ロードバイクに前籠は相応しくない、無理をして取り付けることも一応可能なのだが、KOGAさんにそんなものを着けたらかっこ悪くなってしまう。ならば、リュックを背負い、その中に入れて乗車するという方法もあるのだが、これでは必要な時に取り出すのが面倒である。走りながら、それは初心者には難しいかもしれないけど、または停車時なんかに気軽に水分が補給できる有効なものがボトルとボトルゲージである。これはダウンチューブに着けたボトルゲージにボトルを差し込み、手軽の脱着が可能なもの。すぐに、必要な時に水分が補給できる。
レースをするような人は、軽さを求めカーボン製の高価なものを選ぶのだろうが、生憎僕はレースには出ない、軽さなんか求めていない、だから安いものを。
けどすぐには決まらなかった。
色。
多くはないが複数の色が存在し、その中で白と黒、この二色で迷った。
迷った挙句、KOGAさんに触れて助言を求めた。
「そうね、どっちでも私には合うと思うけど、どちらかというと黒かしら。黒は女を引き立てるから」
この言葉で黒色のボトルゲージに。
この時、ボトルも黒にして、後でKOGAさんに小言を言われ、その理由が夏になって骨身にしみることになるのだが、それはまた後に。
まだまだ買うべきものは多数あった。
サドルバッグ。シートの後ろに付ける小さな入れ物。
無くても問題はないのだが、あると保険に、非常に心強い。
といってもサドルバッグ自体は入れ物である、それ自体では万が一の事態には役には立たない、中身が重要なのだ。
サドルバッグの中には予備のチューブとタイヤレバー。
ロードバイクはクイックリリースという機構で簡単に車体からホイールを外すことが、付けることができる。普通のパンク修理はチューブに空いた穴を見つけ出し、それを塞ぐという手間のかかる作業を行うのだが、クイックリリースの自転車はチューブの交換をし、空気を入れるだけで再び走り出すことが可能。
空気、エアを入れるためのポンプも購入。
最初はサドルバッグの中にエアボンベを一緒に入れるつもりでいた。
だが、その後のパンク修理の講習で、自分の不器用さが浮き彫りになってしまい、上手くチューブの交換ができない、タイヤとリムの間にチューブを挟んでしまう、いわゆる噛んでしまうようなことが相次ぎ何度もやり直す破目に、店員さんに指導してもらっているから破裂させるという最悪な事態は引き起こさなかったものの、一人でパンク対処の及んだ場合を想像すると、使い捨てのボンベでは失敗した時にリカバーが不可能と判断し、急遽シートチューブに取り付ける携帯ポンプに変更。
これでおおよそ買い揃えた。
……大事なものを忘れていた。
前後のライト。
夜間に走るつもりは、それに朝暗いうちから走るつもりもない。
だけど、ライトは重要である。
何か不測の事態に襲われて、日が完全に落ちた状態で走るということも十分にあり得る。
免許を所持していない時分には、自転車にライトなんか必要ない、暗くても街灯の灯りがあれば何とか見える、それで走れると思っていた。だが、運転する立場になって無灯火の自転車に遭遇した時の怖さというものを経験し、自分のためだけではなく、存在を知らせるために絶対に必要な、非常に大事なものだと悟った。
だから絶対に必要なものであった。
KOGAさんに着けるものはこれで終わりだが、後はサイクルスタンドとチェーンオイル、そしてエアポンプ、空気入れ。
ロードバイクにはスタンドはない、これも無理して着けることはできるが、かっこ良くない、KOGAさんに相応しくない。
そこでサイクルスタンドが必要になる。乗らない時にはこれで保管を。
チェーンオイルも重要である。チェーンのオイルが少なくなると走りに影響が出てしまう、ギアの歯が欠けやすくなり、最悪の場合にチェーンが切れてしまう事態に。そうならないように小まめな注油が必要。そしてこれは素人でも簡単に行える作業。
空気圧の維持というのも大事である。エアが少ないような状態で走るとパンクの要因になってしまう。走行前に適切な圧のエアを。
これで粗方必要なものは買い揃えた。
後で何か足りないものがあったとしても、その都度買い足せば問題はない。
先にも書いたが、このままロードバイクに、KOGAさんに乗って帰れるわけではない。
事後を店員さんに託し、僕はエアポンプにサイクルスタンド、それとチェーンオイルを手にし、KOGAさん以外の会計を、ロードバイク本体にはもう支払い済み、終えて、ワクワクしたある種高揚した気分に包まれながら車に乗って帰宅した。
予想以上に長くなってしまいました。
次でようやくKOGAさんに乗ります。