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シューズへん その2


 成功したが、即座に購入とはしなかった。

 というのもモニターで見ただけで、実物は全然違うという可能性も無きにしも非ず。これまでの人生で何度かそんな経験を。

 それにサイズの問題も。同じサイズの表記のはずなのにメーカーによって大きさが異なることがよくある。昔、それでスニーカーを買った時に失敗をしたことも。

 というわけで実物を見に、近郊の大都市にある大型の専門店へと。

 そこにはお世話になっている店の何倍もの商品が陳列。

 幸か不幸か、僕が一番の候補に挙げていたシューズは店頭にはなかった。

 なかったのに幸か不幸かという表現は自分で書きながら些かおかしいような気もしないではないが、しかしながらこれが存外ピッタリと当て嵌まっている。

 というのも、僕は最初からこの店でシューズを買うつもりは1ミリもなかった。

 お目当ての品が半額以下で買えるのならば、もしかして、いや絶対に購入を決断していただろうが、ここでは確認するだけで、買うのはKOGAさんと出会ったあのお店でと決めていた。先にも書いたがお世話になっているといのもあるし、それに地元に、馴染みの店にお金を落とすというのも結構と大事である。しかしながら買わないとは決めてはいるものの、アレコレと対応してくれている店員さんに少々申し訳ないような気持ちがあるのもまた事実であり、お目当ての物がなかったから購入には至らなかったというある種免罪符のようなものが。

 同じメーカーの最高級のグレードの商品は鎮座しており、それを試し履きさせてもらい、店員さんと相談をし、自分に合うサイズ選びを。

 

 後日、KOGAさんを買った店で、ビンディングシューズの注文を。

 それから約一週間後、待望の品が到着。

 店に品が着きそれを購入して即座に走り出したような気持ちはまあ山々なのであるが、その前にすべきことがいくつか。

 まずはクリートの装着。

 SPDは金属のクリートをソールに取り着ける。ちなみにSPD-SLはプラ製。

 これはまあ本やネットを参考にして素人でもできるといえば十分に可能かもしれないが、僕は自身の手ではなくお店に、店員さんに委ねることに。

 まあ最初ということで素人で何も分かっていない人間がするよりもプロに任せた方が良いだろうと判断である。

 これにはKOGAさんも同意を。

 というのもクリートは一点、そこにしか装着できないというものではなく、調整が可能。前後左右、それぞれに微妙にだが位置をズラすことが。

 慣れてくるとそこを調整して走り方が好転したり、その反対にドツボに嵌ってしまい、沼に落ちてしまうというような悲劇もあるらしいのだが、ここではとりあえず基本の位置に。

 装着してもらいお店の駐車場で練習を。

 足の裏の数センチの部品、それがちゃんとした位置にないとペダル固定でできない、ズレていたら嵌らない。

 目視が可能ならば容易に嵌めることもできるであろうが、人間の体の構造上、自転車の跨りながら自分の足の裏を見るなんていう芸当はまず不可能。

 しかしながら僕は楽しい味方がいた。

 KOGAさんだ。

 彼女の指示で足の位置を微妙に動かしながら正しい位置へと。

 これを押し込めば装着完了のはずなのだが、押し込んでも嵌らない、むしろ力を入れれば入れるほど駄目になっていくような感じに。

 昔、スキーのビンディングでもこんな経験をしたことを思い出す。

 あの時も最初こそは苦戦したが、そのうち簡単にできるようになっていたな。

「まあ、そういうものよね。コツをつかむまでは大変だから」

 と、KOGAさんが。

「慣れるまではちょっと大変ですから」

 と、店員さんも。

 そうこうしているうちにパチンという音と嵌った感触。

 さあ、嵌ったものを今度は取らないと。

 いつまでもペダルに固定していくわけにもいかない。

 外すのは装着時の反対で、押すではなく引く、ではなくて足というか踵を外に向けて捻る。

 日常的にそんなに行わない動作である故にこれも嵌める以上に難しい。

 それでも四苦八苦、悪戦苦闘してようやく脱着できた。

 もっと簡単にできると想像していたのに存外難しい、導入したことをちょっと公開。

 というのも利き足の右でこんなにも苦労しているのだ。

 左側だとどうなることやらと。

 そして日本という法治国家で使用する以上、左側が右よりも重要に。

 御存じのとおり日本の道交法では自転車を含む車両は左車線の走行を義務付けられている。そしてロードバイクに限らず自転車全般に推奨されていることだが、停車時には左足を地面、路面と接地して車体を支える。これは右足を着くと車両との接触の可能性左に比べが大きくなるからである。右足を車のタイヤに踏まれてしまうという悲劇に見舞われてしまうかもしれない。

 しかしながらあくまで可能性、もしかしたら右でずっと体を支え続けていても一生そんな目にあわないかもしれないが、可能な限りリスクはないほうが好ましい。無用な事故はなるべく避けたい。それに店員さんも、KOGAさんも異口同音に。

 というわけで左での脱着を完璧にできるように練習をしたのだが、如何せん利き足の右でも苦戦したのに、利き足でない左ならなおのこと。

 結局十五分程店員さんに見てもらいながら脱着を繰り返したのだが、上手くいかず、お店に他の来店者が来たことで店員さんはそちらへと。

「まあちょっと、このままの状態じゃ道路を走るのは危険よね。家に戻って練習しよう」

 というKOGAさんの言葉に従い、行き同様にスニーカーで帰宅した。

 


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