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UVプロテクトへん


「日焼け止めちゃんと塗っておきなさいよ」

 サイクルウェアを買うよりも少しだけ前の話。寒さが徐々に柔らかくなり、日中は暖かくなってきた春のある日、KOGAさんからのアドバイスが。

 これまでの人生であまり縁のないもの。

 学校に通っていた時にはそんなものには気を全く使わず、太陽光を浴びて、夏になれば当然黒くなっていたし、仕事を始めてからは紫外線の強い時間帯は室内での業務中なのでそんなことをする必要がなく、休みの日にはそんな高温と高い湿度の中で過ごすことをなるべく避けて生活していた。

 けど、これからKOGAさんとの生活、まだ春だけど夏には多分炎天下の中を走るはず。それ位に僕はロードバイク、KOGAさんに嵌っていた。

 しかしながら、まだ季節は春になったばかり、せっかくの助言だけど些か早すぎるのではと思い、それを言葉にして伝えてみる。するとKOGAさんからの反論が、

「春だからと思って舐めていると酷い目にあうわよ。春も結構紫外線が強いんだから」

 なるほど、昔何かで聞いたことがあるような記憶が。熟練者のように丸一日乗るということはないけど、それでも走りに行くと二三時間は経過している。

 なら、この助言に従うべきだろう、そんな風に考えて仕事帰りに近所のドラッグストアに。

 一言で日焼け止めといっても種類は豊富。

 それならば経験者の意見を参考にするのが良策であろう。僕の周りにはロードバイクに乗る人間はいないけど、世の中にはインターネットという便利のツールが存在している。検索バーに ロードバイク 日焼け止め と書けばいくつものサイトがヒットする。

 それらを読んで僕が選択したのはスポーツ量販店で販売している日焼け止めを購入。

 これを選んだのは買いやすさと手頃な値段。

 高性能を誇るクリームは何といっても価格が。僕の肯定した金額よりも一つ桁が大きい。それを紹介していたのは女性であったから、焼きたくないという絶対的な意思でそれを使用していると推察できるが、僕はまあ男であり日焼けに対してそこまでの忌避はない。それにいくら凄い効果であってもいきなりその高価な商品を購入することは躊躇ってしまう。

 ということでスポーツ量販店のものを使用したのだが、今一その効果というもの実感できなかった。

 しかしながらとある僕のミスで、日焼け対策が実に重要なことであることを思い知ることになった。

 その日は天気が良くて波は静か、ではなく良い陽気であった。

 春先からずっとロンTを着てKOGAさんに乗っていたけど、この日は袖の短いシャツで走っても平気なくらいの気温。

 これまではずっと布で隠していた部分を外部へとさらけ出す、当然その個所は紫外線が直撃することに。だから腕と手には日焼け止めを施す。

 それからもちろん顔と首にも。

 けど、ここで大きな過ちを。上半身ばかりに気を取られていて、下半身のことが頭からすっぽりと抜け落ちていた。つまり脚に塗り忘れてしまった。

 ここまでの僕の乗車時の服装をあらためて書いておくと、上は先に書いたような恰好でそこにリュックを背負う、そして下はスキニージーンズ。ジーンズならば露出している個所がないと思われるかもしれないから、これももう一度説明すると、チェーンに絡まないように裾を折ってある、脛と脹脛が外気に触れている。

 そこを塗り忘れてしまった。

 走行中は、別段気にもならなかった。しかしながら家に帰り、シャワーで汗を流していると両脹脛から違和感が。

 ヒリヒリする。

 あのいつかの日のようにもしかしたら自分でも気が付かないうちに擦れてしまったのかと思い、しゃがんで確認を。

 お尻の時とは違い、目が悪くても顔を近付けられ、確認できる。

 そこには赤くなっている肌が。日焼けの証拠が。

 と同時に、塗り忘れていたことにようやく気が付き、後悔し、そして日焼け止めの重要性を痛い程、といって少しヒリヒリする程度だけど、理解した。

本当に皮肉なことだけど、日焼け対策の重要性をその身をもって証明してしまった。

 しかし春の陽気程度でもこうなってしまう。塗らずに夏の炎天下の中で走行したらどうなってしまうんだ?

 絶対にこれ以上に酷いことに、日焼けを通りここして火傷になってしまう未来予想図が頭の中に浮かんできた。

 この先は絶対に、どんな時であっても、なるべく日焼け止めを塗ってからKOGAさんと出かけよう。

 真っ裸という、第三者がもし存在していたら間抜けに見えるような姿で固く心にそう誓った。



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