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復路? へん 5


 いつもの癖で左折をしてしまう。

 頭の中で思い描いていたプランでは、この道を右折し東へと下っていく、道自体は通ったことはないけどここをしばし走れば国道一桁台の道へと、そして行きに通った旧街道へと繋がるという知識はあった。

 それなのに左折を。

 左折をしても帰れないことはないのだが、ほんの少し前まで走っていたあの道とほぼ変わらない行程、つまり遠回りになってしまう。

 しかしながら何故左折をしてしまったのか?

 日本の道路事情からすれば右折をするよりも左折をするほうのが平易である。だから疲れていたので思わず左に曲がってしまった。 

 という要因も多少あるだろうが、僕が左折してしまった主な原因は、癖、であった。

 頻繁には通らないが、それでも何度かこの道を車で往復したことがあった。その時は必ず左折をしていた。

 左折してしばらくは何も思わずKOGAさんを走らせる、途中で自分にミスに気が付く。

 ミスに気が付いた時点で引き返しておけばよかったのだが、この時の僕はなぜかそうはならずにひたすらKOGAさんのペダルを回し続けてしまっていた。

 車の通りが存外多く、大型車が頻繁に走る道路なので途中でUターンはするのは危険であった。ならば、信号まで行き、そこで二段右折をして引き返すという手段も。

 だが、この時の僕はそんなことを考えるような心理状態ではなくなっていた。間違ってしまったという焦りからなのか、それともこれまで描写はしてこなかったが確実にあった疲れが思考を鈍らせてしまったのか、当時の僕自身もよく判らず、そして今現在となってもどうしてそうなってしまったのかという要因は依然と判然としていないのだが、そのまま進んでしまったのは事実。

 そしてこれによってより酷い状況へと僕は邁進してしまっていた。

 道が狭い。

 これはまだ序の口であった。

 そこにアップダウンの続く道。

 さらに追い打ちをかけるように酷い路面状況。

 歩道なんてものは存在していなくて、車道外側線はあるにあるのだが非常に狭くて自転車で、ロードバイクで走れるような状況ではない。

 ならば車道なのだが、この車道が実に酷かった。

 車で走っている時はそんなことは然程も気にはしなかったが、KOGAさんで走るとその酷さが如実に。

 上りはまだマシであった。だが一転下りになると恐怖でしかなかった。

 路面の凹凸をKOGAさんの細いタイヤがひろう。車体が跳ねる。それを抑え込もうとして指をブレーキにかけながら、ハンドルに力を込める。逆効果で余計に酷くなっていく。

 これでも十分酷い状況なのに、さらにはそんな僕の横を大型車がバンバンと追い越していく。

 余計酷いことに。

 正直生きた心地がしなかった。

 そんな僕にKOGAさんが声を。



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