100キロ 往路へん 2
今回の目的は墓参り
だが、コンビニに墓があるわけではない。一応先祖代々の墓があるのはまだまだ先にある市。
なら、目的地とはどういうことかというと、事前に計画しておいた計画で、地図とにらめっこをし、全行程の凡そ四分の一を過ぎたありで休憩をする予定を立てていた。その休憩予定地がこのコンビニであった。
駐車場の端。網フェンスの所にKOGAさんを立てかける。ロードバイク、スポーツ用の自転車には普通スタンドを取り付けない。従って自立することは不可能。だからこのように、ブラケットとサドルをフェンスに接地させて。サドルバッグの中からワイヤーロックを取り出す。フェンスの網を潜らせKOGAさんのフロントホイール、それから車体、トップチューブとダウンチューブの間、に通す。防犯対策であった。もっともこの程度の細いワイヤーでは本格的な窃盗犯に狙われてしまった場合、あまり効果はないが、それでもコンビニに行くくらいの所用、短い時間くらいならば十分有用である。
施錠する。ダイヤルロックの四桁の数字を適当に回す。
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
と、KOGAさんを声をかけて僕はコンビニへと入店。
休憩地にこのコンビニを選んだ理由は距離的に適切ということもあったのだが、実はもう一つ。それは買い物ができること。
世界的に有名なツールドフランスでは一レース、約200キロの走行で、プロ選手たちは7000キロカロリーものエネルギーを消費するという。素人の僕が行うのは、半分以下の距離で、そして平均速度も半分以下。だからプロのデータがそのまま当てはまるわけではないのだが、それでも結構なカロリーを消費することだけは確かであった。
朝しっかりと食べてきたけど、それでも持たない公算が非常に高い。
だからこのコンビニで補給食を購入することに。
事前に買っておくこともできたのだが、旅先で物を買う、といってもコンビニだが、それがちょっとだけかっこいいような感じがして、ここで買うことに。
僕が購入したのは五個入りクリームパンだった。自転車乗りには、アンパンのほうが人気であったのだが、これは脂質が少ないから、あえてクリームパンに。別にアンパンが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。だからこそ、ちょっとした拘りのようなものがあった。餡を食べる時はお茶を。この場合はアンパンなのだから牛乳、もしくはコーヒーを。しかし、ボトルに入れてあるのは水。これでは合わない。ならば、水を捨てて、コンビニでコーヒーまた牛乳を買い、ボトルに入れればと思われる人もいるだろうが、それを行った場合、後の処理が大変であった。ボトルの中に匂いがついてしまうから。
ともかく、クリームパンを買って店外に出ると、KOGAさんをジロジロと見ている人影が。
僕の姿を見ると、件の人物は足早に去っていった。
「おかえりー」
「変なことされませんでしたか?」
「大丈夫、遠くから見られていただけだから」
「そうですか」
「それより買い物済んだんでしょ、早く行こ」
「ちょっと待ってください。……あれ、何番だったっけ……」
購入時に設定して、その後ほとんど使用していなかったから番号を忘れてしまった。
「もう、忘れちゃったの。私達の大事な数字なのに」
KOGAさんの言葉で思い出した。ダイヤルロックの番号はKOGAさんと初めて会話した時に日付にしていた。




