ニュータイヤへん
まずは前回の補足を少しばかりしておきたいと思う。
前輪、即ち片方のタイヤしかパンクしていのにどうして両方ともに一気に交換をしたのか、一本数千円もするようなものを二本も購入したのか、それは無駄な出費ではないのか、そう感じる人もいるであろうからそれについての説明を。
タイヤという部品はロードバイクにおいて、いや車全般でも非常に重要なものである。
車体の中で唯一地面、路面と接する個所。
今後テクノロジーが急激に発達すれば、もしかして必要のないものになってしまうかもしれないが、現行の技術力ではこのゴムの塊がなければ、動力を地面に伝え車体を進ますことはできないし、そして安全に止まることもできない。
それだけ重要な、いや最重要といっても過言ではないものなのである。
KOGAさんに着いていたのは安物のタイヤであった。
ものの本や、ネット情報などを見ると、ロードバイクのグレードアップとしてまずはタイヤ交換をすることをお薦めしているものが多かった。これは安価なタイヤではグリップ力が弱いし、いざという時の制動も弱いからであった。
これはショップの店員さんも同じことを言っていた。
レースに出るつもりはないけど、それなりのスピードは出してみたい、けど安全にも気を配りたい。
だから、少々値は張るが評判の良いちょっとお高めのタイヤを履くことに。
だが、これではまだ前後同時に交換した理由を説明していない。
諭吉さんを出してまで、少々痛い出費をしてまで二本ともに交換したのは、片方だけが高価だと、もう片方、交換していない方が見劣りしてしまうからという、おそらく走っている最中ならば誰も気が付かないようなことなのに見栄を張ってしまった結果だった。
だが、この張った見栄が僕とKOGAさんに恩恵をもたらしてくれた。
乗った瞬間に分かるくらいに劇的な変化であった。
タイヤが太くなったのだから実際には重たくなっているはずなのだが、何故だかKOGAさんが軽く感じられた。
苦手であった坂も、スイスイと上っていけるような気がした。
実際の速度が上がったのか、それとも体感的なものなのか判らないけど、そう感じたのは紛れもない事実。
漕ぐのが以前よりも楽しくなった。
それに安定感も増したような気がした。
少々慣れたとはいえまだまだ初心者の域。路面の凹凸にタイヤを取られて危なくなるような場面にこれまで描写こそしていないが何度かあった。それが減った。
そして予想通りに制御力も上がった。
前よりも、思うようにブレーキができた。
タイヤを替えるだけでこんなにも変わるんだ。
踊りと興奮の中で密かに、次にタイヤ交換をする時にも絶対にこのタイヤにしようと決意し、KOGAさんにも伝え、賛同してもらった。
だが、この決意は守られることがなかった。
というのも、世の中上手くいくばかりではない。後に、このタイヤを選択したことが原因でとある事件が起きてしまのだが、それはまた別の機会に。




