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初期点検へん


 パンクというトラブルに遭遇した翌日、僕はKOGAさんと走りにはいかずにとある練習をすることに。

 これは遅番で、仕事から帰宅した頃には完全に日は落ちていて、鳥目であるから夜間の走行はできるだけしたくないという理由もあるが、それ以上に今度再びパンクという事態に見舞われてしまっても問題なく、そして手際よく対処できるようにしておきたかったからであった。

 タイヤを外し、チューブを取り出し、新しいチューブの交換し、再びタイヤを嵌める。この点においては少々時間はかかりはしたがそれでも一応はできた。リムでチューブを噛む、交換したばかりのチューブをまた破裂させてしまうという最悪なことにもならなかった。しかしながら、新しく使う危惧の修練度が全然なかった。それゆえに空気をチューブ内の送り込むことができず、途中KOGAさんを押しながら歩くという羽目に。

 携帯用のポンプの扱い方、及びパンク、チューブ交換の復習を。

 何度か繰り返し、自分が何を失敗したのか理解し、そして使い方を覚えた。

 覚えたのはいいが、ここで新たな問題点を発見してしまった。

 あの時は気が付かなかったけど、パンクした個所には穴が。

 その穴、というか亀裂の大きさは数ミリ程度のものであった。しかしながら、この亀裂が走行に影響を与えるのでは、これが原因で走行時に再びパンクしてしまうのではという想像を。

 普通のパンクならばまあ問題はない。対処の練習もした。だが、次のパンクが昨日のような低速で平坦な場所でするとは限らない。カーブを曲がっている最中に起こるかもしれない。実際昔原付で曲がった瞬間に後輪がパンクし転倒しそうになって経験があった。他にも下り坂でのパンクで止まれなくなってしまう事態もあり得る。

 KOGAさんに相談を。

「うーん、私も判断できないな。大丈夫なような気もするけど、君の危惧も理解できるし……よし、じゃあしばらく私に乗るのは止めてお店で訊いてみよう。ついでに初期点検もしてもらおう」

 このKOGAさんのアドバイスに僕は従うことにした。

 素人が下手に考えても碌な答えが出ない。そのことをこれまでの人生で幾度なく経験していた。


 次の休みの日、僕はKOGAさんに乗って自転車屋へと。

 パンクの恐れがあるのだから、乗らずに来るまで運んだほうが良いという意見を上げられる方もおられるだろうから僕の見解、というか乗って赴くという手段をどうして選択したのか話しておきたいと思う。

 店までは徒歩一時間ほどの距離ではあるがほぼ平坦路であった。いやむしろ若干、国土地理院の地図で確認すると、身体では全然判らないけど、数字ではハッキリと高低差があり、店側の海抜が我が家よりも断然低かった。これならば、万が一の事態に遭遇したとしても対処できると判断。まあ、雨であったのならば車で行っていたであろうが、この日はすこぶる晴天でおまけに風の強くない。

 こんな絶好の日KOGAさんに乗らないなんて勿体ない。判断できずに自重していたのだから。

 スピードを出すことなく、ゆっくりと安全運転。もしかしての事態が不意に襲い掛かってきても大丈夫な速度で僕はKOGAさんを走らせた。

 心配したような事態は起こらずに無事に店に到着。

 来店した目的を店員差に告げ、KOGAさんを見てもらう。

 初期点検。

 ロードバイクやクロスバイクの購入後、おおよそ一月から二月、または走行距離によって車体を点検すること。各種の取り付け部分にがたつきがないか、ボルトが緩んでいないか、後重要なのはワイヤーの伸び。硬いワイヤーではあるが初期の段階で若干伸びてしまい、それによってブレーキの効きが甘くなったり、ギアチェンジが上手くいかなくなったりという不具合がでてしまうのでアジャスターで調整を。

 これらのチェックは大抵購入した店で無料で行ってくれる。僕もタダで見てもらい、KOGAさんを調整してもらった。

 だが、来店の目的はこれだけではない。

 まだ、メインが残っていた。

 タイヤを、穴が、亀裂の入った個所を見てもらう。

 杞憂していたような事態が起きるような可能性はかなり低いけど、そんなに心配ならばいっそのことタイヤを交換しないかというアドバイスを。

 今着いているタイヤは安物で性能があまり良くない。おまけに23C。

 提案されたタイヤは、高価であるが、パンクにも強く、おまけに今着けているよりも少し太め。これによって安定性が増すらしい。

 しばし考え、それからKOGAさんに触れて彼女の意見を聞く、

「多分ギリギリだと思うけど、プロが言っているからそのサイズのタイヤでもなんとか私が穿けるんでしょ。太い方が安定するからね、普通の道なら今のサイズでも問題ないと思うけど、凸凹した道なんかだと細いタイヤだととられやすいからね。それに余計な心配事があると楽しめないでしょ」

 まだあまり走ってもいないのにタイヤ交換をするのは少し勿体ないような気もするけど、安心して走れるに越したことはない。

「じゃあ、タイヤ交換をお願いします」

 思わぬ出費であったが急遽タイヤ交換を。

 タイヤの交換はもしかしたらあるかもしれないと想像していたのに思わぬ出費というのはどういうことかというと前輪だけではなく後輪のタイヤも。つまり二本同時に買ったからであった。

 そしてさらにサイコンの設定も変更してもらった。


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