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訳あり天使と同居生活  作者: 夜乃ひととき
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第4話 かなめさんのお留守番

今回は、かなめさん目線の部分となります。女性の視点表現があまり得意ではなく、至らぬところもあるかと思いますが、それでもよろしければお楽しみください。

「かなめさん。自分が帰るまで、宅配や郵便もドア越しに対応してくれれば大丈夫です」

「分かりました」

「あとは…」

「あら、隆太くん。おはよう」


 隆太さんが仕事に行く前、玄関先で私と留守中の事について話していると、お隣の部屋からエプロン姿のおば様が出てきた。


「おはようございます、二宮さん」

「お仕事いってらっしゃい。その可愛い子はどちら様?」

「ご挨拶遅れました。同居相手の御堂かなめさんです。昨日から一緒に住むことになりました」

「あらぁ、もしかして彼女さん?隆太くんもやるわねぇ」

「い、いえ、私は隆太さんの彼女なんかでは!」


 私はお辞儀しつつ慌てて否定した。そして隆太さんは、出まかせで私のことを紹介してくれる。


「かなめさんとは、子どもの頃からの付き合いでして。地元から京都に来て、新しい家が見つかるまで自分の部屋にしばらく住む事になったんです」

「そうだったのね。よろしくね、かなめさん。私は二宮玲子、隆太くんのお隣さんよ」

「み、御堂かなめです。よ、よろしくお願いします」

「玲子で構わないわ。お隣さんだし、何かあったら遠慮なく頼ってちょうだいね」

「は、はいっ!」


 そう言って、玲子さんはゴミ袋を手に階段を降りていった。


「二宮さんは信頼できる方なので、もし緊急の用件があれば、頼っていただいて構いません」

「分かりました!」

「では、行ってきます。帰りは明日の昼前になると思いますので」

「いってらっしゃいませ、隆太さん!」


 私は隆太さんを見送った後、部屋に戻って鍵を閉めた。部屋を見渡すと、畳みきれていない洗濯物の山や、積み上げられたコミックの数々が目に入った。


”隆太さんが帰ってくるまでに、掃除でもしようかしら…”


 そうは言っても、隆太さんが帰ってくるのは明日の昼前、時間はたっぷりあるし、テレビでも見てゆっくりしようかと考えていると、ふとリビングのテレビ台に目がいく。


”これは、何でしょうか…”


 テレビは知っているけど、その下にあった箱型の機械が気になった。近づいて見てみると、その箱型の機械からは2本のコードが伸び、そのコードの先にリモコンのような物が付いていた。


「うーん、分からないなぁ…」


 と言いつつ、興味のあった私はそのリモコンのような物を手にすると、その両手で握った時のフィット感に唖然とする。


 握りやすい、このグリップが。


 ピッ!


「ふぇっ!?」


 そのフィット感を楽しむため、リモコンのような物をにぎにぎしていると、指が真ん中のマークの付いたボタンに当たり、突然機械音が鳴る。


 スイッチのボタンが青く変わり、慌てて触れたテレビのリモコンを床に落としてしまった。


「あわわ、ど、どうしましょう!?」


 部屋の物は自由に使っても良いと隆太さんに言われたものの、何かいけない事をしてしまったと感じた私は、リモコンのスイッチを押してテレビを点ける。


『アカウントを選択してください』


「あかうんと?」


 画面を見ると、何やら『Ryota Watase』という可愛い女の子のキャラクターのアイコンが現れた。


「えっと、どうやったら消せるのかしら…」


 適当にコード付きのリモコンのボタンを触っていると、アイコンが選択されて次の画面に変化する。


”これって、ゲーム?”


 どうやら、私は隆太さんのゲーム機を作動させたみたいだった。手探りでボタンを操作しつつ画面を右に移動していくと、様々なタイトルのゲームが出てきた。


 生まれて一度もゲームをした事がなかった私は、隆太さんのゲームに興味が湧いた。


「ちょ、ちょっとだけ、ちょっとだけなら…」


【ヘル・エスケープ】


 何やら怖そうなアイコンのタイトルがあったので、それを選択する。


【このゲームには暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。】


 何かの注意書きのあと、ゲームのタイトルが出てきたので、また同じボタンを押して進める。


【story】

【New game】

【select difficulty】


 英語はあまり読めないけど、とりあえず【easy】は簡単という意味だったはずなので、それを選択した。


【よう、俺はジョセフ。お前の新しい相棒だ】


「ジョセフ?」


【とりあえず、任務で互いに背中を預けるんだ。名前を教えてくれ】


「な、名前を入れたらいいのね…」


【かなめ】

【かなめだな。早速だが司令部から任務が入っている。機関の工作員の一人が、ある施設の調査を行なっていたが連絡が途絶えた。どうやら、問題が起きたみたいだ。俺たちで工作員を救出に向かう。わかったな?】


「おっ、おーけー」


【恐らく、施設はすでに新型ウイルスによってパンデミックになっている。地獄だろうな、装備はしっかりと揃えておけ】


 私はキャラクターを動かし、相棒のジョセフと共に、とある施設へと参入する。そこは薄暗くて、音楽も相まってかとても不気味なところだった。


【ぐぁっ、くそっ!敵だ!捕まっちまった!早く倒してくれ!】


「えっ、ちょ、早い!?」


 武器の使い方が分からず、変にボタンを押して別の動作をする。その間にも、ジョセフは敵のクリーチャーに捕まって殺されそうになる。


【何してる!早くしてくれ!】


「えっと、じゅ、銃を撃てばいいのね…」


 結局、銃の撃ち方が分からず画面には【Game over】の文字が浮かび上がる。


 結局、その後も【Continue】を選択し、やり直しを繰り返す事によって少しずつストーリーが続いていたものの、気がつけば日も暮れて夜になっていた。


"えっ、も、もうこんな時間?"


 時計を見ると、夜の午後7時。すでに外は暗くなっていた。


"掃除しなくちゃ…"


 その後も、クリーチャーを倒し続けているうちに、私はそのまま眠りについてしまった。



 ◇



「かなめさん?」


 翌日、仕事を終えて帰宅した俺は、リビングで力尽きて倒れているかなめさんを見つける。慌てて駆け寄るが、どうやら夜通しゲームをしていたらしく、その手にはコントローラーが握られ、独り言を呟いていた。


「かなめさん、生きてますか?」

「じょせふぅ!!」


 突然、かなめさんは声を上げて俺に抱きついてくる。先日購入したシャンプーの香りが鼻をくすぐった。


「あっ、えっと、お帰りなさい隆太さん!」


 寝ぼけていたかなめさんは、正気を取り戻すと慌てて俺から離れる。もう少しその心地よい香りを楽しみたかったのも山々ではあったが、かなめさんは同居人だ。あまり誤解される様なことは避けたかった。


「ずっとゲームしてたんですか?」

「あ、はい。このゲーム、怖かったですけどすごく面白くて、ストーリーですけど一応クリア出来ました!」


 長時間操作していなかったため、スリープモードになっていたゲームを起動させると、驚く事に死にゲーとして有名なあの【ヘル・エスケープ】を1日でクリアしていた。


 それも、トロフィーコンプリートされている。俺でも出来なかったのにだ。


 グキュル…


「あ…」

「かなめさん、もしかしてご飯も食べずにゲームしてたんですか?」

「す、すみません、あまりにも面白くて、その…」


 お腹が減っている事にも気づかないのだから、よほど熱中していたのだろう。


「お昼ご飯、食べに行きましょうか」

「はい!」


 俺がそう言うと、目を輝かせるかなめさん。その裏に、彼女がどれほど辛い過去を背負ってきたのか、俺はまだ少しも分かっていなかった。


いつもご拝読ありがとうございます!

感想、評価等々お待ちしております。


ちなみにお気づきかと思いますが、舞台は私の住んでいる京都で、隆太の仕事は警察官です。

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