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一輪咲いても 花は華。  作者: 小鳥遊 雪都
2/6

出逢い。

「ねえ? 黙ってちゃわかんないじゃん? なんとか言ってよ?」


そう言ってクスクスと笑ったその青年に安田やすだ かなえは確かな苛立ちを感じつつも小さな声で『えっと・・・』と、しか言い返せれずに俯いてしまっていた。


本当に・・・イライラしてしまう・・・。


心の内だけでそう呟き、俯いていたかなえの視界はいつしか歪み、滲んで揺れだしていた。


いつもそうだと思う・・・。


どうして私はもっとはっきりと言葉を言えないのだろう? と・・・。

あと少し・・・あともう少しだけでも私に意気地があれば・・・と・・・。


「あ~・・・もう・・・いいや!」


何も言い返して来ないかなえに痺れを切らしたその青年はそう言うとかなえの手をやや乱暴に掴み、その手を掴んだまま人波をかわしつつスタスタと歩きだしてしまっていた。


青年のその突然の行動に焦ったかなえは『ちょっと!』と声を発したのだがかなえのその小さな声は行き交う人々の雑踏に紛れ、その青年の耳に届くことはなく、立ち止まろうと足掻くかなえの脚力は弱くて無理矢理に手を引くその青年には何も伝わらずにいた。


抗うかなえはただただ無力だった。


「ああ・・・。こんなところにいた・・・」


そんな言葉と共に唐突に肩を抱き寄せられたかなえはビクリとし、足の動きは嘘のようにピタリと止められてしまっていた。


「勝手にいなくなっちゃ駄目じゃない・・・。探したよ?」


かなえの肩を抱いたままそう言ったその人の声は低くも優しいものでその低くも優しい声はかなえにしとしとと降りしきる夜雨を連想させていた。


「・・・アンタ・・・誰?」


そう訊ねたのはかなえの手を掴んだままの青年だった。


「そちらこそ・・・どなた?」


そう青年に訊ね返したその人の口元にはじんわりとした薄い笑みが滲まされていた。

その人のその薄い笑みを目にした青年は無意識のうちにかなえから手を離し、身構えてしまっていた・・・。


かなえの肩を抱いているその人のその態度は決して高圧的でも威圧的でもなかった。

むしろその人のその態度は青年のそれよりも遥かに低姿勢で丁寧だった。

しかし、その人から漂ってくる独特の雰囲気に青年は気圧させられてしまっていた。

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