二一話
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翌日から早速ドラゴンを探すために、俺達はドラゴンの目撃情報があった場所へ馬車を使って移動を始めた。
馬車はイシスが教会から借りたものだ。天蓋の付いた貴族のような馬車ではなく、荷馬車のような簡素な馬車だ。
目撃情報があったのは、始まりの街から馬車にして半日移動したところにある、近隣の農村である。
「なに作ってんだ、お前」
俺は馬車でなにやら粘土をこねくり回しているメリルに問いかけた。
「ふ……見て分からぬか? アイテムを作っているのだ」
「へえ。で、またどんな碌でもないアイテムを作ろうとしてんだ?」
「碌でもない言うな! これはそうさなあ……名付けてアルティメットフォースであるな。余が思うに、我ら『アルティメットワン』はそれぞれが、それぞれのステータスに突出しているであろう? ならば、そのステータスを一纏めにできれば……もはや最強であろう?」
確かに。それは俺も考えたことがある。俺に、イシスのような防御力や、フレアのような攻撃力があれば――多分、俺は最強になれるかもしれないと。まあ、非現実的な話なんだけど。
御者台でこの話を聞いていたイシスが、不意にこんな質問を投げてきた。
「そういえば、どうしてアッシュさんは敏捷に極振りしているのですか?」
「イシス? そんな質問するだけ無駄よ? どうせ、魔物から逃げるためよー」
「さすがフレア。大体合ってる……。けど、一番の理由は、俺に他の才能が無かったからだな」
俺はポケットにあったギルドカードを取り出し、ステータを確認する。前よりもレベルは上がっており、今はレベル8になっている。
ステータスはレベルが上がることで上昇する。ステータスポイントを極振りしていることもあって、敏捷パラメーターだけが突出して高い。しかし、他のパラメーターはレベルが上がっているにも関わらず、ほとんど変化していなかった。
「……俺は、敏捷パラメーター以外、レベルアップでパラメーターほとんど変わらねえんだよ。だから、他にステータスポイントを振っても意味がねえわけだな」
普通、一つのパラメーターに極振りしたところで大きく数値が変動するわけではない。しかし、俺の場合は敏捷パラメーターの上がり幅だけが異常なのだ。できれば、もっと他のパラメーターに、均等に割り振って欲しかった。
「なるほどねえ……。まあ、実はあたしもそんな感じの理由で、攻撃力に極振りしてるのよね」
「フレアさんもですか? 実は私も……」
聞けば、フレアとイシスも極振りしているパラメーター以外の上がり幅がほとんどないとのこと。考えることは、みんな同じってことか……。
こうして、俺達は他愛もない雑談を交わしながら、近隣の農村に到着した。




