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ねぇ、リリィ、オムライス作ってよ  作者: 寂しい里
リリィとミアの章
3/20

わたしが召喚される前


 この世界に来る前、わたしは女子中学生だった。

 女子中学生の、はずだった。

 でもわたしは家庭の事情で学校には全然通うことが出来なくて、必然的に友達と呼べる存在は一人もいなかった。

 わたしの毎日は、入れ替わりで家にやってくる見知らぬ男性のために、ご飯を作ったりお酒を買ってきたりすることに消費されていった。その仕事を放棄することは出来なかった。放棄すれば、絶対的な暴力がわたしを蹂躙するからだ。

 『母親』らしき人はいたけど、物心ついてから会話を交わしたことは数回しかない。彼女はいつも朝方に男を連れて帰ってきては、ベッドに向かい、夕方頃に起きてはまたどこかに出かける生活をしていた。

 ある男が気まぐれを起こして、わたしに少女漫画を買ってきてくれたことがあった。そこには、わたしが知らない美しい世界が描かれていた。楽しくてワクワクするような世界が広がっていた。わたしは男が寝ている合間にそれをすり切れるまで読み込んだ。何度も、何度も。

 その漫画は、悪の組織と戦う魔法少女の物語だった。自分の身長ほどもあるバトルアックスを振り回して敵を倒していく姿は爽快で、わたしは何度となく彼女が男たちを凪払ってくれることを夢想した。

 魔法少女が、助けてくれると思っていた。わたしだけこんなに不幸なのは、絶対におかしいから。

 でも、魔法少女は来なかった。

 代わりにある日、今まで見たこともない笑顔を振りまく男が、わたしの家の戸口に現れた。

「百合ちゃんだね?」

 何故か、彼はわたしの名前を知っていた。

 わたしは高揚した。ついに、わたしを助けてくれる人が現れたんだ。もうご飯が不味いとか酒がないとかいう理由で殴られることはなくなるんだ。わたしは彼の笑顔に期待した。

 結果、わたしは彼に奪われた。何度も何度も奪われた。彼は何度もわたしの中でおぞましい毒を吐き散らし、何度もわたしを汚した。

 全てが終わった後、わたしにはもう何も残っていなかった。台所の包丁だけが妙に目に付いた。

 後のことはほとんど覚えていない。意識が朦朧としているなか、真っ赤に染まったシーツを見た気がする。

 そして次に目を開けた瞬間。

 わたしの前にはミアがいた。

 わたしはミアの魔法で、この世界に召喚されたのだった。


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