仲良くなりすぎて裏切られる(2)
「多分…ないわけじゃない…かな。」
なるほど、『依頼人』は自分には非があるかもと考えているわけか。探偵はゆっくりと思考を巡らせていく、そしてその答えにたどり着いた。
「では考えてみてくれ、自分が自殺を止めることがあるとする。それは何がどうなった時だ?」
『依頼人』は考え込んだ、それを尻目に探偵は紅茶のカップを傾ける。それはまるでアフターヌーンティーを楽しむかのような落ち着き方だった。探偵の考えではここまでの質問を含めて相手が完全に悪いわけではない、と気づいて欲しかった。しばらく考え込んだ後、口を開いた『依頼人』の答えは意外なものであった。
「その友達が…俺の代わりに死んでくれないと自殺を考え直すのは無理かな。」
その言葉は裏切られた絶望と近い未来への恐怖、そして少しの憎悪を混ぜたような思いが含まれていた。現実は思った通りにはいかないものだ、そして残酷なものだ。と探偵は心の中でため息を一つついた後、真剣な表情をして続けた。
「その発言に、責任は持てるか?」
高校生ぐらいにもなれば冗談でも死ね、や殺す、を使うようになるだろう。もちろん、その覚悟を持って言ってるわけではない。だが今回はどうだろうか、自分が死なないためには友人が死ぬ必要がある。それに対しての覚悟があるだろうか。『依頼人』はその言葉咀嚼し、頷いた。
「わかった。」
短く答えると探偵は『依頼人』を見送るため席を立った。そして事務所を出ていく時
「絶対に、後悔するんじゃないぞ?」
と一言付け加えて『依頼人』を見送った。
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「探偵さん、もしかして…。」
「ああ、そうだ。殺し屋に頼む。」
如月の言葉がわかっているかのように肯定で言葉を断ち切る。殺し屋を利用する、その考えに如月は何か言いたげだったがそれは探偵の口から出た言葉を聞くと口をつぐんだ。
「『依頼人』がそれが最適解だ、って言ってるんだ。そうするしかないだろう、そして責任も持てると言った。覚悟がある、ということだ。」
探偵は言葉を言い終えるが早いか、上着を羽織り事務所を出ていった。外の空気を吸うや否や、現実は思った通りにはいかない、そしてそれは残酷なものだ、と再び唱えた。その口ぶりはまるで、探偵は少し先の未来が見えているようであった。おそらく探偵には少し先の未来が予想できたのだろう。




