case26 体を欠損した少女(1)
探偵が探偵としての仕事、素行調査を依頼してきた人間に真実を伝えようとしていた頃。
「今回は調査の結果を伝えるだけだ。飲み物は俺が出しておく。」
と言われたので探偵のデスクを借りることを条件に如月は部屋の隅で事務椅子にもたれながら読書をしていた。以前『依頼人』として事務所を訪れた作家、その先生が新しい小説を出したのだった。以前と変わらず独特な世界観、少し前まで自殺を考えていたとは思えない。本の世界に夢中になって危うくサイトが更新されたのを見逃すところであった。
他人に迷惑をかけるぐらいならいっそ自殺したほうがいいのかもしれない…
この人は迷っている、文面からそう感じた。そう考えている間に探偵が戻ってきた。その探偵も、おそらく自殺に迷いがある、と言っていたのでこの『依頼人』が迷っているのはほぼ確定だろう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
事務所のドアを叩く音がする。探偵はゆっくりと玄関をあけたがその目線の先には誰もいなかった。呆気にとられていると下から声が聞こえてきた。
「あなた、サイトの人?」
声のした方を見るとそこにいたのは少女であった、しかも驚くことに車椅子に乗っている。足が悪いのか、と足元を見るとその足である部分がない。なぜそんな少女が1人でここにきたのだろうか、家族で出かけて迷子にでもなったのだろうか?と一瞬考えたが、この少女はたしかにサイトと口にした。おそらく死について迷っていた『依頼人』本人なのだろう。
「いらっしゃい、どうぞ中へ。」
探偵は玄関を開けたままにするとその『依頼人』はゆっくりと中に入っていった。程なくして如月が紅茶を持ってくるのだが、如月は『依頼人』を見るなり少し痛ましい顔になった。探偵が如月に無言で注意すると如月はやってしまった、とでもいいそうな顔をした。
「気にしないで、慣れてるから。」
小さな『依頼人』は少し疲れたような顔をした。
「すまない、彼女もそういったつもりじゃないんだ。許してほしい。」
探偵は短く謝罪すると話し始めた。
「自分たちが君の言うサイトの人になるわけだが、君は自殺を考えていた人で間違いないかな?」
自分たちの予想をはるかに上回る幼さ、その割に現実に冷めきったような態度。この『依頼人』に何があったのだろうか…。




