case3 優秀な学生(1)
確かその『依頼人』は探偵さんが何度もコンタクトを取ってたと思う。何度も事務所に来る日が変更されていたからとても忙しい人なのだろう、と思っていた私はとても驚かされた。
まさか依頼人が学生だなんて思っていなかった。探偵さんも話をしている時こそいつも通りであったが私と二人になった時に「まさかあんなに若いとは…」と驚いていた。というかその時の探偵さんすごい年寄りくさかったなぁ…
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「コーヒーと紅茶、どちらにしようか?」
いつもの言葉が投げかけられる。
「…本当に他の人には話さないでくれるんですよね?」
「ああ、約束しよう。」
疑われているのか念のためか確認した少年は暫く悩んだ後に少し顔を明るくして
「こ、コーヒーでお願いします。ブラックの…苦めのやつで。」
と注文をつけて返してきた。
ほどなくしてコーヒーが机に置かれ探偵はゆっくりと話し始める。
「えっと、ちょっと聞きにくいんだけど…なんで自殺しようとしたんだ?」
相手に対して会話の切り込み方が微妙に違う点は探偵なりの思いやりなのだろうか。
「俺さ、自分で言うのもあれだけど結構、頭いい方じゃんね。成績もいいし先生たちとも仲良いの。進学についてとかも困ったことがないぐらいには、頭いいんよ。」
「なんていうかちょっと羨ましいな。俺は今でこそ仕事してるけど数学がすっげえ嫌いだった。学生の時なんて赤点とるかも〜って嘆いてたわ。」
探偵の身の上話で少し空気が柔らかくなった。
「羨ましいって言われると複雑な感じがするな…いやさ、これが原因ってか…うちの家はさ、めっちゃ普通で。親の職とか家族の人数も割と一般的な感じで。だからなのか普通より頭いい俺に期待?されてさ…正直すっげえ重い。辛い、やってらんない。なんなんだろね?その期待のせいなのか言葉の使い方から飯食ってる時の姿勢まで指摘してくんだよ?正直本当に…」
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半分愚痴に近いが…本人にとってはかなり重荷になってるみたいだな…
「うっげ、クッソ苦え…」
「…もしかしてコーヒーも家庭の事情的なもので許されてない?」
「はは…そうなんだよ…」
ここが第三者の介入することのない空間だから挑戦したかったのだろう…
「如月、ミルクと砂糖。一つずつじゃなくて、器にいくつか多めに入れて持ってきてくれ。」




