case23 殺すつもりではなかった(1)
最近事務所に訪れる『依頼人』の方は特殊なケースの人が多い、探偵さんもよく頭を悩ませている。まあ、自分が死ぬのにありきたりも何もないとは思いますけど。そういえば、以前事務所に訪れた方も特殊でしたね。
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その『依頼人』はなかなか事務所に訪れようとしなかった。何を言っても頑なに「それは出来ない」の一点張り、ここまでくると何かを隠しているようにも思えた。
返信しました
もしかして自殺しようと思っていないのか?面白そうなサイトを見つけたからちょっとちょっかい出してみようってか?
探偵の方が自然と悪くなっていく。
返信されました
そういうのじゃないけど…わかった、会えばいいんでしょ?
会う意思がある、ということは冷やかしの類ではないのだろうか。正直、この『依頼人』には何かがある。
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事務所に訪れた『依頼人』は至って普通のような女性であった。普通の人間と変わらない口ぶり、普通の人間と変わらない態度、自殺する人間とは思えない。
「ところで、なんで自殺しようって思ったんだ?…それが事務所に来るのを拒んだ理由に関係しているのか?」
探偵が切り込むと『依頼人』の顔が曇った。
「私そろそろ帰るわ。」
『依頼人』はそばに置いていたバッグを手に取ると事務所を出ていった。
「…如月、つけるぞ。推測ではあるが、何か人に言えない理由がある。」
それを言い切るが早いか、探偵は事務所を出ていった。如月はと言うと探偵の言葉を理解するのに時間がかかったが、なんとなく理由を察し探偵の後を追った。
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「人には言えない理由って、以前あったような男性には言いにくい理由って可能性はないのですか?」
『依頼人』の跡をつける側で如月が疑問に思ったことを聞いてくる。
「その可能性もあったかもしれない。」
探偵は声を小さくして語る。
「だがそれだったら何故如月に言おうとしなかったのだろうか?俺にはだが、何かを考えてる素振りは見えなかった。如月の方を見たようにも思えなかった。もし如月の言う通り男に言いにくいものだとしたら、その時は如月の出番だ。頼りにしてるぞ。」




