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部活の人間関係(3)

それから更に数日後、『依頼人』がやってきた。事務所のドアを開けて入ってきた『依頼人』は数日前から更にボロボロになったようであった。探偵はというと一瞬何事かと考えたがあれからどうなったかを報告しにきたのだろうと考えていた。だがその割には疲れすぎではないだろうか、以前会った時よりもオーラが暗くなっているように見えるのは気のせいだろうか?『依頼人』の口から出てきた言葉は信じられないものであった。


「親が出てきました…。」


「…は?」


理解ができなかった。親が出てきた、とはなんのことだろう?いつも家にいない親が帰ってきたのだろうか?そんなことをいちいち報告するわけがないことぐらい探偵は理解している。だが親が出てきた、とは本当に何の事だろうか。


「以前話した部活を荒らした奴の親が出てきたんです…。部活にじゃなくて大学に…。」


そんなことがあるとは思っていなかった。だがそれが現実に起こってしまったのだから、それが事実なのだろう。『依頼人』曰く、


退部になった人間が親にそれを報告した、それを聞いて怒った親がSNSの大学のアカウントにダイレクトメッセージをおくった、そしてその大学を通じて『依頼人』のサークルが大学側から呼び出された。


とのことだ。元々退部になった人間は話を聞く限り多少常識がないと思っていた。だがこれほどまでとは誰も考えもしなかっただろう。親も親だ。もう大学生にもなる息子のことにそこまで関わるものだろうか?大学生ともなればもう大人の仲間入りをしている、そんな人間にそこまで関わるか?常識のなかった人間の自業自得をなぜそこまで庇おうとするのだろうか?


「そのダイレクトメッセージの内容を見せてもらったんですけど、顧問から強制的に退部を宣告された。なんて書いてあって…。」


意味がわからない。一番最初に『依頼人』が教えてくれた内容と全く違うではないか。親も息子の言うことを鵜呑みにするものなのか?探偵の頭の中は疑問しか出てこなかった。


「しかもタチの悪いことに学校の評判を落とすような言い方で…高校生の息子にもこの大学には行かせたくないって言い方までしてて…。」


これだから人間は嫌いだ。相手の弱い部分を突くのはまあ良しとしよう、交渉の際には必要なことだ。だがそれをつかって上から圧力をかけるのはまた別の話だ。弱い部分を突くなら面と向かって突いてほしい、心からそう思う。


「つまり、顧問と部員の圧力で苦しんでたらいつのまにか上が顧問から大学という巨大なものになっていた、ということか。」


大学としてはイメージダウンは絶対に避けなければならない、何をしても退部を取り消させるだろう。こんなことをしてまで息子をサークルにとどまらせたいのか。第一、それでサークルにとどまったとしてサークルを好き放題に荒らした人間に居場所が与えられるのだろうか。


「もう…本当に…やってらんないですよ…。」


『依頼人』の悲痛な言葉を聞いて虫酸が走った。心の底から親の顔が見てみたいと感じた。子供が子供で常識知らずなら親も親で常識知らずだ。まさに蛙の子は蛙、なのだろう。


「これだけいろんなことがあると、もう何もかもがどうでもよくなってきますよ…。」


「OK、わかった。大学から離れるべきだ。休学って出来ただろう?そいつと一緒にいたら君が本当に自殺しかねない。」


言葉が多少荒くなる。無理もないだろう、『依頼人』の心は理不尽なまでにボロボロにされている。それなのに周りの人間は更に心を削ってくる、そんな奴らに合わせる必要などない。


「自分が壊れる前にそんな環境逃げ出すんだ。そこで我慢してていいことなんてない。」


『依頼人』を救うために放たれた探偵の言葉はとても力強かった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その後、『依頼人』は休学を決めた。大学を休むという行為に多少戸惑っていたが、『依頼人』には、その決断が自分を救うことを信じてほしい。

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