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case19 経営者(1)

如月の努力から数日、『依頼人』はというと如月の言葉に勇気を貰ったのかミュージシャンを目指し続けているらしい。幸いにも如月の怪我は直後こそ頭痛や意識が薄れる等あったが時間の経過とともに症状は軽くなっていった。今はいつものように資料をまとめている。


「あまり無理はするなよ。」


まとめた資料を如月が運んでくる前に持っていく、探偵なりに気を使ってのことだ。


「これぐらい大丈夫なんですけど…。」


如月の呟きなど聞こえないかのように持ってきた資料をデスクに積み1つずつ目を通していったその時、サイトに新しい書き込みが投稿された。


「如月、お前にもやれることだ。」


如月を呼ぶと新着の欄を開く。


新着

もうストレスが限界に達した…辛いから自殺しようかとおもう…。後のことは誰かがやってくれるはず…。


何度か返信をしたのだがその『依頼人』は忙しいようで、なかなか事務所に訪れる予定が決まらなかった。探偵側(こちら)の営業時間を遅くまでに増やすことでやっと事務所に訪れるタイミングを決めることができた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


事務所のドアが開き、疲れたような顔の男が一人入ってくる。夜に訪れる『依頼人』、疲れた顔、それはどことなく以前相手をした会社員を彷彿とさせた。


「どうぞ、おかけください。」


いつもの言葉を聞き、探偵という表の顔ではなく、裏の仕事が始まったことを確認する。夜間にコーヒーは眠れなくなるかもしれない、という探偵のちょっとした気遣いからカフェインは含んでいるが、コーヒーよりはマシだろうということで冷ましたほうじ茶を差し出す。


「今回、自殺のサイトに書き込みをしてましたが…それは何故でしょうか?」


「私は事業主なのですが…経営をするのに限界を感じて…。」


依頼人は経営者、経営をするのがストレスで自殺に至った。たしかに経営者は社員を守る義務がありその責任は相当なものであろう。それが自殺へと足を進めてしまっても何もおかしくはない。当然、自殺していいわけではないが。


「息抜き、じゃないですけどそういった気分転換になりそうなものはないんですか?」


「あるにはあるのですが…その時だけというか、またすぐに疲れを感じてしまって…。」


これもまた、不思議な話ではない。気分転換なんて気休めと同じだ、それが終わってしまえばまだ憂鬱な気分になってしまうものだ。

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