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努力が実らない人間(2)

「それで…もう辛くて、自殺しようかと…。」


「ミュージシャンになるのって難しいらしいですもんね…。でも、もう少しだけ頑張ろう…なんて、思ったりはしませんか?」


励ましたつもりであった、だが返ってきた答えはそれとは別の捉え方をされたようであった。


「もう少しだけ頑張ろうだ!?俺がどれだけの努力をしてきたのかわからないのによくそんなこと言えるな!」


あ、これはまずいタイプの人間だ。如月の本能が危険を察知し、警笛を鳴らしている。だが、相手は『依頼人』である、苦手を理由に見捨てることはできない。


「す、すみません…よく知りもせずこんなことを言ってしまって…。」


「…まあ、いいよ。で?お前は何がしたくて俺をここに呼んだわけ?」


素直に目的を話して納得してもらえるとは考えづらい。ここはそれらしい理由を言っておくべきであろうか。


「えっと…その…辛いことを吐き出したら、少し楽になれるかなって思ったので。…どうですか?」


相手のことを知るためにもまずは相手に喋らせなければいけない、それを探偵が教えてくれた。こんな感じで良いのか、と探偵に聞けないのが少しばかり不安だ。


「全っ然だな、何も変わっちゃねえよ。」


「そうですか…、普段はどんなことをしてるのですか?」


相手の答えは簡潔にまとめられていてそれ以上を話そうとしない。ならばこちらから聞いていかなければ、と思い如月は思い切って質問に出た。少し前のように些細なことで腹がたつかもしれない。言葉には十分な注意をしなければならない。


「路上ライブぐらいだな…。後はたまに新人ミュージシャンのオーディションがあるからそれ受けて、ってこととか。」


まだまだ言葉が足りないよう思える。


「やっぱりオーディションっていうと難関なものなんですか?」


「難関も何もほとんど受からないようなものさ、あんなの。」


まるで愚痴のような言葉を聞きながら如月は整理し始めた。路上ライブとオーディションをしている、それが自殺の原因となっているため、それに関してはもう少し聞くべきか。なるほど、まとめてみてわかったが『依頼人』の情報が少なすぎる。


「新しいことへの挑戦、というか、何か新しいことを始めたりはしないんですか?」


如月の一言に触発されたのか、急に『依頼人』の顔色が変わった。

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