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探偵とその過去(4)

純粋な笑顔を向けられた、それを直視できなかった。今まで人間を嫌いかそうでないかで判断してきた高校生にとってその笑顔は眩しすぎた。そんなこと気にもせず話は続く。


「君も、助けられた人、いますよね?例えば庇ってくれたお友達。君のことが嫌いだったら、助けることなんてしない。そうでしょう?」


心に何かが刺さったような感覚が押し寄せてくる、その衝撃に声が出なくなった。


「例えば、助けられた分、誰かを助けられたら…それって幸せじゃないですか?」


言葉を聞き終える頃には、自殺の考えは消えていた。それどころか涙が溢れて止めることができなかった。人の話を聞いて泣いたのはいつ以来だっただろうか。


「泣きたいときは思いっきり泣きましょう。自分の心の思うままに。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「落ち着きましたか?」


心の底から泣いて、もう涙も出なくなってしまった頃。声をかけられて男の顔を見ると、その男は相変わらず笑った顔をしていた。いったいこの男はいつまで笑っているのだろう…。だけど…その方が人間らしくていい、そんな風に感じる。


「あんた、すごい大人なんだな。」


「あんたって呼ばれるのは好きじゃありませんね…なんて呼んでもらいましょうか…。あ、そうだ。私、実は入院する以前は探偵をやってまして、だから『探偵さん』って呼んでくれるとすぐに返事ができると思いますよ。」


探偵をしていたから自分の考えが読めたのか、と男は1人で納得した。しかし自分で自分のことを探偵と呼んでほしいなんて変わった男だ。だが悪い気はしない、そう呼ぶことにしようか。


「貴方のことは、なんて呼べばいいですか?」


まるで友達になるときのような言葉だった。なんて呼べばいい?だなんて、今時の子供も使わないだろうに…。


夜紡(よつむぎ)零次(れいじ)、好きに呼んでくれ。」


「珍しい名前ですね、じゃあレイジくんで。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「それが写真の人間、本名はいまだにわからないが、『探偵さん』との出会いだったってわけだ。」


探偵は写真の人間との関係性を話すと、休憩を取るかのように紅茶を口に含む。


「へ〜、探偵さんって零次さんって名前なんですね。ずっと探偵さんって呼んでたからなんか新鮮です!」


「あ、俺が探偵になった理由に突っ込むのではなくて、俺の名前の方が重要なのか…。」

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