小休止(3)
「探偵さん探偵さん、私たちってこれまで沢山の『依頼人』さんを見てきましたよね。」
「え?あぁ、そうだな。それがどうした?」
仕事の資料を整理しながら唐突に話を始める如月、突然のことで反応が遅れる。
「いえ、どうしたってほどのことじゃないですけど。でも、なんていうか…長かったかな〜、なんて思うんですよ。」
「まあ、わからなくもないが…。でもまだ如月が事務所にきてかなりの時間が経ったわけじゃあないぞ?」
如月が助手になったのが秋頃、つまり如月が事務所に来てからまだ半年程しか経っていない。半年を長いと思うか短いと思うかはその人次第ではある。だが、何年も働くであろう職場での半年は短い方であると探偵は考えた。
「私も少しは探偵っぽくなってきましたか?なってますよね!なにせ依頼を本格的に手伝うことが多くなってきたんですから!」
「探偵っぽくなってきたかと言われるとまだ微妙なところだな。それに、依頼を本格的に手伝うってそれ人捜しの時じゃないか。」
どうだ、と言わんばかりに胸を張る如月に探偵は訂正をかける。
「えぇ!だって探偵さんこの前、如月は成長してる、って言ってたじゃないですか!」
「それはサイト関連の方であって探偵としてはまだまだなんだよなぁ。まだ探偵とホームズがイコールで繋がるイメージが抜けてないだろう?」
如月の声に誤解がないよう、一つ一つ否定をしていく。まとめた資料を棚に入れながらしっかりと事実の確認も行なっていく。その時、一枚の写真がこぼれ落ちた。
「探偵さん、何か落ちましたよ?これ…ん?これって若い頃の探偵さんですか?」
写真には若い頃の探偵と思わしき人物と、誰かはよくわからないが優しそうな男が一緒に並んでいた。
「ああ、こんなところにあったのか…。」
「…この人とはどんな関係だったんですか?」
どこか悲しそうに言葉をこぼす探偵が気になったのでつい質問をしてしまった。
「どんな関係、かぁ…それを話すには長い時間がかかるからなぁ…。」
写真を見ながら話すことを迷っている探偵であったが、しばらくした後
「いや、話しておこう。如月、紅茶を用意しよう、俺は茶菓子を出す。さっきも言ったがこれを話し始めると少し長くなる、ゆっくりお茶でも飲みながら語ろうではないか。」
話すことを決断をするのであった。話しておかなければならないのだろう、探偵が探偵になった理由、サイトを作った理由を。




