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ネットワーク上の関係(2)

「愚痴なんて誰でも言うだろ、俺だって助手がヘマしてばっかりだったら多分愚痴るぞ?」


隣に座ってる助手から横腹を強めに小突かれ呻き声をあげそうになるが、『依頼人』の手前変な声を出すわけにはいかない。ふと隣を見ると予想通りこちらを睨む顔が1つ。いかにも不服である、という表情の助手がこちらから目を離さずにいた。


「確かにこの人はいつも愚痴とか吐く人だけど…いつもは野良…オンラインで無作為に選ばれた人に対してなんですけど、今回は明らかに身内ってわかる発言で…。」


人間にとって経験は新しいジャンルの開拓、見聞による情報の捜索と、もはや冒険とも言える。その『依頼人』にとっての冒険がゲームであったのだろう。ゲームで知り合った仲間が身内の誰かに対して怒りをぶつけているものを見てしまった『依頼人』は心当たりがなくもないというところから気にしてしまっている。何かしてしまった。人間はそう考えるとどんどん悪い方向に考えてしまう、実に悲しいものではあるがそれが人間の本質なのだと探偵は考えている。


「だが、確証はないんだろう?」


「確証は…ないですけど…、いや、多分確証を持つのが怖いっていうのが、あるのかもしれないです…。」


もし本当に、それが自分に対する文句であったら。もし自分が嫌われていたら…その不安が本物であって欲しくないからか『依頼人』は本当のことを知るのを避けた、ということだろう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


一言で言ってしまえば心配しすぎ、であった。


「ネット上で知り合った仲間なんて基本意見なんて合わない。そんなの普通だろうに…。」


「ネット上で知り合った人ってそんな簡単に関係が崩れるものなんですか?」


助手の純粋な疑問が投げかけられる。


「簡単に崩れるさ、リアルで会うような関係じゃないっていうのは普通よりも言葉が重要になるんだ。たった一言で嫌われる、なんてこと普通だぞ?」


「…私は、それ以上に探偵さんの言葉が結構刺さりましたけどね。」


『依頼人』が帰った後も最初に言った言葉をまだ覚えていたようだ。


「悪かったって。でも、それと同じだ。今みたいにたった一言でネットの関係は崩れていく。」


それをちょうどいい例えにし、その場はお茶を濁すことにした。

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