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case12 生に嫌気が差した男(1)

まさか帰りの車に乗車する人間が1人増えることになるなんて。それも知り合いや家族ではなく『依頼人』さんで。行きの車の雰囲気と相まって余計に暗い様に思える。探偵さんが半ば強引に手を引いてこっちにきたということは本人は今すぐにでも死ぬつもりだったのだろう。あれ?これって一歩間違えたら誘拐では…?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、なんで自殺しようと思った?」


楽しい場面を一気に壊された影響か探偵さんの言葉はいつもよりも口が悪い様にも聞こえる。機嫌が悪いのだろうか。


「そんなのどうでもいいだろ…。」


「いいや、よくない。俺たちは死のうとしてるところを目撃してしまったんだ。見殺しにすることはできない。」


いつもよりも会話が進みづらい。それもそうだろうか…『依頼人』さんは死ぬところを邪魔された、決意が変わらないうちに早く死にたいのでしょう…。かたや探偵側(こちらがわ)はせっかくの休日が仕事になってしまった影響かいつもより少し雰囲気が悪い様な気がする。しばらくの沈黙の後、『依頼人』さんはゆっくりと口を開いた。


「バイトとか、学校とか、うまくいかなかっただけだっての。普通に仕事してるだけなのに難癖つけられてさ、そんなの知ったこっちゃねえよ…。学校だってそうさ、普通に勉強して普通に友達に絡んでるだけなのになんか自然と友達は離れてくんだ。意味がわからない。」


『依頼人』さんの文句にも似た自殺の理由はとても重かった。自殺するには十分な理由だと納得してしまった。


「…他に理由はあるか?」


「他って…俺が自分の意思で自殺するのに他に理由を作らないといけないのか?」


探偵さんの言葉は少し考えてから発せられた。その言葉に食いつくように『依頼人』さんが反論する。ギスギスした雰囲気になってきた…。


「別にそういうわけじゃない。大きな理由がそれであって、その他に小さい理由もあるんだろうと思ってな。どうだ?探してみたら何かあるんじゃないか?」


「…ねえよ。他はそんなうまくいってないことはねえし普通だ。」


その言葉を聞くと探偵さんは黙り込んで静かになってしまった。

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