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就活に悩む人間(3)

「わかったって…俺がどうすれば良いかわかったのか!?」


急にわかったと言われて一瞬なんのことかわからないようであったが、ここに来た理由を思い出して上ずった声になった。


だが肝心な部分の判断は『依頼人』が行うことだ、それは少し違うと言うように訂正をかける。


「いや、どうすれば良いかってのは自分で決めないといけないことだ。俺がわかったのは好きと仕事がイコールで繋がる条件だ。」


その言葉を言い終えると空気が静かになった。先程まで話していた熱気が残っている、これから話すこととはまるで逆だ。だが…もしこの『依頼人』にとって居心地の良い空気を壊してしまうぐらいならば…


「今から言うことは多少残酷だ、聞きたくなかったら耳をふさいでくれ。」


『依頼人』は迷うことなく探偵の目を見る。聞かない、と言う選択肢は元からないようだ。この発言は意地悪であったかもしれない。辛いことから逃げて良いよ、と言われて逃げるぐらいなら自殺には至らないだろう。


「好きと仕事がイコールで繋がる条件は情熱だ。好きなことを仕事にしたい言える人間はそれだけの情熱がある。迷うということは趣味の領域を出るほどの情熱が無い、ということだろう。」


「つまり俺は仕事にするほどの情熱がない…ってことか?」


『依頼人』は明らかに落ち込んでいた。平気という様子ではないが、だからと言って絶望したわけでもなさそうだ。


「趣味の領域を出るほどの情熱…俺にはないみたいだなぁ…。いや、わかってよかった!これで心置きなく就活できる!」


「吹っ切れたか?もう自殺を考えることもなさそうだな。就活、頑張れよ。応援している。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ほえ〜、昔、そんなことがあったんですね。」


休憩中に話すには少し長い話を聞きながら如月はクッキーを頬張る。甘いお菓子は自殺をテーマとした少し苦い話題とよく合うようだ。まあ、自殺を話題にすることが見当違いなところもあるが。


「ああ、だから如月にも覚えておいてほしい。いつか新しい職を探すとき、趣味の領域を出るほどの情熱があったら…俺はそれを仕事にしてほしいと思っている。おっと、話しすぎてしまったか。俺は仕事に戻ろう。」


残ったコーヒーを口にしてカップをそっと置くと探偵はデスクに戻っていくのだった。


「趣味の領域を出るほどの情熱…もう持ってるんですけどね。この場所で。」


そっとこぼれた声はデスクで唸る探偵の耳にはとどかなかった。

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