case8 就活に悩む人間(1)
「昔…俺がサイトを始めて間もない頃。今以上に未熟だったときのことだ。」
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コンコンとドアが2回ノック、数秒おいて3回目のノック音が聞こえてきた。
「『依頼人』…か?」
若かりし探偵は多少疑問を覚えつつ、いつまでも動かない玄関を開けに行った。
「し、失礼します!」
「待った、落ち着いてくれ。」
気合いの入った声に圧倒されなかったといえば嘘になる。だがそれ以上に疑問点が多く挙がったため、目の前のスーツの男が更に何かを言う前に制止をかけた。制止しなければ『依頼人』も探偵もお互いに何かを勘違いしたままで話をするどころではなかっただろう。
「君はここを企業か何かだと勘違いしてないか?いや、少なからずあっている部分はあるが、今は面接をするわけではない。だから一旦落ち着いてくれ、深呼吸だ。」
「は、はい…。」
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「えっと…俺…今、就活してて…そのことでちょっと色々あって…。」
「もう少し詳しく教えてもらってもいいか?」
話が少し大雑把なため、何が原因で自殺に至るのかが見えてこない。
「えっと…俺、ゲームが好きで…できれば将来もゲーム関係の職に就きたくて…でも…」
「でも?」
言葉が途中で途切れたためその言葉の最後を拾って次の言葉を繋げさせる。
「自分の中で、好きなことと仕事がイコールで繋がらなくて…おまけに大学の就活担当からは就活の怖さを脅しかってレベルで聞かされるし面接も落ちてばっかりで…なんていうかやってられなくなって…。」
なるほど、納得がいった。最初にあった2回のノックから追加で1回ノックは、面接で部屋に入る時に3回ノックをしないといけないというマナー、中の人からどうぞ、と言われるまで中に入らないのも面接でのマナー。特に3回ノックはよく忘れがちなものである故に気を張っていたのだろう。何も考えずにノックした後、慌てて3回目のノックを行った、そんなところだろうか。知らず知らずのうちにプライベートと就活が混ざってしまっているようだ。
それほどまでに『依頼人』は追い詰められているのだろう…これは…骨が折れそうだ…。




