小休止(1)
ここ最近探偵さんは本業で忙しい。私はというと最近はサイトの方が忙しく、探偵としての技術はまだまだ一人前には程遠い。そのため手伝えることがないのがはがゆいと実感する。私にできることがあるとすれば…
「探偵さん、少し休憩しませんか?」
コーヒーを淹れることぐらいです。確か先日買ったクッキーがまだ残っていたはずだから…それも出しちゃいましょう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「最近、忙しいみたいですね。」
「そう…だな。理由はわからないが、不定期で忙しくなる時期がある。」
コーヒーに映った自分を見て疲れた声を出した。コーヒーを隔てて見つめ返してくる男は見るからに疲れた顔をしていた。ああ、俺はこんなに疲れてたのか、などとわかりきった感想しか出てこないあたり、相当なものである。
「少し気分を変えましょう、春ですよ!もう桜も咲いてるんですよ!」
探偵という職業柄、仕事がなければ外に出ることがあまりない。そのため探偵は季節や自分を取り巻く環境に疎い部分があった。
「今日もここにくるまでに桜がたくさん咲いてて綺麗だったんですよ!」
「ほう?」
心なしか探偵の声が明るくなった気がする、そう感じた如月は探偵の疲れを癒すべく更に続けた。
「それで私思ったんですよ、春ですし桜が綺麗ですし、お花見したいです!しましょう?ね!」
嬉々として話す助手の隣で探偵は若干困ったような顔をした。
「花見か…悪くはないが…俺みたいな年の離れたおっさんと花見なんかして楽しいのか?」
「楽しいですよ!多分!」
如月は時々根拠のないことをサラッと零す。もちろん仕事とそうでない時との区別はできているのだがその発言に振り回される身にもなって欲しい、と常々思う。
「まあ、いいか。この仕事に区切りがついたら機会を作ってみるか。」
如月の勢いに折れたのか探偵は諦めたように約束をするのであった。
「春、ねぇ…。」
どこか物憂げな雰囲気を纏うその言葉に思い出したように探偵が続けた。
「そうだ、如月。お前にひとつ、話しておかないといけないことがある。過去にサイトであった出来事だ。」
「過去に…サイトで…?」
探偵さんの昔を知れるんですね!という感情が混じる中、場の空気を壊す発言は控えるべく、その言葉を飲み込んだ。




