特殊な2人(3)
人を殺して人を生かす。それは簡単に言えたものではない。今回のパターンにしてもそうだ。例えば探偵が相手をした才能のある『依頼人』をA、如月が相手をした嫉妬してしまった『依頼人』をBとして話を進めていこう。
2人とも自殺をしない方法があるとしよう。そのタイミングではそれで済んだとしても、将来的にはどうだろうか。2人は音楽の力が人より優秀な学生だ。将来何かしらの形で関わることが全く無いとは言いづらい。そしてその時にどうやって接すれば良いのだろうか?過去の出来事は無かったことには出来ない。
では2人を殺したら?単純な話、未来への可能性の卵を消すことになる。それはこの場合で最も悪い手段だ。
「だから…本当に、本当に認めたくないですけど…どちらか一人の命を…奪うのが…最善なのかと…思います。」
考えたくもないが、それが現実だと突きつけられてしまい言葉に詰まりながら如月が語る。
「如月がその結論にたどり着いたことにも驚きだが、問題はそこじゃない。その二人のうちどちらを殺すか、だ。もちろん、救えない以上可能な限り苦しませない。」
判断を誤ってはいけない。一歩間違えれば救ったはずの命ですら失ってしまう。それが、人を殺して人を生かすということだ。
「如月、お前はどう思う?どちらを生かすべきだと思う…?」
「私は…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「その後、何か変わったことはありませんか?」
「そうですね…友人が自殺してから…彼女の分も頑張らないと…って、思うようになりました。彼女は私より才能があった分その差を早く埋めないと彼女に合わす顔がないです…。」
救った命は『依頼人』の才能に嫉妬をした『依頼人』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「私は…私の担当してる『依頼人』を救うべきだと思います…ただ…。」
何が正しいのかもわからなくなりそうな空気の中、その静謐な空気を静謐な言葉が切り裂いた。ただ1つ、如月の言葉には迷いが生じていた。
「何故探偵さんの方の『依頼人』の命を…奪うのか…それが、わからないです…。」
救う命と奪う命、その判断をするのに精一杯、その判断に釣り合いが取れた理由をいくら探してもみつけることができなかった。
「俺も同じ意見だ。俺の担当した『依頼人』は他人の気持ちを受け入れすぎてる。今回の件を乗り切ったとしても、また別の誰かの言葉に傷ついてしまう。もちろん、変わっていくという可能性もある。だが同じような境遇に合ったとき、この経験が付き纏ってしまう。如月、よく頑張った。今日はもう帰ってゆっくり休め。」
探偵の言葉はいつにも増して長く感じた。まるで何時間もの言葉を数分に凝縮したようであった。探偵の言葉をただただ聞く如月は、いつもより息が荒く、自分たちの判断で1人の命を見捨てる現実に今にも倒れそうであった。




