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名前の派手な男(2)

「では、お気をつけて。」


「お、おう…えっと、次来るときはサイトで連絡すればいいんだな。」


来て、話をして、帰る。そんな単純な行動に時間を使わされたことに多少の戸惑いを感じながらも『依頼人』は帰路につくのだった。


「探偵さん!なんであのとき私を見たんですか!?私、キラキラネームってわけではないんですよ?」


『依頼人』の姿が見えなくなるが先か探偵は如月に猜疑心にも似た視線を向けられた。


「い、いや別にそういうわけではない。ただ、如月って苗字ではたまに聞くが、名前だと珍しいと思って…


今度は探偵が如月に対し誤解だ!と言わんばかりの視線を向ける。


如月は自分の名前についてどう思う?嫌だったりするのか?」


途中で何故か途切れてしまった言葉を再び紡ぎ直した。もしかしたら如月は気にしてるのかもしれない、そんな思いが心の何処かに在った。その思いが言葉を途中で弱々しくさせていった。


「別に、私はこの名前、気に入ってますよ?両親からもらった名前ですし。名前の由来とかは…まあ確かに嫌になる部分もあるのかもしれません。でも、それが全部じゃないんです。」


その言葉にまるで重いもので頭を殴られたかのように衝撃が走った。そして思考がとてもスッキリとしたようであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いらっしゃい、今日は少し難しい話をするがいいかな?」


「え?あ、ああ。わかった。」


前回来た時と全く違う話の入り方をされて以前の帰るときを何処と無く彷彿とさせる。


「結論から言うと名前ってのは割と普通に変えることができる。もちろん、手間はそれなりにかかるがな。申請書をもらって家庭裁判所で審判をうける、とかな。ほら、有名人とかでたまに名前が変わってるやつとかいるだろ?それと同じさ。」


名前の変更について大まかな説明を終えた探偵はここまで『依頼人』が理解できているかを確認し、さらに続ける。


「以前うちの助手が教えてくれた。確かに名前ってのは時に自分の心を苦しめる。けどさ、それが全部じゃないんだってよ。名前なんてって言ってしまえば失礼になるけどな?そんなもんよ、その程度よ。」


話の途中から『依頼人』はポカンとした様子で探偵を見ていた。この人は何を言ってるんだ?それが全部じゃない?そりゃあそうだろう。全部だったらとても困る。いかにもそういった様子で話を聞いていた。


「だからさ、そんな人生の一部とか、他人の目とか、気にしてちゃ世界がどんどん狭くなってく。もっと前向いて上見て、広い視界で生きろよ。そしたらさ、少しずつだけど、自分を好きになれるんじゃないか?」


「いってること、途中からよくわかんなかったけどさ…大事なことは伝わった気がする。名前なんてそんなもんなんだな、って…。俺、自分を好きになれるかな?」


「さあな、そこは自分で考えるとこだ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そういえば私、探偵さんの名前知らないんですけど…教えてくれませんか?」


少し前のことを思い出したのでいい機会だし聞いておこう、そのような思いを込められた一言は空を切った。否、探偵の耳には届いたのだがその探偵はと言うと


「ん?言ってなかったか?……まあじきに知る時が来るだろう。」


とまるではぐらかすようにその名を明かさずに椅子に体を預けて眠りに落ちるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  まだ読んでいる途中なのですが、一旦ここまでの感想として書かせて頂きますね。  「探偵として仕事をする傍ら、自殺を防ぐ相談所を営む」というコンセプトは、とてもおもしろいと思いますが、話がシ…
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