表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/122

どこかで見たような大学生(2)

「私は大学でいじめにあっています、耐えられないので自殺しようと決めました。」


いつか自分の言った言葉を思い出した、あの時の自分と同じ。周りに味方がいないと感じる不快感、胃が焼けつくようなやり場のない怒り、そして次第に増えていく虚しさ。自分とほぼ同じ『依頼人』さんが目の前にいる。


「わかります…その気持ち、その辛さ。」


普通ならばその言葉に無責任だと罵声を浴びせるだろう、だが『依頼人』は何も言わずに如月の言葉を聞いていた。


「私は、大学を辞めてそれを解決できました。例えばの話ですが、それは無理ですか?」


ゆっくりと問いかける。その問いに対して『依頼人』は震える声で語った。


「無理じゃ…ないですけど、僕は、勉強を…したいんです。」


なるほど、なにもなかった自分とは大違いだ。たしかな理由を持って大学に通っている。だがそれ以上に大きな要因が大学で勉強したいという理由すら侵食していってる。 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


言ってしまえば如月は学びに対して無関心であった。だから探偵の言葉はすぐに届いた。だがその点で今回の『依頼人』は如月とは違う。そこを本人はどう対処するだろうか。


探偵の意識は如月と『依頼人』の方から離れなかった。感覚の鋭さを評価したからこその今回の一件だったがどうだろう。心の隅には助手が何処かへ行くのを引き止めたいのかもしれない、探偵自身も迷っていた。


「じゃあ…逃げちゃいましょう。」


如月の一言で何処かへ行こうとしていた意識が引き戻された。


「それは、どういうことですか…?」


『依頼人』は如月のことばを恐る恐る聞き返した。それに対して顔色一つ変えずに如月は続ける。


「文字通りです、いじめに遭いそうになったら逃げましょう。ただそれだけのことです。でも…それだけでも変わってくることはあります。」


それは探偵にとって予想外なことだった。今までであればそろそろ自分に助けを求めてくる、そう考えてしまっていたからだ。


「でも…逃げることって間違ってるんじゃないんですか?」


『依頼人』の言葉が突き刺さる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ