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失敗した会社員(3)

「…やっぱりここにいたんですね。」


翌日、同じような時間に『依頼人』は同じベンチに座っていた。そして探偵の方を見るなり1つ小さなため息をついた。


「またですか…。これ以上、話すことなんてないですよ。」


「貴方に無くてもこちらにはあります。まあ、聞き流していただいて構わないですから。」


探偵はまるで独り言を呟くかのように話し始める。


「貴方が帰ったあと、少し考えたんです。なにかに対して怖がってるようにみえたので。」


探偵は話の所々で『依頼人』の方を見る、『依頼人』は探偵の方は見ずにどこか遠くを見ているようだった。


「で、考えました。その結果、本当は失敗自体を怖がってるんじゃないかな…って。」


相変わらず『依頼人』は視線を探偵の方に向けないままだったが、少し目を見開いたように見えた。探偵はその反応を待ってたと言いたげな表情で話を続けた。


「自分で気づいてなくても、無意識のうちに感じてるんじゃないかな、って。」


わからなくもない。一回失敗したら次も失敗してしまうのではないかと考えてしまう。次は大丈夫だと根拠もなしに言うのが怖く感じてしまう。


「でも、辛いことを感じたくないからって見てるだけじゃ本当に楽しいって感じることもできないのでは?見てるだけじゃなくて…」


『依頼人』は探偵の方を見ていた。探偵もそれを知りながら話を続けていく。


「逃げるなよ。」


短く告げる


「自分で決めたことに責任持って、自分で切り開けばそれだけで感じるものだってある。そうじゃ…ないですか?」


探偵は軽く笑う。それを見ていた『依頼人』はつられて少し笑った。


「無意識のうちに逃げてたんだなって思うと…なんか複雑な気分です。」


「そうでしょう?」


探偵はそれから?と言うように話の続きを待つ。


「でもまあ、逃げるのはもう少し後でいいかなって思わなくもないですね。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お帰りなさい、どうでしたか…って聞く必要はなさそうですね。」


如月は事務所に戻ってきた探偵の顔を見て言葉を切った。


「そうだな、聞く必要はない。」


探偵はわざとらしく助手の言葉を真似てみた。


「さて、仕事に区切りがついたら今日こそ昼飯にしようか。」


助手を見る探偵の心には、一つの新しい思いが湧き始めていた。

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