case30 イライラをぶつけられる少年(1)
7/22 タイトルに(1)を追加
依頼を解決した後にゆっくりと今回のことを振り返る。特殊なケースだとは思った、だがそれ以上にこんなことがあってはならないと感じた。探偵さんも今回ばかりは精神をごっそりと削られたような表情をしていた。始まりはいつも通りサイトに新しい書き込みがされるところから、いつもと違うとすればそれは内容だろうか?
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新着
助けて…死にたいよ…。
新しく投稿された内容に違和感を覚え探偵は首を捻る。助けてほしいと言った、そしてそのすぐ後に死にたい、とも言った。内容が支離滅裂だ、どういうことなのだろうか。
「…探偵さん。なんとなく、なんとなくですけど、この『依頼人』さん…かなり悪状況なんじゃないかと思います…。」
黙って考え込む探偵を見て如月は慌てて根拠はないですよ、と付け足す。
「如月がそう感じたのだとしたら多分間違いじゃないだろう。お前は感性が鋭い。」
パソコンに真剣な表情を向ける探偵は如月の方を見ずに語った。それは信頼しているが故だろう、如月の方も何も言葉を返さずパソコンの画面へと視線を移した。
返信しました
何があったか教えてくれないだろうか、話せる範囲でいい。
何分待ってもその返信に対して返信されなかった。違和感を覚えながら返信を待っていると数日経ってから返信が行われた。
返信されました
予測変換
残る
否定
兄弟
ストレス
叩く
ぶつ切りにされた単語が並ぶ。予測変換に出てきてもおかしくない単語を並べてどうにか伝えようと努力したようだ。
兄弟のどちらかがストレスで暴行を加える、だから兄弟のもう片方の自分が辛い。
そんなところだろう、よく頑張ってここまで伝えてくれたものだ。
「探偵さん、『依頼人』さんはなんでこんな伝え方をしたんですか?」
「そうせざるを得ない理由があった、そういうことだろうな。」
例えばそのパソコンが家族共有のものである場合。予測変換に候補が出るため誰かに自分の現状を伝えたとバレたらどうなるだろうか、親がそれをやったと言ってもすぐにそれが嘘だと気づかれる。予測変換に候補が残ることを避けたとなればこれが大きな理由となるだろう。縦に単語が並んでいるのは近くに誰かがいるからかもしれない。普通に文を書いてては自分の体で隠せるスペースからはみ出てしまうからかもしれない。どうにしろ、この限られた状況の中で『依頼人』を助けなければならない。




