case29 炎上した人間(1)
7/15 タイトルに(1)を追加
サイトに新しい書き込みが投稿された。如月との他愛の話もネタ切れが近かった、タイミングとしてはちょうど良い。まあ、サイトが更新されること自体が良いこととは言いづらいものなのだが。
興味本位なだけじゃん、なんでこんなに責められるの?もう死にたい…
いつものことながら最初の書き込みの文面だけでは自殺の理由も、何に対して辛さを感じているのかもわからない。
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何があったか、話してみる気はないだろうか?
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どうせアンタも他の奴らと一緒なんでしょ
どうやら他人に対して普通ではない感情を持っているようだ、まずは自分達がその人間達と違うことを伝えなければならない。それができて初めてサイトの書き込みは『依頼人』へと姿を変える。
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『依頼人』を事務者へと招くのは予想外に手間がかかった。それほどまでに他人を信用できない状況なのだろう。事務所に招いたは良いがそれで終わりではない、むしろここからが始まりだ。ちょっとした発言で『依頼人』の傷を抉ってしまうかもしれない、サイトで会話した時以上に注意しなければならない。
「貴方は自殺しようとしていたけど、それは何故だ?答えられる範囲で構わない。」
なんども繰り返されてきた問い、今回は一言追加して問いかける。『依頼人』はまだ信用していないのが探偵とその助手を交互に見ながら警戒している。何度目が合ったか数えきれなくなってきた時、『依頼人』が口を開いた。
「ネットで炎上した…。」
それは、インターネットが普及した今の時代、取り上げるほど珍しくもないこと。それが『依頼人』を自殺へと追いやった原因だった。他人を信用していないことから察するに、何かがきっかけで炎上し誹謗中傷がまるで嵐のように胸を貫いたのだろう。炎上は元を辿ればSNS等での自分の呟きが原因ということが多々ある。と、いうかネットワーク上の炎上している問題の殆どはその呟きに対して異を唱える人間が多数派を占めた場合に起こる。
「それは…辛かっただろうな…。」
ちょっと仕事でストレスが溜まったから愚痴を吐いた、ちょっと人間関係がうまく言ってないから呟いた、そういうちょっとだけならいいだろうという思いを拾って拡散され、それが炎上する。炎上した本人も後になれば気づくであろうことを周りの人間は大声で騒ぐ。いくら本人が悪いとはいえ些かやりすぎなところもあるだろう。




