case28 睡眠欲に勝てない人間(1)
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季節は巡って、日差しが強くなる夏に入った頃。
「おはようございます…外、暑すぎやしませんか。まだ午前中ですよ、一番温度が高くなる時じゃないんですよ…。」
如月が外の気温に対して文句を言いながら事務所に入ってくる。ただでさえ夏は暑いのにこれが年々暑くなっているのでタチが悪い。
「おはよう、最近本当に暑くなったな。」
事務所はいつ人が来てもいいように冷房を効かせているがそれもまた自分たちの住む地を暑くさせている原因なのだろう。この星は問題が山積みだ、それは温暖化だったり電力不足だったり様々だ。やろうと思えば6時間ほどで電気を使い切ることができる、ともどこかで聞いたことがある。などと探偵の無駄な考えにもさらに磨きがかかる。これも暑さ故なのだろうか、そんな無駄なことを考えながらパソコンを除いているとサイトが更新された。
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「失礼します…。」
静かな声とともに一人の女性が事務所に入ってくる、今回の『依頼人』だ。更新されたサイトの内容を見る限りでは自分のだらしなさに嫌気がさして自殺を考えたらしい。だがその割には『依頼人』は時間通りに事務所に訪れた、容姿もだらしないようには思えない。では何に対してだらしないのか、対面に座った探偵が話を切り出す。
「早速だが話していこう。サイトには、自分のだらしなさが嫌になったらしいが…これは具体的にどういうことだろうか?」
「えっと…私、すぐ寝てしまうんです。大事な話の最中とか、偉い人の話してる時とか…。」
なるほど。だらしない、とはそういうことか。学生の頃講義がつまらなくて寝る、だとか校長の話が長くて寝る、というものと感覚は同じなのだろう。ただ社会人になった以上それで許されるものではない。だが年を重ねていく上でそういうものに対する自制ができるようになってくるはずだ。ではなぜ寝てしまうのか、少なくとも『依頼人』は寝てしまうことに抵抗しているはずだ。それでも寝てしまうとなると…探偵の頭の中で答えが浮かんでくる。
「病院に行ってみてはどうだろうか。俺の考えが合っているとしたら、過眠症の可能性がある。」
過眠症、ナルコレプシーだっただろうか。寝ていられないような状況、大事な話をしている時でさえ眠気が襲ってくる病のことだ。『依頼人』の話を聞く限りではその可能性がある。そしてナルコレプシーは周りの人間からはだらしない、真面目にやろうとしてない、やる気がない、と思われがちだが歴とした病気である。




