二人で一緒に。
僕は高等部に上がれた喜びで書類に目を通すのを怠っていた。
普通ならありえないことだが、高等部にまで上がれるのは僕の魔力的には本来絶望的なのである。
それが証拠に中等部の試験が通らなければ、剣と魔力ともに中の中の連中でもこの学園を去っていったのを僕たちは知っている。
「へぇそうだったんだ、教えてくれて有難うレンちゃん」
「別にいいわよそれぐらい、だって二人で一緒に受けるっていったじゃない」
レンちゃんがニコニコしながら言ってくるがそれとこれとは話が別だ。
やはり男のプライドとでもいうのだろうか、自分より数段優れている相手とは組みたくないというのが正直な感想である。
確かにレンちゃんには今まで色々な面で助けてもらった。
だからこれから先も彼女に助けてもらうわけにはいかない、お飾りでいたくない、彼女に認めてもらいたいというのが僕の思うところだ
本当に勝手なのは分かっているが一緒には組みたくないと思ったのもつかの間・・・
「まあ、リンちゃんの顔を見てれば私と組むのはあまり好ましいことじゃないのかもしれないわね」
珍しくレンちゃんが暗い顔をしていた。
ぼくは彼女にそんな顔をさせたくて思ったわけじゃない、一人前になったら・・・レンちゃんよりも優れた人になれたら土下座してでもこちらから頼みたいぐらいである。
彼女を守れるぐらい僕が強ければ今すぐにでもレンちゃんを誘えるのに・・・でもぼくより優れた人なんていくらでもいるんじゃ、ぼくがそう思ったのもつかの間レンちゃんは一つの書類を僕に見せた。
「そういうことだから、しかたないのよ。リンちゃんお願いね」
書類の内容はこういうものだった。
クエストの内容及び経過を見るためになるべく成績のバランスが取れるようにとのことだった。
例えば一例をだそう、剣術および魔術が中間の生徒は同じく剣術と魔術が中間の生徒とチームを組む、つまり僕とレンちゃんは・・・僕が自分でいうのもなんだが剣術はそうとうなもので魔術はほぼほぼダメ、逆にレンちゃんは魔術は超々すごいのだが剣術はからっきしダメなのだ。
だからなるべくしてなったパーティなのかもしれない。
「剣術の稽古なるべくさぼっておいてよかったわ」
努力家のレンちゃんにしては珍しいことを言う。
彼女は超が付くほどの真面目でいつもいつも魔法の練習をしていたのをしってた僕は十年経っても彼女の知らない面がまだまだあるらしい。
でもそれと同時に怒りも感じた。
天才は剣術なんてものを学ぶ必要すらないとレンちゃんが思っていたと思うと以上にムシャクシャしたのだ
たしかに今現在において剣術よりも魔術がすぐれているのは確かだがそれでも・・・
「レン・・・そんな言い方ないじゃないか!!」
僕は感情的になり何時ものちゃんづけを忘れ怒鳴りちなしていた。
彼女は涙目でうつぶせになり小さな声で言った。
「だって、リンちゃんが私を守ってくれるって信じてたから・・・」
彼女は声を押し殺して泣いていた。
「魔術師にはそれを支えてくれる前衛が必要なの、私初等部のころからリンちゃんがパートナーになってくれたらいいなって・・・それで。グスン」
初等部のころから?
一体どういうことだ?
レンちゃんが泣いているのを見て我に返った僕はそんなことを思った。
そういえば、レンちゃんの両親って・・・
確か父親が大魔王と母親が元勇者ってことはつまり、この制度のことも知っててそれで・・・
冷静になった頭でちゃんと考え直すと僕は思った以上にひどいことを言ってしまったのかもしれない。
「でも確かにちょっと無神経だったかもね、ごめんねリンちゃん」
らしくない、らしくなさすぎる。
レンちゃんが素直に謝るなんて、僕も意地になっていたのは確かだけどレンちゃんは十年前からこうなると読んでて、僕と組みたくてあえて剣術をおろそかにしていたのか・・・
そう思うと・・・心がドキドキし始めた。
初めてのことでよくわからなかったがそれはたぶんこれから知っていくことだろう。
「いや、こちらこそごめんね。レンちゃん」
するとレンちゃんがちょっとすねたように、
「さっきはレンって言ってくれたのに・・・なんでまた元に戻るの???」
考えてみたらそうだ、なぜ僕はレンちゃんのことだけちゃんづけで呼ぶんだろう、ほかの同級生のことは呼び捨てでよべるのに・・・。
「よくわからないや」
正直に答えると、レンちゃんが涙を拭って
「いつか、ちゃんとレンってよんでよね、リンちゃん」
レンちゃんは笑顔でそう言った。